覚醒
何か、鋭利なもので引き裂かれたような感触。
振り返ると、そこには腕を血に染めた、ガーゴイル。
私は、激痛をこらえ、反撃した。
しかし、弱々しく振るった鎌は、空を切るのみ。
「モンスターが発病したのか……」
モンスターは、極度のストレスによって発病する病気だ。
さっきまで子供だった奴は、それでガーゴイルになっちまったのか。
子供なんかに構うんじゃなかったわ。
後悔してる内に、目の前の奴は、邪悪な顔つきで、私を殺すべく動こうとしている。
「ぜんっぜん、かわいくねーな」
可愛いとか、今はどうでもいいか。
だが、鎌を握る力が背中から逃げてく感じだ。
ダメ、かもな……
「……!」
その時、横から別なガーゴイルが、目の前の奴に突進してきた。
馬乗りになって、もう一匹を殴りまくっている。
「ラッキー、味方か!」
……つっても、状況が最悪なことに変わりは無い。
上空にも、右にも左にも、ガーゴイルが殺到している。
何でこんな私に集まるのか。
多分、シンが私のことをヤバい奴、早急に殺せ、みたく考えてるからだろう。
「……もう、賭けるしかねぇ」
周囲の奴らを、まとめて催眠にかける。
そいつらを全員、私の兵隊に変えて、戦わせ、離脱。
その最後の隙をついて、ウォーリーの実家に逃げ込む。
「……」
……嘘、だろ。
私は、絶句した。
周囲のガーゴイルが、みんな消えた。
連中には、いっちょ前に学習能力がある。
私の鎌の能力を警戒して、一旦影に身を潜めたに違いない。
「……なめんじゃねーぞ」
私は、鎌の刃を下に向け、全神経を集中させた。
どうにか、ウォーリーの実家に入ることに成功。
裏庭の窓から入ることが出来た。
んで、どうやってさっきのピンチを切り抜けたかだが、シンゲツに救われた。
あいつの、鎌の力を覚醒させる、っつー発想。
上手くいくか、賭けだったが、成功した。
私は、空間ごと催眠をかけて、影の中に潜んでる奴もろとも、催眠に落とした。
今、連中は同族同時で殺し合っている。
「ざまあ、みろ……」
つっても、私だって満身創痍。
血を流し過ぎてるし、ここから無事に帰れるか、分かんね。
部屋の中を歩きまわって、探す。
ここに、何かがあるハズだ。
私は、引き出しやら、冷蔵庫やら、所構わず部屋を荒らした。
だんだん、楽しくなってきたのは気のせいか。
そして、畳のある部屋に入った時、その奥に、何かが祭られているのが目に付いた。




