子供達の思い
梨乃達の元から立ち去った桜弥は、真莉奈が居る『光の樹』の上にやって来た。髪の毛や服を濡らした状態で現れた桜弥に対して、真莉奈はこう言う。
「お帰り、で、会いたい人には会えたの?」
「まぁな…」
桜弥は服を絞って真莉奈の横に座った。
「さっき、この下で自分とよく似た子に会ったんだ、何となく会った事あるような気がするけど、何故なんだろう…」
「やれやれ、鈍感なのは誰に似たんだか」
桜弥は樹に寄りかかった。
「あいつら、本当に変わらないな」
「変わらないのはお前らもだよ」
声が聞こえた方を振り向くと、そこには昴が二人の上に居座っていた。
「昴、どうしてお前がここに居るんだ」
桜弥が昴を睨みつけると、昴は口元を緩めてこう言った。
「それは二人に聞きたいよ」
昴は樹の枝に寄り掛かって二人を眺める。
「俺の糸は父さんにも母さんにも繋がっている事を忘れるなよ」
昴がそう言うと、いつの間にかその姿は見えなくなっていた。
昴の正体を知っている桜弥に対して、真莉奈は何も知らないようだった。梨乃と同じ風見の陰陽師である桜弥は、過去と未来を見通せる能力がある。桜弥はその力で、今まで様々な事を見てきたのだそうだ。
「桜弥君って、過去の事や未来の事を何でも見通せるんだったよね?」
「ああ、ある意味凄く不便だよ」
真莉奈は、敢えて桜弥に自分の未来の事を聞こうとはしなかった。桜弥も、真莉奈の未来の事は話そうとしない。見てきたものが真莉奈にとって、辛いものと思っているからだろうか。
真莉奈は、先程玲奈と出会った事を思い出していた。
「それにしても、私と似た子は私の事を見て凄く驚いていたなぁ」
「ああ、まだ自分の将来の事が全く分からないから当然だろ」
桜弥はそう言って遠くに居る玲奈の方を見た。玲奈は桜弥の近くには居ないが、桜弥には見えているらしい。
「それにしても、ここは今とほとんど変わらないね」
「ああ、この『光の樹』は、この時代でも役目を果たしてくれているんだな…」
桜弥と真莉奈は『光の樹』から降りた。桜弥が樹の幹に触れると、そこから光の扉が現れる。
桜弥と真莉奈は手を繋いでそこを開けた。その時、桜弥は振り向いてこう呟いた。
「また会おうぜ、母さん」
そして、二人は扉の向こう側に消えてしまった。




