わりとヤンデレ?
超軽いノリで書かせていただきました。リクエストっ! ありがとうございますっ!
期待に応えられている自信は皆無ですっ!
今日も廊下でマリシアとすれ違った。
「よう! マリシア」
「…………」
いつもながらの安定の無言。会釈すらしない。
いつもどおりにそのままやり過ごそうとしたが、マリシアが立ち止まって動いていない気配を背中で感じる。 振り向くとマリシアがこっちを向いて立っていた。
じっと見つめてくる。
「どうしたの? なんか用?」
「…………」
やっぱり無言。
マリシアの腕がそっと上がる。右腕で俺を手招きする。
以心伝心。俺はマリシアの意図を即座に理解する。
「着いて来いって?」
マリシアが肯いた。
いつもの魔法薬の研究室。
マリシアは自分の机に行ってなにやらごそごそやりだした。
俺は黙って見守る。
気がつくと……、ナイフを手にしたマリシアの姿があった。
一歩ずつ、一歩ずつ。ゆっくりとこっちに近づいてくる。
その瞳には……、いつもの無表情とは違う。なにかの決意が込められていた。
「ちょ、ちょっと! 何する気だよ!」
俺は後ずさりする。
「ゆ……び……」
マリシアが呟く。ゆび? 指のことか?
指を出せということ?
聞いたこと無いが、あれで俺の指を少し切って魔術か呪術かに使うんだろうか?
まあ、マリシアのことだから危険なことはしないだろう。
俺はいわれるがままに指を出した。
マリシアが俺の指を左手で掴む。そしてそっとナイフを当てる。
「痛っ!」
もちろん、ナイフで切られたのだから痛いに決まっている。
とはいえ、とても小さい切り傷だ。絆創膏も要らないぐらい。
俺は強い男の子だから我慢もできたが、あんまり気持いい体験とはいいづらいのでその意思表示も含めてあえて「痛い」と口にした。
マリシアは俺の指をそのまま自分の口に持っていってぺロリと舐めた。
なんなの?
口に持っていった俺の指を再び下ろして見つめるマリシア。
舐められたことで一旦流れていた血はなくなったが、また新たに血が滲んできた。
そして、ぶつぶつと何かを唱えだした。
すると血は止まり、傷が塞がった。
あ……、マリシア回復魔術使えるようになったんだ。そりゃ凄い。
回復系って、初級でも難しくてセンスなかったら使えないとか言われてるのに。
俺は正直にそれを伝えた。
「すごいじゃん! マリシア! 回復魔術使えるようになったんだね!」
「…………」
その後、会話が弾むわけもなく、マリシアはいつものとおりに魔法薬の研究へと没頭していったので俺は頃合を見計らって、部屋を後にした。
■マリシアside(作者の推測ですので、実際のマリシアの思考とは一致していない可能性がございます。というかその可能性大です。というか、マリシアの思考をトレースするのはもはや諦めました。本『マリシアside』は空想科学小説としてお読みください)
「よう! マリシア」
ルート……。
「…………」
ちょっと、時間……あれば……。
「どうしたの? なんか用?」
来て……。
「…………」
「着いて来いって?」
そう……。
ペーパーナイフは……駄目……。切れない。
こっち……。
「ちょ、ちょっと! 何する気だよ!」
大丈夫……。
「ゆ……び……」
少しだから。
「痛っ!」
我慢。
治す。
「すごいじゃん! マリシア! 回復魔術使えるようになったんだね!」
ポ。
なんだこれ パート2