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僕のために生きて欲しいんだ。  作者: 望月月華
番外編の始まり、穏やかな日常の終わり。
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『ローブを着ている情報通』の正体は?

カリカリ梅食べたいです。

 


 優介は、その言葉に憤慨し、面食らいながらも勢いよく答える。


「そっ、そんな訳が無いだろう!それに俺だって、こう見えても急いでいるんだ、用件を簡潔に言ってくれないか?」



「何をそんなにカリカリしているんだい?まぁ僕も急いではいるから別に良いけどね」


 カリカリ梅が久しぶりに食べたくなってきた。


 と呟きつつ、『ローブを着ている情報通』が用件を伝えてくる。


「3年4組の、転入生歓迎会に俺も参加する?」


 あぁ。

 と答えられても、理由が不明確過ぎて気分は勿論乗らないのだが?


「そう、実はその転入生って云うのが僕の友達の事を好きになったらしいんだけど、大事な友達に変な虫は付けたくないんだよ」


 成程。良い感じの雰囲気とやらにさせない様に対処するのを手伝うと云った流れらしい。


「因みに、転入生の歓迎会って会場は何処なんだ?ボーリングとかの定番スポットか?」




「いや、カラオケらしい」


 その単語を聞いた途端、俺の心臓は早鐘の様に鳴った。



「カラ…オケ?」


「あぁ、どうかしたか、顔が赤くなってるけど………?もしかして、熱でも出たのか!?大丈夫か!」


 そう言いながら『ローブを着ている情報通』が慌てた様子で、階段を駆け降りてくる。


 人並みには、人を気遣う心を持っている様だ。


「っと!?ひゃぁっ!」

 階段の上を、滑る事もある様だが。


 いつもより、少し高い声をあげる。




 至近距離で見る事はこれ迄無かったが、やはり俺よりは小柄で、健康的な程度に痩せていた。

 そして、女の子の様な柔らかい腕と太腿。

 甘ったるい、 と云うよりは甘酸っぱさを感じさせる香り。

 仄かに掛かる少し熱い吐息。

 少し開かれた、退紅(あらぞめ)色の唇。

 辛うじて捲れていないそのフードから、零れ落ちた藍色で癖の無い真っ直ぐな髪。


 そして胸の辺りに押し当てられた感触で我に帰る。


『柔らかい』ではなく、『冷たい』。

 見てみるとロケットペンダントだった。


「大………丈夫か?」

「僕は大丈夫だが………君は?」

「俺もだ。しかし、君ってもしかして………」



「『女子生徒』なのか?」

「『女子生徒』だよ」



 シャキッと立ち上がってから、ローブに付いた埃等をパタパタと取っている『女子生徒』。


 驚きのあまり、立ち上がれない優介。



『女子』かもしれないと云う事は分かっていたが、煽る様に気兼ねなく接してきてくれて初めての男友達の様な気がしていたのに何か裏切られた気分に陥る。


 しかし、女子相手に今迄粗雑な対応をしたのは確かなので詫びようと思いそのまま、立ち上がらずに正座した。

「すまない、数々の無礼を許してくれ、とは言わないが謝罪はさせて貰えな…」


「つまらない」

「へ?」

 ポカンと云う擬音が最高に似合う顔をして、『ローブを着ている情報通』──、いや、彼女の顔をじっと見つめる。


「僕は、自分に刃向かう人が極端に少ないんだよ、不思議なくらいにね?だから、君との会話はそれなりに楽しんでいるんだよ。それをやめようとするなんて、酷いじゃないか」

 加虐を帯びた声音には、一抹の静けさが含まれていた。


「分かった、謝罪は取り下げよう。その代わり、不躾な俺は君の名前を知りたいと思っているんだが」


 真っ直ぐな瞳が彼女を見つめる。


 そんなにまじまじと見ないでくれ。

 と恥ずかしがりつつ、彼女は名乗った。




「僕の名前は水軌。水に、軌跡の軌って書くんだ。容姿だけじゃなく、名前も中性的だろう?」




 水軌がフードをパサリと取る。


 藍色でサラサラとしたストレートの短い髪が目に留まる。


 その瞳は隠れていたが、きっと綺麗なのだろう。


 優介が少し見惚れていると、遠くから声が聞こえてきた。



「優介ー、何で最近会いに来てくれなかったの~、あんまりよー!」



 水軌は人が近付く事を察知した為か、優介に、

 じゃあまた明後日にでも。

 と言い残し、姿を消した。


「ひさしぶりね!優介、誰かとしゃべっていたのかしら?」

「久し振りだね、美華、友達と喋っていたんだよ」


 初等部4年生にしては少し高い身長に目線を合わせようと、右膝を折り畳み、優しく声を返した。

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