思い出と今
その日の晩、玲奈が自分の部屋で休んでいると、窓を叩く音が聞こえた。扉を開けてみると、笠を被った着物の青年が窓の縁に座っていた。
「夜鳴飛脚のヨミです、お届け物に参りました。」
その青年は、三本足の烏を従わせていた。そして、玲奈に小包を手渡す。ヨミと名乗る青年は、それを見て音もなく立ち去ってしまった。
玲奈がそれを受け取って中を開けてみると、手紙と、布袋の中にはクッキーが入っていた。手紙を開けてみると、そこには見たことの無い文字で書かれていて、玲奈は読めない。
「誰からだろう、見に覚えはないし…」
玲奈は、手紙を封筒に戻して布団の中に入った。
その日もまた、玲奈は夢を見ていた。その日は不思議な事に、今朝出会った真莉奈が、玲奈の夢に現れていた。
「真莉奈ちゃん!」
真莉奈は玲奈の姿を見て驚き、駆け寄って来た。
「急に消えて何処行ったのかと思ったよ!」
「うん…」
真莉奈は昼に会った時が表情とは異なっていて、何処かに寂しげな表情をしていた。それを玲奈は疑問に思う。
「私の事がまだ分からないのは仕方ないのか…って」
玲奈は真莉奈の言っていることの意味が分からなかった。自分と別れてから何かあったのだろうか、玲奈はそれを聞きたかったが、思うように言葉が出ない。
そして、背を向ける真莉奈に、玲奈はこう言う。
「また会えるよね?」
「うん、信じていればきっと…」
真莉奈はそう言って夢の中から消えてしまった。それと同時に玲奈は目を覚ます。
夢から醒めて思い浮かんだのは、智の顔だった。何故、今智の事を思い出していたのか、玲奈は不思議に思う。
「そういえば、智君にあの時の返事返していなかったな…」
玲奈はベッドから飛び起きて、休日に買ってもらった服に着替えた。新しい自分を智はどう思ってくれるのだろうか、そう考えると玲奈は自然と嬉しくなった。
そして、出掛けようとした時、夜鳴飛脚が運んで来た手紙が机に置いてある事に気づいた。
「そうだ、死神の智君だったらこの手紙読めるかもしれない」
玲奈は、その手紙とクッキーもランドセルの中に詰めて、学校に向かった。
登校中、玲奈は改めて智の事を考えていた。
智は死神、玲奈達には当たり前に思っていた事実だが、改めて考えると、他人には信じられないくらい不思議な出来事である。
「改めて考えると、不思議だな…」
そんな智が転校して玲奈達と出会った。その影響で、玲奈は茂と同じように狂気に陥ってしまった。狂気が覚めて、正体が暴かれてからも仲良くし続けた。戦いの中に巻き込まれたり、死神達が暮らす冥界にも行った。
小説や夢のような出来事だったが、どれも玲奈の身の回りで起きた出来事だった。梨乃と智以外にも、不思議な力を持つ真莉奈や昴にも会った。すぐに別れてしまったが、またいつか会える日は来るのだろうか。
「もしかして、昴君が言っていた糸って、智君にも繋がっているのかな。それは運命の赤い糸…ってそんな訳ないか」
玲奈は自分で考えた事に自分で笑っていた。そして、智の姿を見かけると、玲奈は走って智の元へ駆け寄って行った。




