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戻ってきて


 冥界の商店街に戻って来た玲奈は、智の姿を見て、思わず駆け寄って抱き締める。

「智君!無事で良かった!」

「それはこっちの台詞だよ、玲奈」

智は、玲奈よりも強い力で抱き締め返していた。

「それじゃあ、帰ろっか」

「うん…」

玲奈は智から手を離して、梨乃達と一緒に扉まで歩いて行った。

「そういえば、玲奈はどうやってここまで戻って来たんだ?」

「フォレスちゃんに案内してもらったんだけど…」

玲奈が振り向くと、フォレスの姿は消えていた。先程までその場に居たのだろうか、頭に着けていた葉だけが商店街に取り残されている。



 玲奈は、それを拾って、クッキー缶に入れようとした。缶を見ると、中は空になっている。玲奈はフォレスに、缶の中の最後の一枚を渡したのだ。それが無くなっているという事は、フォレスには渡せていたという事だった。

「クッキーも減ってるし、夢じゃないよね?」

玲奈はそれをカバンの中に戻して、智と一緒に歩き始めた。




 そして、扉を開いて青波台へ戻って来た。陽はすっかり傾いていて、町の向こう側に夕焼けが見える。

「もうこんな時間なのか」

「冥界は現世と時間の流れが違うからな、向こうはまだ昼だな」

「それじゃあ、俺はもう帰るな」

梨乃と勤は、智と玲奈と別れて家に帰ってしまった。



 そして、二人きりになった智と玲奈は、ゆっくり歩いて行った。

 玲奈は、先程聞いたフォレスの話がずっと頭に残っていた。“忌み子”を産んでしまった事により、死神と人間が深く関わるのは禁じられているはずだ。

 それなのに、人間である自分が、冥界の中でも特別な存在である智と一緒に居て良いのだろうか。

「智君は、いつかは死神と結婚して、冥界で暮らすんでしょ?人間と死神の間の子って“忌み子”だから、死神と人間が結ばれるのって禁じられてるんだよね?だから、私とこうして一緒に居ていいのかな…、なんて」

すると、智は玲奈の腕を掴んだ。頬は赤くなっているが、真剣な眼差しで玲奈をじっと見つめる。

「好きだ…、玲奈、お前の事が」

「えっ…?」

玲奈は、驚きの余り言葉が出てこなかった。智は、それに構わずこう続ける。

「例え結ばれなかったとしても、俺は玲奈の事を想い続けるからな。」 

智は玲奈にそう言った後、走って帰ってしまった。玲奈は、そんな智を追う事はなく、一人で家に帰っていく。





 家に着いた玲奈は、先程智が自分に言ってくれた言葉を、繰り返し自分の心の中で唱えていた。

「智君、私の事をそんなに本気で想ってくれていたんだ…」

玲奈は、胸を押さえて机の上でそう呟いた。



 改心した智を見て、最初は勤の言う通り都合の良い玩具にしようとしていた玲奈だったが、智が自分が考えている以上に本気で想ってくれている。

 玲奈は、それを嬉しいと共に、智の気持ちに気づけなかった自分に対して憤りを感じていた。

「胸が温かい…、智君も同じ気持ちだったのかな」

玲奈は、智の告白に対して、どう返せばいいのか考えながら、一階に降りて行った。



 そして玲奈は、洗面台に立って自分の顔を見た。玲奈の髪は、肩が隠れるくらいにまで伸びている。探偵団の事もあってか、玲奈は長らく髪の毛を切りに行ってはいなかった。

「お母さん、そろそろ髪切りに行きたいな」

「分かったわ、来週連れて行ってあげるわよ」

玲奈は髪を切れば気分が変わると思ったのだ。


 それに、普段行っている散髪屋の店主で、愛花の父親である加藤春樹と話せば、きっと自分では分からない事が分かるかもしれない。玲奈はその日をずっと楽しみにする事にした。

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