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離れ離れ


 玲奈は蛸の怪に縛られ、三途の川に連れ去られていた。玲奈はしばらく智の助けを待っていたが、身体を縛られた玲奈は、気を失ってしまった。



 玲奈が意識を取り戻した時には、玲奈は三途の川ではなく、何処までも続く草原で目を覚ました。玲奈は、最初自分は死んだのだと思ったが、元々冥界に来ていた事を思い出した玲奈は、飛び起きて辺りを見回した。

「目を覚ましたんですね」

玲奈の横には、自分と同じくらいの背丈の少女が居た。髪の毛は、草を編んだような緑色をしていて、エメラルドのような綺麗な目をしていた。冥界に居るから、この少女も死神なのだろうか。

「蛸の怪は私が倒したので安心してください。あなたは傷ついていましたから、この草原に連れてきました。この草達は傷や病気を治す力があって、傷ついた死神達がよく訪れるのです。」

玲奈が自分の膝を見ると、草達が意思を持ったように、傷口に巻き付いていた。そして、草が外れると、傷口は塞がっている。

「凄いね君、私なんかずっと梨乃姉ちゃんや智君に助けられてばかりだよ…」

玲奈がそう呟きながら傷口を擦ると、その少女がその言葉に反応した。

「えっ、智さんの知り合いなんですか?」

「うん、一緒に現世から来たの」

「もしかして…、あなたは生きた人間なんですか?!」

その少女は、思わず玲奈の両手を掴んで驚いた。

「死神とほとんど変わらない身体…、本当だったんだ」

その少女は、玲奈を珍しい動物を見たように目を輝かせて玲奈の事を見つめた。




 死神の少女は、玲奈の事を物珍しそうに観察し続けていたが、玲奈が気まずい顔をしていたので、慌てて手を離した。

「あっ、ごめんなさい…」

「いや、いいんだよ。私は渡辺玲奈、君は?」

「私はフォレス、森林の死神です。智さんとは同い年なんですが、会った事はないですね。」

「そうなんだ、私も智君と同い年だよ」

「そうなのですね…」

フォレスは、住む世界が違えど、人間が自分達と同じように生きている事に驚きを隠せないようだった。

「生きた人間に会った事ないって言ってたけど、死神は現世と冥界を行き来できるんじゃないの?」

「それは実務、現世に居る魂を導く死神だけですよ。今は規制が緩和されてますが、昔は厳しくて、実務以外で現世に行く事は禁じられていました。」

「それは…、どうして?」

フォレスは、顔をしかめた後こう答えた。

「“忌み子”を産んでしまったからでしょうか」

「忌み子?」

「風見華玄、人間と死神の間に産まれた子です。千年以上昔の事、現世の陰陽師と死神の間に子供が産まれました。その子供は、死神以上の力を持っていて、誰もその力を止める事は出来なかったのです。それに、華玄の魂は滅ぶ事がなかったのです。華玄は封印されましたが、いつ復活するか分からないというので、千年経った今も恐れられ、怪達は不滅の魂を狙っているのです。」

風見、梨乃と同じ苗字だと玲奈は思った。大昔の事だが、死神の血は大分薄くなっているが、梨乃の中にも似たような力ががあるという事だろうか。

「智さんの一族、剣崎家は冥界の中でも特別なんですよ。風見の一族を見張る為に、現世で暮らす事が許されていますし、冥王である月輪様の長女である紅姫様の末裔でもありますしね。」

智が冥界でも特別な存在だったとは、玲奈は考えもつかなかった。確かに、智は自分の身体には収まりきらない程強力な力を持っていたが、血筋の影響もあるのだろうか。

「それにしてもですね、華玄も紅姫の息子なんですよ。それなのに、剣崎家は慕われて、風見家は今も忌み恐れられてる。詳しい話は私も存じませんが、不思議な話ですよね。」

玲奈は、冥界の歴史を分かったような、よく分からないような、そういう感じで聞いていた。




 そして、玲奈は草原から立ち上がってフォレスに聞いた。

「戻らなきゃな、智君達の所へ。商店街の方にはどうやって行くの?」

「案内しましょうか?」

「ありがとう!」

フォレスは玲奈の前に立って、草原に出来た道を歩いていった。


 同じような身体だが、死神は疲れ知らずのようだった。フォレスは玲奈の姿が見えなくなるまで先を走り続けている。だが、草原を抜けた所で、突然フォレスは立ち止まった。

「お腹空いた…」

同じように走っていた玲奈は、そこでようやくフォレスに追い付いた。腹の虫が収まらないフォレスを見て、玲奈はリュックを開けてクッキーを手渡した。

「良かったら、クッキー食べる?」

「現世の食べ物、ですか?」

フォレスは玲奈からクッキーを受け取った。最初は、現世のものだと思って不思議そうに眺めていたが、甘い匂いがしたので齧ってみた。すると、今までに感じた事のない食感と甘さに驚いている。

「美味しい、これどうやって作るんですか?」

玲奈は、歩きながらフォレスにクッキーの作り方を教えた。


 このクッキー缶は買ってきたものだが、偶然にも、玲奈は母親からクッキーの作り方を教えてもらって、作った事がある。玲奈はそれをフォレスに教えたのだった。

「お菓子作りって楽しそうですね!最も、冥界にはお菓子というものがありませんがね…」

「そうなの?」

「現世の文化って不思議ですね…。あ、もうすぐ商店街ですよ」

フォレスの目線の先には、先程まで玲奈が居た商店街があった。玲奈は、フォレスと共に智達が先程まで戦っていた河川敷の方へ向かって行った。

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