フランチェスカとドド芋の揚げたてフライ ディアドラス風 おまけのおまけ
フランチェスカとドド芋の揚げたてフライ ディアドラス風のおまけの後のこと
↓↓↓
「イシュ」
「はい」
扉を開けたままの隣室から、イシュルカがやってくる。
「聞いていたのだろう?安定した価格で買取するように明日中にトトヤと価格調整をしておけ」
妖精族との混血であるせいか、彼はとても耳が良い。隣室に居ても二人の会話はちゃんと承知している。
「わかりました。公金の補助は?」
「おまえの裁量範囲で済むものなら構わない」
「はい」
銀の髪に蒼い瞳、妖精族との混血のせいでおそろしく整った顔立ちのイシュルカは、マクシミリアンの側近の中でメロリーと人気を二分する。
ただし、ホテルの客室係の女性の人気はあまりない。
『姉が五人いる末っ子の長男』という立場で育った彼は、本人曰く、『幼時より恐ろしい女性体験を重ねてきた』ために女性に対し夢も興味もなく女性に厳しいからだ。
美形は遠くで鑑賞するのが良いということだろう。
「それと、一時的に屋台営業の申請が増えることが予測される。誰か一人、窓口に派遣しておけ」
「グレンで!」
間髪いれぬ即答だった。
「その心は?」
「あのバカは、先日の夕食時に、間違って私のデザートに手をつけました。ヴィーダが、私が好きだと聞いたからと手ずから作ってくださった苺のババロアにです!!」
ニコニコと愛想よく笑っているが、その瞳には極寒の暴嵐が映っている。
その輪郭が淡く発光しているのは、その荒れ狂う感情に魔力が溢れそうになっているからだ。
「なのに、「あ、すまん、間違った。……なんだ、これ、嫌いなのか?俺が食おうか?」ですよ?!好きだから、ババロアに合う花茶が運ばれてくるタイミングで食べようと思っていたのに!!!」
「それは……」
「殿下は、自分が大事に食べようととっておいたプリンを誰かに食べられて平気でいられますか?一番おいしい最初の一口を奪われて許せますか?」
「うむ。それは許しがたい犯罪だな。わかった。休日返上で行かせてやれ。泣いて喜ぶ」
「はい」
イシュルカは、我が意を得たりとばかりの清々しいまでの爽やかな笑顔でうなづいた。