対面
引き出しを引っ張っると、どこかで見たことある死体が、中に入っていた。
ケイトだ。
私は、後方へとステップを踏んだ。
「……死体を見て、驚かれましたか?」
「……いや」
ウォーリーを守るための咄嗟の行動。
ケイトが蘇ったら、こいつのことを連れ去ろうとするかも知れない。
だが、優先すべきは、任務だ。
「……始めてくれ」
「始める前に、一つ。 私が呪文を唱えると、死者が目を覚ましますが、彼らは気が立っています。 出来るだけ刺激しないよう、質問を投げかけるのです」
マジでか……
鎌を片手に持ち、私は、コクリ、と頷いた。
「では、オホン。 始めましょう。 ウヘン、ゴホン、ムフン、あー、あー…… ゴフッ……失礼。 あー、あー、らららー、ドレミ~」
おいおい、準備なげーな。
別に、美声披露する必要ねーから!
と、思った瞬間、死体がムクリと起き上がった。
「……ウォーリー」
私は、ビクッ、とした。
棺から出てきたケイトは、腹が抉れている。
「あなたが、ウォーリーの面倒、見てくれてたのね。 ありがとう、もういいわ。 さあ」
ケイトが手を差し伸べてくる。
「ふ、ふざけんな。 ウォーリーは、私が面倒みんだ」
……おいおい、何言ってんだよ。
こいつに、少しの間預けるだけでいいんだ。
しかし、考えとは裏腹に、ウォーリーを抱えている腕に力がこもり、ぐっ、と自分の方に引き寄せる。
「まーま、まーま」
「ウォーリーは私の子よ、返して!」
「カンナ様、一度、彼女に赤ちゃんを……」
……クソ。
どうかしてるぞ。
自分でも気付かない内に、こんなにウォーリーに愛着が湧いてたとは。
「……大事にな」
私は、ケイトにウォーリーを抱っこさせた。
「ウォーリー、無事で良かったわ」
「みーみ、みーみ」
「ごめんね。 もう、ミルクは出せないのよ」
ちぇっ、何だよ。
ウォーリーのやつ、私が抱っこしないと、いつもぐずってたクセによ……
「……満足したか? ウォーリーを返しな。 それと、質問させてもらうが、あんたを殺したガーゴイルは、どこにいる?」
ウォーリーを、ケイトの腕から奪い取る。
しばらく、物推しそうな目でこちらを見ていたが、口を開いた。
「……キタノ区2-275番地」
「オーケー、行くとするか」
私は、さっさと安置所を後にした。




