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プロローグⅡ 死後の世界の白さは、体操服と同じ(実体験)

 気が付くと、俺は白い空間に立っていた。


「初めまして、勇者ヨシトさま。私はアルカパ、この世界を統治する女神の一柱です」


 目の前には、銀髪の少女。

 ふわり、と優しげに微笑みかけてくる。


「邪神の討伐、ありがとうございました。神族一同に代わってお礼を申し上げます」

「あ、これはどうもご丁寧に……」


 俺はペコリと一礼する。


「こちらこそ貴重な経験をさせてもらって楽しかったです。どうもどうも」


 うーむ。

 我ながら小学生並の感想だ。

 けどまあ、こういう時にパッと気の利いたことなんて言えないよな。

 と、思っていたら。 


「……ぷっ」


 なぜか、アルカパ様のツボに入ったらしい。


「ぷっ、くくくっ、ちょ、ちょっとタンマ! き、貴重な体験って、あはははっ、仮にも神様を殺しちゃったのに、貴重な体験で済ませちゃうとか、ひー、お腹痛い、痛い!」

「大丈夫ですか?」

「や、やばい、ちょうやばい。あはははははっ! キミって最高、うん、最高!」


 バシバシバシ、とものすごい勢いで肩を叩かれる。


「いやー、ヨシトくんって面白い子だねっ! なんだか気に入っちゃったよ!」


 なんだか最初に比べてずいぶんと口調が違う。

 こっちが素なんだろうか。


「やっぱ人生のラストをジョークで締めるだけあるね!

 『死因:忘れ物』なんて……くくっ、あははははっ!」


 またも笑い出すアルカパ様。

 フワフワの、天女みたいな服を着てるんだがあっちこっち乱れまくりだ。

 胸がぽよんぽよんと揺れて、太腿もぷるんぷるん。

 そうか、ここが天国だったんだな……!

 まあ死後の世界っぽいから当たり前なんだが。


「ごめんごめん、笑いの沸点低すぎかな、わたし」

「可愛いと思いますよ、そういうの。俺は好きです」

「あ、うん……」

「どうしました?」

「な、なんでもない、なんでもないよ? というかキミ、誰にでもそういうこと言ってるでしょ」

「そんなことありませんよ。なんだかアルカパ様って話しやすいというか、波長が合うんですよね」

「ま、まあ、わたしもそう思うけど……って、それより本題だよ本題。

 実は、世界を救ってくれたヨシトくんには素敵なお知らせがあります」

「アルカパ様のアシスタントに任命とか?」


 だとしたらかなり嬉しい。

 テンションも近いし、神様だけあってかなりの美少女だ。

 もし同じ人間だったら花束持ってお付き合いを申し込むレベル。中に婚姻届けを仕込むまである。


「えーっと」


 なぜか照れ気味に視線を逸らすアルカパ様。


「実はこの空間って、心の声とか聞こえてきちゃうんだよね……」


 マジすか。


「マジだよ」


 ということは、その、花束云々とかも――。


「と、と、とにかく!」


 俺の思考を遮るようにアルカパ様は大声で言う。


「邪神を倒してくれたヨシトくんには! 人生をもう一回分プレゼントしちゃいます!」


「おおっ!」

「しかも転生先は現代日本、しかも特典付き、やったね!」

「やったぜ!」

「「イェーイ!」」


 ハイタッチ。

 パチン、と小気味いい音が響いた。


「で、どんな特典が付いてくるんですかね。SFCが3000円安く買えるクーポン券とか?」

「またずいぶんと古いネタだね……スーパー〇リオRPGのCMだっけ」

「よく知ってますね」

「女神はとっても賢いのだ、えへん」


 得意げに胸を張るアルカパ様。ちょうかわいい。

 俺、生まれ変わったらこの(ひと)を信仰するんだ……。


「あはは、ありがと。話を戻していい?」


 どうぞどうぞ。


「ヨシトくんには向こうの世界でも魔物っぽいモノと戦ってもらうことになるし、特典もそれに合った感じのがいいかなー、って」


 ……は?


「すみません、なんか今ものすごく不穏なフレーズが聞こえたんですが俺の空耳ですよね」

「ううん、合ってるよ」

「あーよかった俺の勘違いだったんだ、当たり前だよな向こうには魔物なんて……えっ?」

「妖怪とか幽霊って言った方が分かりやすいかな? ああいうのって本当にいるんだよね」


 おいおい。

 ちょっと待った。

 なんだか俺の知ってる現代日本と違うぞ。

 サンタは親、幽霊の正体見たり枯れ尾花。魔法も心霊現象も迷信じゃなかったのか?


「一般の人には秘匿されてるけどあっちの世界もなかなかファンタジーなんだよ?

 で、キミには悪霊やら何やらと戦ってる一族に転生してもらうからよろしく!」


 いやいや。

 今まで十二分に頑張ったし、来世くらいはのんびり暮らしちゃだめでしょうか。


「キミも言ってたよね。邪神を倒せて貴重な経験だった、って」

「ええ、まあ」

「せっかくだし、次もそれを生かせる環境で暮らしたほうがいいんじゃない?」


 えっと、それなら別にスポーツとかでも――。


「わたし、キミが戦ってる姿、けっこう好きなんだけどなー」


 うっ。

 くそう、上目遣いなんてしやがって。


「見てると胸がキュンってするの。この気持ちって、何かな……」


 なんてあからさまな色仕掛けなんだ。

 こんな罠に、百戦錬磨の勇者である俺が、騙されるわけが――


「分かりました頑張ります、俺の活躍を目に焼き付けてください女神さま」


 ダメでした。




 * *




 チョロいヒロインを略してチョロインという。

 ならば、チョロいヒーローはどうなるんだろう。

 チョーロー?

 なんか村の偉い人っぽいな。長老。

 ともあれ俺は現代日本に出戻り転生することになった。

 赤子からのスタートで、身体能力もそれに合わせてリセット。

 ただし異世界で覚えた魔法はそのまま使えて、スキルもある程度は反映されるらしい。


「【鑑定】は使えますか?」

「できるけど、向こうにはレベルとか能力値の概念がないんだよね。

 だから無理矢理こっちの形式に当てはめる感じになるかな。他にリクエストはある?」


 これから俺は現代日本で暮らすわけだが、ふむ。

 地獄の沙汰も金次第とか、金は命より重い……ッ! みたいな言葉もあるし、ここは、


「金運アップ、とか」

「オッケー。『宝くじが毎回1等賞』とかは難しいけど、それなりの額はあたるようにしておくね」


 さっきも思ったけどこの女神様、地味に日本のことに詳しいよな。

 もしかしてお忍びでときどき遊びに来てるんじゃないんだろうか。


「じゃ、そろそろ出発しよっか」


 俺の足元に魔法陣めいたものが浮かび、だんだんと意識が薄れてくる。


「あっ」


 なんでしょうかアルカパ様。

 しまった! みたいな顔をされるとものすごく不安になるんですが。


「そうい……伝え忘れ――けど」


 けれど困ったことに、声がだんだん聞こえにくくなっていく。




「ちょっと前に―――――……も転生…………、キミにべた――…………病――――」


ご覧いただきありがとうございました。

タイトルはフィクションです。

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