親切という名の、悪戯心
放課後になった。
エリーゼには、先に帰ってもらったからバレたりはしないだろう。
水軌は、独りきりの教室で、電話を掛け始める。
夕日が、少し眩い。
目を細めた。
『も、もしもし!』
「もしもし、中等部の3年4組の水軌です」
『やはり、水軌さんでしたか! こ、今回はどう云った、ご用件で………。
も、もしや、この前の事をリークするとかではありませんよね!?』
焦った様な学園長の声に、水軌は思わず笑ってしまう。
『………!?』
「あー、いえ、なんでもありませんよ? でも、無用心だったり、いままで通り動いてくれなかったりしたら、いつでも活用させてもらうのでそこにはお気をつけ下さいね?」
「あ、あと、新しいネタも掴めましたから。
え?いえ、僕は人を脅したりしていないので、そこはご安心下さい」
「それと、猫毅 優介君を──お孫さんを呼んでいただきたいのですが」
『わ、分かりました!近くに居る様には言っておいたのですぐに呼びますね』
40秒程経ってから、相手が代わったと告げられる。
『はい、お電話代わりました、猫毅 優介です』
「やぁ、猫毅。僕だ」
『また、君か!いい加減に人をゆすったりするのはッ………! 学園長も、何故この様な人に肩入れをッ!』
言い争いが始まった。
さすがに、僕もこれ以上帰りが遅くなるのは避けておきたいところなので。
「あのー、大丈夫?仲裁しに行こうか?」
『必要ないです‼』
即答だった。
僕の親切が無下に扱われたことに対しては特になにも感じたりはしなかったが、とりあえず用件は済ませておきたい。
「南舎4階踊り場に4分後に来て、丁度に来れなかったら学園長のこの前の件バラすから」
そのまま、電話を切った。
では、さっさと動かなければ。