008 思惑
「綺麗な夜景ねえ ダーリン♡」
「そうだね♡」
2人のカップルがベランダから外を見ていた。
「ねぇ、もう一回しちゃう?」
彼女がベットに座った。
「いやもう朝だ。ほらあっちの空が明るくなってきているよ。」
「? そっちは西よ。」
「えっ?」
「それにまだ10時よ。」
男は混乱した。
「じゃああれは一体...」
彼は目を凝らした。
「あっ! あれは!」
「どうしたの?」
「大学が燃えている!」 *
_______
「クソが。」
私は怒っていた。
「実験棟に火をつけやがったな!!」
5分前
カイサリアは焦っていた。
「自分が攻撃を食らうなんて... それも無能力者に! 」
別に彼は今まで一切攻撃されたことがないわけでは無い。炎系能力者である自分に攻撃できるのは、自分よりも強い能力を持った人だけだ。能力は生まれついてのもので、能力の差で負けるのは仕方がない。
「だが! あいつはテストにも引っかからねえ程度のほぼ無能力者だ! 生まれた時から私の方が上なんだ!」
こんなことが組織にバレたら...
彼は怯えていた。
しかし、彼は決断した。
あの人に連絡しよう。勝てばいいのだ。私が勝てばそれで済むのだ。
彼は電話した。
「...」
「なんだ。カイサリア。」
「アレッシオか? 私は今大学にいるのですが...」
そのまま今までのことを話した。
「そうか。だがお前の言う通り勝てばいいのだ。勝てばお前の手柄だ。なんの問題もない。」
「ええ。でもいったいどうすれば... 」
「奴の名前はわかるか?」
「確か、ストロマイトの言ってました。」
「ストロマイト... 」
男はしばらく黙った。
「どうかされましたか?」
「いや、何それよりもだ。よく聞けよ。」
「はい。」
「実験棟に火をつけろ。」
...
「な、なぜ?」
「証拠は全部消せ。お前たちがいた痕跡を残すな! それに...」
男は笑った。
「奴ならきっと実験棟に入って来るだろうな。」
私は実験棟の前にいた。
「火の勢いが強まっている!」
実験棟はコンクリートでできていたから燃えにくいはずだ。しかし、あそこは実験棟だ。火に晒しちゃいけないような薬品もあるし、専用のガス管*も通っている。
ドオオオン
また爆発が起きた。
「とにかくあいつをぶっ叩いてやる!」
私は実験棟の中に入った。もう我慢ならなかった。
あれを... あれを探さなければ、あいつに勝てない。急いで見つけるんだ!
「待ってろよ、カイサリア。お前の顔面を叩き割ってやる!」
_______
「やはり入って来ました。」
「そうだろう。」
カイサリアは興奮していた。
「早く入り口を塞ぐんだ。完全に行き場をなくしてからとどめをさせ。」
彼は静かに笑った。
「わかりました。必ず奴を仕留めます。」
○カップルのシーン
突然の意味深なシーンで申し訳ない。
ただこのような始まり方はホラーなどではお馴染みではないだろうか?
○専用のガス管
大学の実験室には高圧ガスが設置されていることもある。現実世界でも事故が起きることはあるようだ。