わりとスライム祭り(とプラシ博士の異世界戦力分析)
異世界における魔物の強さやギルドランクについて長々と語ったりします。
多少メタ要素あります。
前半は自己満足の退屈な説明です。本編でも少しずつ説明しようと思いますが、まとめて書いちゃいます。
(あとあと変更にならない可能性はゼロではありません……。)
後半もグダグダです。お暇で心の広い方だけでもどうぞ。
さて、発表会で好成績をおさめた俺達――発表会に参加したプラシとシノブとおまけのミッツィ――は、ギルドに仮登録できることになった。
以下、プラシのご高説。
「とりあえず、仮登録だからFランク相当として扱われるみたいだね。
みんなギルドのランクについては知ってるよね?」
「いや、まあなんとなくだけ……」
とシノブが頼りない返事をする。
「しょうがないなあ、これから冒険者になるって言うのにそんなことじゃ」
「だって、あたしは、天辺のSクラスしか目指してないからね!!」
「Sクラス? 最上位クラスが別にあるのも知らないんだ?」
「えっ? えっ? そんなのあるの? 知ってた? ルート? ミッツィは?」
シノブが俺達を見回す。
「わたしは聞いたことありますけど……」
「俺もなんとなくだけは」
「折角の機会だからおさらいしておこうか。
ギルドに入ると普通はFランクから始まる。通称ルーキー。
Fランクには依頼は無いけど、冒険者はひとつ上のランクの依頼も受けられるからEランクの依頼を受けることが出来る。幾つかこなせば普通はEランクに上がれる。
その後は、D、C、B、A、Sとなって、最後は伝説級とも言われる『L』ランク」
「『L』……なんてものがあるの?」
「形だけだけどね。もともとは、英雄ハルバリデュス達のために設けられたランクで、そのランクになるためには、それこそ伝説級の活躍をして功績を残さないといけないよ」
「よし! なってやろうじゃないか! あたしがそのLランクの冒険者に!!」
「でも実際問題としてね。
さっきも言ったギルドのランクだけど、約七割の冒険者はEランクでとどまっているといわれてるんだ」
「えっ? EってルーキーのFの次のランクだろ?」
「うん。だけど、下から3つ目のDランクでも上位20%ほどという狭き門だという話だよ。
Cランクになると、上位5%ほど。BとかAとかっていうランクの冒険者は数えるほどしか居ないって。Sランクなんか今はどうかなあ。ひょっとしたら誰も居ないかもね。
もっともSランクともなると普通は滅茶苦茶有名になるよね。それか逆に国家レベルの事案を秘密に処理する専用の係みたいな人で、名前が広まらないとかそんなことも多いみたいなんだ。
今は平和な世の中だしそんなに有名な人は居ないよね」
なんでも知ってそうなプラシに俺は興味本位で尋ねてみた。
「あのさあ、例えば騎士団の団長とかさ、それからプラシの叔父さんのパルシなんかはギルドランクで言えばどれくらいになるの?」
前者は、若かりし頃のゴーダを意識しての質問である。後者は単に知ってそうだからついでに。
「そうだねえ。
パーティの構成とかその人の依頼のこなし方とかのスタイルによっても変わるから一概には言えないけどね。
騎士団で一番強い人でCランクぐらいかなあ。人によってはDだったりBだったりすることもあるだろうけどね。
パルシぐらいの魔術師だったら、良くてBランクかな」
「意外に低くてびっくりした……」
俺は正直な感想を漏らす。
「今の世の中ではAランクはかなり特別な存在だと思って置いたらいいと思うよ。
SとかLなんてそれ以上なんだから、よっぽどの運も無いと上がれないね」
「そんなことよりさ、さっさとギルドへ行こうぜ!
魔獣でも狩ろうよ。適当なさあ」
「シノブ、今、魔獣って言ったよね?」
「ああ、言ったけど?」
なんかプラシに変なスイッチ入っちゃったかな?
「ギルドのランクと魔物の強さの関係性をわかって言ってるのかな?
ちゃんと自分の身のほどをわきまえてらっしゃるのかな?」
「えっ? え?」
「この世界には、魔物と言っても大きく分けて3つの種族がいるよね。
野獣種と、昆虫種と爬虫類種。
爬虫類種の中でもリザード系とそれ以外に大きく分けることが出来る。
昆虫種なんて多彩もいいところだ。
シノブが言った魔獣って言うのは、正式には野獣種と呼ばれる。
哺乳類に類似した形態を持つ種族。
確かに、この3種の中では一番相手しやすい種族だろう。
だけどね、さっきも言った通り、僕たちは実力的にはギルドのランクで言えばE程度なんだ。ルートだってDにすぐなれるかどうかはわからない。
それぐらい、ランクの高い冒険者たちっていうのは凄いんだよ」
「あ、ああ……」
圧倒されたシノブは頷くことしかできない。
俺とミッツィに至ってはただただプラシの話を右耳から聞いて左耳に流すだけ。
「野獣種で中くらいの強さの魔物を倒すのってギルドの依頼にしたらどのランクだと思う?
そう、ひとりでやるならランクD、パーティで臨むならランクEの依頼だよ」
聞いておいて答えを待たずに自分で答えるってのは悪い兆候だぞ、プラシ。
プラシは俺の冷ややかな視線に構わず続ける。
「野獣種でも強いものになるとパーティで向かってもランクCとかだってあるんだ。
そんなのが相手だと、はっきり言って今の僕たちでは勝ち目がないね。
さらに、それより強い昆虫種や、爬虫類種。
昆虫種は、寿命が短く短いサイクルで突然変異と自然淘汰を繰り返して、多種多様な力を身に付けた種族だ。
新種も多く、野獣種なんかよりも全然手ごわい」
『全然手ごわい』というのは誤用なんだけど突っ込める雰囲気じゃないな。
「昆虫種は硬い外殻に覆われていて、魔術も効きにくい。
さらに強敵なのは爬虫類種だ。
竜と親和性が高く、竜の戦闘力を色濃く残している。
硬い鱗に覆われた有鱗種、甲羅を持つ亀種、水棲種である鰐種、それから古代種がいるね。
古代種に至っては、竜と同じくらいの強さを持つって言われているほどだよ。
今では生存しているかどうかも怪しまれているぐらいの絶滅危惧種だけど。
その次に強いのがもちろん有鱗種。古代種と有鱗種を合わせてリザード系と呼ぶ。
だけど、他の種族も侮れない。
ワニ系は水辺で圧倒的な力を発揮するし、亀系の防御のすざまじさもすごいんだ。こっちの攻撃をすべて無効にしてくる」
すでにシノブは寝てしまっている。
「ギルドランクと比較すると、
Lランク:もはやドラゴンの大群や一国相手に戦えるほどの強さ
Sランク:複数のドラゴン? かかって来いやあっ!
Aランク:強い爬虫類種となんとか戦えると思います
Bランク:強い昆虫種行けます! 普通の爬虫類種も!
Cランク:ひょっとしたら、弱い爬虫類種行けるかも?
あとは普通の昆虫種ですね。超強い野獣種も面倒みましょう!
Dランク:昆虫種はちょっとやだなあ。野獣種なら大体相手できるかな?
Eランク:ごく普通の野獣種でお願いします ちょくちょく苦戦しますけどっ
Fランク:弱い野獣種とかスライムとかで勘弁してください
という感じの設定なんだ。全部そのランクの冒険者が3~4人集まったパーティでの戦力比だと考えてね。もちろん相手の数が増えると必要なランクは上になるからね」
というわけで、俺達はギルドでの仮登録を終えて依頼掲示板の前に居た。
Eランク掲示板の前である。というかFランクに仮登録された俺達が受けられる依頼はそれしかない。
学校へはギルドへ行くことを届出済み。公欠扱いになるので出席日数には響かない。
真面目な生徒とは言い難い俺達(プラシとミッツィは除く)にはありがたい制度だ。
「これと言った依頼がないじゃない!」
シノブの嘆きももっともだ。Eランクともなれば、雑用みたいなことが多い。
魔物が出そうなところでの掃除とかゴミ拾いとか、どちらかというと戦闘力じゃなくて逃げ足の速さが求められるような依頼。
「あの……えっと……一応……ス、スライム討伐ならありますけど……」
ミッツィが小さな声で言う。
「スライム~」
シノブは不満そうだ。
またプラシのスイッチが入った。
「スライムを馬鹿にしちゃいけないよ。
スライムとはそもそも、死に絶えた魔物の魔力が精霊結晶となりかけた時に……」
無視して俺とミッツィでスライム討伐を受ける手続きを進めた。
「……それにスライムにだって強さはいろいろだ。
何億分の一と言う確率が必要となるが……かくかくしかじか……」
プラシはまだ続けている。もちろんシノブは聞いていない。
というわけでスライム討伐の開始です。
依頼の内容は簡単。割り当てられたエリアのスライムを沢山やっつけること。
細かい制限や規制は一切なし。政府御用達のお安いお仕事です。
「食らえ! ヒートパンチ!! コールドブロー!! ウィンドアッパー!! ロックオンミサイル!!」
シノブは始めは楽しそうだった。
状況が変わったのは、昼前の時点。
「あっ、やばいよシノブ!
そいつは毒持ってるから!!」
プラシの警告。
「んなこと言ったって、あたしの武器はこの拳だよ!
毒を食らったら、ミッツィに回復してもらえばいいじゃない!」
「あの、えっと、一応先着2名様です……。
それ以上はもう魔力が……」
「えっ? あたし既にもう毒に侵されてるんだけど?
ひとり2回は無し?」
俺はしずかに首を振った。毒持ちスライムはどんどん湧いてくる。
「しゃあないな。
体力の限界までこいつらをしばいて、ギリギリで回復してもらうとするか!」
シノブはスライムの群れに突撃だ。
「おい、プラシも毒ぐらい治せるんだろ?」
「僕ももう魔力が……」
大群相手に魔術師と言うのは無力なものである。
なんだかんだプラシも序盤は飛ばし過ぎたのだ。魔力をほとんど使い果たして今は剣で戦っている。
スライム討伐のノルマは日暮前まで。
念のために、プラシの魔力もミッツィの魔力も、俺の魔力も温存しておいて肉弾あるのみだ。既にペース配分はグダグダで今さら感が漂うけれど。
単体のスライムならミッツィですら対等以上に戦える相手だ。
俺やシノブの戦闘力なら、1匹どころか100匹でも問題ない。(ただし状態異常攻撃は除く)
「うりゃ! おい! うりゃ! おい!」
累々と積み重ねられるスライムの死骸。いや、スライムは死んだ瞬間消滅するから死骸は溜まらない。
あとどんどん湧いてくる。キリがない。
あとから知った話だが、消滅したスライムの死骸からまた一定の確率でスライムが誕生するのだとか。
やりきれない話だ。
そもそもスライムというだけあって弱い。魔術ではなく普通の魔法でも威力が高ければ倒せる相手。一般人が棒で殴っても倒せるぐらいの強さ。
だが、たまに大量発生して――そのサイクルや原理は未だ解明されていないという――街に押し寄せてくるのでこうして討伐依頼が出るのだ。少しでもその数を減らそうと。
「あ~もう、飽きた! めんどくさくなった!」
言いながらもシノブはコツコツとスライムを殴り続ける。蹴り飛ばす。
ついでに言うと、シノブの顔は毒に侵されているので真っ青だ。
「な、なんだ。スライム達がフォーメーションを組みだしたぞ!
まさか、合体?」
「いや、スライムは合体しないからっ!」
スライム退治はその後俺達のメイン任務となったのだった。
(何故? ギルドに行くと真っ先に勧められる。
どうしてかというと、常に見張られているわけでもなく、きちっとしたノルマがあるわけでもなく適当にこなす冒険者が多くて、俺達みたいに全力で立ち向かうパーティって希少らしくて評判になったとかならなかったとか)
おしまい。




