2話 さあ、これから愛と勇気の物語が……始まらないっ!
会話多めというかほぼ会話しかない。
「さて、始まりました。クソラノベを作ろう!(仮題)のお時間です。司会はこのワシ、クソラノベの神様が……」
「ちょっとちょっと!」
「ん? なんじゃ少年?」
「プロローグ無視しないてくださいよ! これは、僕と神様が紡ぐ青春活字冒険譚なんですよ! そんな『さて、始まりました。クソラノベを作ろう!(仮題)のお時間です』なんて、冒険譚の始まり方じゃないじゃないですか! ここはやっぱり、僕と神様が出逢って、様々なクソラノベを読みながら、巨悪を倒す。そういう一般受けする展開じゃないと! せっかくイベントとか設定とか、いろいろ考えたんですから」
「甘いわ少年! ちゃんとあらすじも読みなさい! しっかりと注意書きがあるじゃろう。『青春していません』『冒険譚ではありません』と」
「そんな! これじゃあ詐欺だよ!」
「詐欺ではない! そもそも1話のタイトルにも『本編の内容を無視』とあるではないか!」
「ま、まさか……」
「そう、この作品にストーリーなど(ほとんど)存在しない!」
「チクショォォォォォォ!」
「そう泣くな少年。作者の気が向けば、可能性はゼロではない」
「じゃ、じゃあ僕の考えたイベントや伏線、設定は死なない……?」
「うむ。きっと作中作で使われるじゃろう」
「なんだ、それなら…………って、神様、たしか作中作っていわゆるクソラノベ、ですよね?」
「じゃな」
「ってことは」
「少年の案はクソラノベとして生き続ける」
「チキショォォォォォォ!」
「いいではないか、クソラノベ。そもそもタイトルがクソラノベを作ろう!(仮題)なんじゃしな」
「そんな……僕が作りたいのは面白いラノベで、クソラノベなんかじゃないんです……」
「少年……クソラノベが面白くないと、一体誰が決めたのかね?」
「ど、どういうことですか?」
「クソラノベにはクソラノベの面白さがある。そもそも、面白くないからクソラノベと呼ぶのではない。残念なことに世間一般には受けなかったがためにクソラノベと呼ばれてしまうのじゃ」
「でも、でもそれって結局面白くないってことじゃないですか!」
「違う! 違うぞ少年! 十人十色、どんな作品にも合う合わないはある。たとえ世間が合わないと言っても、合う人は必ずいる! それを面白くないと、一言で断定してしまうのは、つまりその作品のファンを殺す言葉に他ならん! お主は、ファンを殺す気か!」
「!!」
「前を向け、少年。後ろを向いては、ファンと向き合えんぞ……」
「……神様、僕、頑張ります。面白いラノベを書いて、書いて、いつかファンがたくさんの人気作家になります!」
「その意気じゃ、少年!」
「はいっ!」
地平線の向こうに、青春の夕日が沈んでいく。
名もなき少年の、
作家への第一歩が、
今!
踏みだされる!
「まあどんなに意気込んだところで、この作品ではラノベは作らんのだがな」
はずだった。
「……………………えっ?」
「少年、タイトルをよく読みなさい。クソラノベを作ろう!(仮題)じゃ。(仮題)を無視してはならん」
「えっ? えっ? ちょっと、えっ?」
「(仮題)。それはつまり、このタイトルは正規ではありませんという意味じゃ。だから、ラノベを作るなどと、どこにも明記されておらんぞ」
「じゃ、じゃあ……」
「この作品では、ラノベは書かん! 作らん!」
「ド畜生がぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
少年と、神様の物語は、まだ始まったばかり…………
始まらない物語と迫るネタ切れ……。