001 俺たちの大学を守れ!
11月16日
ここは海上都市スターアイランド*の中にあるスターアイランド大学。ちょうどランチの時間でカフェテリアは賑わっている。私はいつも通りサンドウィッチ二人前を食べながら、来週提出しなければならない課題を進めていた。そんな私に一人の男が近づいて来た。
「君がストロマイト*かい?」
「ああ、そうだが...」
「君に話したいことがあるんだ。」
「長引くなら俺の前の席で良ければどうぞ。」
「ありがとう。」
私はテーブルの向かいにその男を座らせた。
「ストロマイト。君の様な特殊能力者*の探すのにとても苦労したよ。」
世界人口の3分の1が特殊能力者だと言われているこの世界で、探すのに苦労することがあるのだろうか?
「俺より強い能力者ならいっぱいいる。」
「確かに。でもこの大学では君が一番強いと思っているんだ。」
この大学に限れば能力者は50人もいなかったはずだ。スターアイランド大学は世界でもトップ10には入る名門大学だ。大抵の強い特殊能力を持つ者は自分の力に酔いしれ、勉強なんてしなくていいと、訳の分からないことを言いながら遊んでばかりいる。特に幼い頃に特殊能力が使えるようになった者はなおさらだ。だからこの大学に来るのは無能力者。来たとしても弱い能力者だ。
「それで要件は?」
「〈アップ*〉ってわかるよな?」
当然だ。ついこの間も逮捕者がでた。いわゆる違法薬物ってやつだ。なんでも無能力者を特殊能力者にしたり、元の特殊能力を強化したり出来るそうだ。私がこの世で3番目に嫌いなものだ。
「それを俺に売ろうってのか。」
「まさか。僕はそれを撲滅したいんだ。」
それから彼はこういうことを言った。
近年、この島でのアップ使用者が増えている。政府は輸入品を厳しく検査しているはずだ。また、この島には最先端の科学や医療施設が揃っている。つまり、この島でアップを作っている可能性が高い。
「もうこの大学の生徒が逮捕されるのは見たくない。僕の友達も逮捕されたんだ。君もアップは無くなるべきだと思っているはずだ。」
「俺のことについても詳しいようだな。」
「それについては謝罪するよ。」
「いや、いいんだ。」
どうせいつかはバレる。
「それで、警察は動いていないのか?」
「これ以上は話せない。君が仲間になったら教えよう。」
どうしようか。彼と協力してアップを撲滅するのは悪くない。だが、相手は薬物。裏に何があるのかわからない。だからこそ、彼も私に協力して欲しいのだろう。
「悩むのはわかる。返事はいつでもいいから...」
「いや。今決めよう。」
席を外そうとした彼を止めた。私は財布からコインを取り出して、
「《主》*に決めてもらおう。表が出れば君に協力すると約束しよう。」
「それはいい考えだ。」
彼が微笑んだので私はコイントスをした。結果は、
「裏か...」
しばらく二人とも黙っていた。先に口を開いたのは彼だった。
「主がそう言うなら仕方がない。お邪魔したね。」
「違う!これは表だ。」
私は言った。
「多くの人はこっちが裏だと思っているが、実はこっちが表なんだ。知ってたか?」
嘘を言ったかもしれない。確かそうだったような。だが、それは問題ではない。私は今までの人生で人に頼られたことがほとんど無かった。彼の真剣な表情を見て、本当に自分のことを必要としているなら協力してもいいような気がした。
「君に協力するよ。」
私は握手を求めた。
「ありがとう!僕はマーティ。これからよろしく。」
「こちらこそ!」
これが全ての始まりだったのかもしれない。《主》の意思に反したことをしたからかもしれない...
○海上都市スターアイランド
地中海の北緯36.5度 東経18.2度にある面積約8700キロ平方メートル、人口約15万人の人工島である。上から見ると八角の星の様な形をしている。北西部は主に農業区、南東部は市街地となっている。一応イタリアの自治区となっているが、あまり関与してない。首都は政治都市スティシティで、最大の都市は貿易港のあるポートサイド。スターアイランド大学はポートサイド郊外にある。
農業区
この島の住人の食料は、ほぼここで生産されている。オレンジ、ブドウ、小麦が多く生産されている。
市街地
最先端の技術や医療、大企業の本部が集まっている。世界最大級の貿易港も隣接しており、非常に栄えている。
交通
地下鉄が市民の足。車は主に農業区で使う。また、この島に入るには船を使うしか無い。(政府関係者は飛行機を使う事もある。)
観光
ビーチがあるためマリンスポーツが盛ん。小さいゴルフ場もある。また島内には「7人の英雄像」が散らばっている。
○ストロマイト 001
身長193cm 体重112kg 19歳(第1章)
髪はブラウン 瞳はブルー イギリスとイタリアのハーフ
特殊能力 : 波エネルギーを操る
○特殊能力
科学の領域を超えた能力。特殊能力者は確認されているだけで世界人口の3分の1を占めている。能力者は世界中にいるが、東アジアと東南アジア、中央アフリカだけは極端に少ない。能力は完全に生まれつきのものであるため、急に能力者になったり、能力が使えなくなる、能力が変化するといったことはほとんど無い(特に能力の変化については前例なし)。親が能力者の場合、子どもも同系の能力者であることが多いため、遺伝と関係があるのではないかと疑われている。
○主
スミラエル教の唯一神。世界の60%が信仰している。聖典はスミラエル文献。偶像崇拝はあまり行われていない。(禁止している地域もある。) 人としての心の持ちようについて説いている。
世界で最も信仰されているが、熱心度は人それぞれ。教え(他人に優しくしなさい等)だけを実行する人から、文献に記されていることは全て正しいと思っている人まで多種多様にいる。地域差もある。