8/14
猫毅 優介への手紙
「4分後に、南舎4階踊り場に。か………」
優介は、溜息を吐く。
ここ最近、よく『彼』なのか『彼女』なのかは分からないが、学園長に頼まれて仕方がなく『指示』に従っているのだ。
学園長も、学園長だ。
自分勝手な事をして、生徒に脅された。学園を統べる筈の人間が、最も権利を与えられていない筈の人間に許しを乞い、頭を下げる。
優介にとっては、祖父だから尻拭いをしてやっている。だが、本来ならこんな事を、
「するべきじゃない」
けれど、ここでこのままじっとしていても、状況は好転しない。
せめて、自分の事を信頼させて正体を暴き、沢山の者に明かすしかない。
「ぴったり、4分」
時間を計っていた訳では無かったが、考え事をしながら歩いていたからだろう、良い具合の時間に着いた。
そして、優介を出迎えた『それ』はフード付きのローブを着た見慣れたくは無かったのだが──、見慣れてしまった人影。
ではなく、手紙、だった。