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サイダーボーイ

作者: 火の鳥

初投稿です。どうぞよろしくお願いします。


毎日、蒸し暑い夏休み。鳴り続ける蝉の声。ジリジリと照りつける日差し。ほとんど老人ばかりのこの団地に近所の小学生達がこぞってやってくる駄菓子屋「下条店」その店の店主には二人の子がいる。


一人は娘の『下条さとみ』真面目な性格で将来教師を目指す18歳。

そしてもう一人は……


「うるせぇなババァ!店なんて手伝わねぇーっていってんじゃねぇか!」と

息子の『下条ゆう』だ。現在進行系で反抗期中の16歳。学校ではおとなしくしているのに家ではすごく反抗的な態度をとっている。

夏休みになって店を少しでもいいから手伝えといわれても、すぐ断り家を出て遊びに行ってしまう。



「あんた、毎日どこほっつきあるいてるの?あんたがいないせいで店の手伝い私だけだよ?なんで手伝わないの?」

とさとみがゆうをひきとめるが、ゆうにとってはその姉の言葉さえにも腹が立ってしまう。


「だまれよ。俺の勝手だろ。」


と姉に冷たく暴言を吐き家を出ていった。






「ったく……母さんーゆう行っちゃったよー。」


「ほっときゃいいのよ。あんなバカは。」

そう言うと母は店のシャッターを開けレジに座った。そして

「今日は私一人でも大丈夫だからあんたは遊びに行っていいよ。」


とゆっくり言った。



そうしてさとみも店を出た。











一方家を出て遊びに行ったゆうは団地のふもとにあるコンビニで眉間にシワを寄せながら立ち読みをしていた。


「なんだよ、どいつもこいつもうるさいんだよ俺の勝手だろ、そんなに言うなよな。」


と苛立ちながら本を読んでいた。





一冊読み終えた所で小腹が空いたので何か買おうと店に戻ろうとしたその時携帯電話が鳴った。

相手は姉のさとみだ。



「もしもし?」


歩きながらそう言うとさとみは声を震わせて








「母さんが階段から落ちた………」





予想外の答えに思わず立ち止まった。

一瞬信じられなかったがゆうは次の瞬間に走り出していた。










家に帰るとさとみが電話をしていた。どうやら母の搬送先の病院のようだ。


走ってかいた汗を腕でぬぐいお茶をコップ一杯のんだ。そしてさとみに母の状態をきいた。


「母さん、どうだって?」


「たいしたことじゃないけど骨折で一週間動けないって。」


たいしたことじゃないとしり一息ついた。


「母さんが私が動けない間ゆうと店を手伝って欲しいって。」



「はぁ?」

いきなりのことについ

「いやにきまってんだろ。そんなんさとみ姉が一人でやりゃいいじゃん。」


と言ってしまった。


そのままゆうは店をあとにした…。








つぎの日ゆうは朝早くから家を抜け団地を出て行った。店をやりたくないのでかなり遠くまで来てしまった。

その日もそこのコンビニで本を読み時間を潰した。



ゆうが帰ろうと動き出した頃にはすでに日が落ちかけていた。かなり遠くまできてしまった為、家まで長くかかった。

こんなとこまで来るんじゃなかったと思いつつ足を動かした。









家についた頃には完全に日が落ちて周りは真っ暗だった。どう言って家に入ろうかとおもったがそんなことを考えているうちに喉が潤いを求めた。


(店になんかあったっけ)


そんなことを考えながら店へ向かった。






少し暗いが商品は見えた。その中に一本だけ箱に入っていないサイダーがあった。ゆうはそれに手を伸ばし、飲もうとグッと蓋を押すと勢いよく炭酸がはじけた。


「うわっ」


あまりのあふれた量に驚き思わず声が出てしまった。

すぼんと服がびしゃびしゃで肌にくっついていた。




「あんたみたいだよ。そのサイダー。」


後ろから声が聞こえた。さとみだ。



「なんだよ」



ときをとりなおして言うと、


「あんたみたいだって言ったの。だってその口を開けば口答えするあんたとサイダー、似てるもん」




なんとなく分かった。自分はサイダーか…と思いながら一口のんだ。さとみもサイダーを飲んでいるようだ。


そして静かな空気がながれ間があいた。









「母さんね、いつもゆうがお腹をすかせてないかって言いながらご飯作ってたんだよ。」


口を開いたのはさとみだった。


いきなり何を言い出すのかとゆうはとまどっていた。すると、さとみはさらに続けた。



「前になんでゆうが店を手伝わないことをそんなに責めないか聞いたんだ。そしたら、あの子は父さんに一度も会ったこと無いから寂しい思いをさせちゃったのよね。だからわがままだけでも聞いたあげようとおもってたのって、言ってたの。」





ゆうはあまりの返答に涙がこぼれた。


文句をいい続けた自分のことをそこまで思っていてくれた。


いままでやってきたことと母の愛情に涙が溢れて止まらなくなった。





「明日こそは手伝ってね。」








姉の声が優しく聞こえた。


ゆうは姉の言葉に対し肩を震わせ小さくうなずいた。











――――――――――――――――――




つぎの日


蒸し暑い夏休み。鳴り続ける蝉の声。

ジリジリと照りつける日差し。老人ばかりのこの団地に小学生がこぞってやってくる駄菓子屋がある。




そこには汗水垂らしながら働く青年の姿があった。






その顔はまるでサイダーのように透き通った笑顔だった。







END


ありがとうございました。ぜひ感想お待ちしております。

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