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台風の日

作者: ゆずりは

久々に味わった台風。

その時の出来事を高校生として、ただただ書いているだけですが、お付き合いくださると幸いです。


三連休明けの学校。

連休中はうるさいのが嫌でテレビを見ていなかったから、台風が近づいてきているなんて知らなかった。


……いくらうるさいのが嫌でも、ちゃんとニュースは見ないといけないんだけど。

新聞もなんかあの活字が苦手で読まないし。


まぁ、とにかくこの分だと明後日ごろには直撃かな?

なかなか手ごたえの薄かった期末試験の返却が今日明日で明後日からは通常授業だから、丁度いい。






返ってくる試験。

重なる溜息。

運動会の踊りの練習。

いつもと同じ、何事もなく終わる一日。






翌日目を覚ますと空模様が怪しかった。


台風が早まったのだろうか。

家を出る時間、五時四十分まではあと少しある。


テレビをつけてニュースを見てみると、どうも今日の午後には直撃しそうだ。

学校から休校の連絡がないものかとそわそわ携帯を手にとるものの、その小さく白い電子機器は沈黙したまま、一向に鳴る気配はない。


……どうせ午後には台風来るの分かってるんだから、潔くなくしちゃえばいいのに。


自宅待機をするのもいいかとは思ったものの、試験返却を休むのはなんとなく嫌だった。

弁当を作るのも面倒で、適当にテーブルの上にあった菓子パンを鞄につめる。


行ってきます。


まだ誰も起きてなくて静かな家に、ぼそりと呟いて、家を出る。


湿った空気。

どんよりとした空。

重たい鞄。


電車を乗り換えて、乗り換えて、三本目に乗ったところで友達と合流する。


こんな日の話題テーマは一つ。『学校が休みにならない件について』だ。

どうやら近くにある女子校は休みらしい。

これはいつも通り。

相変わらず、無理をしてでも私達の学校は授業がしたいらしい。

これもいつも通り。

大雨暴風洪水波浪、この四拍子が揃っても休校にしないのが、我らが学校だ。

結局結論は。

『本当に、何で学校が休みにならないのか謎』

『帰り際に台風が直撃して"今帰ると逆に危険なので、このまま授業を最後までします"というのがどうせオチ』


通学路の長い階段の途中で、鞄の中に体操服が入っていないことに気付く。

……踊りの練習、休むと面倒なのに。見学とか暇だし。しかも体育委員なのに……まずいなぁ。

仕方がないから友達にトレーナーだけ借りて誤魔化す作戦でなんとかしのごう。

学校が午前授業とかになってくれたら、練習もなくなってラッキーだけど。


学校の最寄から、学校まで。

ほとんど降っていないに等しい弱さで降っていた雨が、私達が学校に着いた途端にどしゃぶりになった。

これもいつも通り。


早く行って何をするでもないけれど。

それでも七時半に開門する学校に、七時二十分頃に私たちは着く。

そしてこんな日には私達は、遅く来る級友をねぎらうのだ。


雨、どしゃぶりだったでしょ。うわ、靴下とかもうびしょびしょじゃん。え? あぁ、私達が来たときにはまだ全然降ってなかったから。ははは、いいだろ~。


謎の優越感。

でも楽しいから、それでいい。


そして朝のSHR。

担任が信じられないことを言う。


――全授業を二十分授業にして、台風が来る前に午前中で帰ることになりました――


一瞬沈黙してから、弾けるように湧く教室。

隣に座っていた親友と目を合わせて笑いあってから、ハイタッチをした。

よっしゃっ。


帰る時、雨は降っていなかった。

相変わらずの重い鞄。

お昼を食べるまもなく学校から追い出されたが、家に着く時間はとっくに昼時を過ぎている。

鞄の中でがさがさと音を立てる菓子パンの袋が恨めしかった。






無事帰宅して、あっという間に菓子パンをお腹に収めてからパソコンを確認すると、塾も休講の知らせ。

……もともと行くつもり、なかったけど。


机に向かって何時間か勉強をしたら、眠くなってきた。

まだ三時ぐらいなのに外が異様に暗いせいもあるかもしれない。

我慢してこれ以上勉強しても、ものすごく効率が悪いだろう。

よし、寝よう。






がたがたがたッ


ものすごい音で目が覚めた。

時計を見るとどうも二時間ほど寝たらしいが、相変わらずの暗さ。

カーテンを開けて外を見ると、そこに広がるのは、台風の光景。


屋根にあたっては弾けるどしゃぶりの雨。

激しく上下に揺れる電線。

近所の家の自転車にかけられたカバーが吹き飛ばされて、隣の家の車に引っかかる。


長らく、見ていなかった光景だった。


鳥……?

小さな黒い影が視界の隅を横切る。

こんなに雨風がひどいのに、果たして鳥が空を飛べるのか。

否。無理だろう。

では、あれは一体……。

考えていると再び同じような影が目の前の家の屋根の後ろから飛び出てきた。

あぁ、なるほど。

あれは、葉っぱだ。

しかし、あんなにたくさん葉っぱが撒き散らされているのなんて、初めて見た。

すごい……。






がたがたがたがたッ


再び横になった私の耳に届く、絶え間なく揺さぶられる窓の音。

家全体が時々揺れる。

これが、台風。

久々に味わった。






幸い、私の近辺では大きな被害を残す事もなく、台風は通り過ぎた。

テレビをつける。

亡くなった方、行方不明の方……。

さっきの吹き飛ばされていた葉っぱを思い出し、ぞっとする。


誰が悪いわけでもないけれど。

胸の中に湧き上がってくる気持ちを上手くコントロール出来なくて。

壁に拳を受け止めてもらった。






静かな朝。

テレビはつけない。

台風の後は晴天、これは決まっていることだから。

弁当を作って鞄に入れて、相変わらず誰も起きていない家にそっと呟く。


行ってきます。




じめっとした空気。

濃厚でむっとする葉っぱの匂い。

ハンドルから水の滴る自転車。


自転車を漕いでいると、早起きのおばさん達が家の前に散った数々の葉っぱを掃いて、掃除をしていた。

下を見ると、道路には無残に散った葉っぱが溢れていて。

大きな傷跡のように見えるけれど。

上を向けば、綺麗な青空が広がっていたから。

今日も、学校に、行こう。


上手くまとまったか、少し心配ではありますが。

本当にあったことを書いているだけですね笑

最後まで読んでくださり、ありがとうございました。


感想・批評等、是非お願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[一言] 台風…今年は大きな台風がもう2つも日本を通り過ぎて行きました。その度に僕もアキさんと同じようにいろんなことを考えてしまいます。 でも考えてるだけでは何も進まない。 僕はそう思って自分自身に…
[一言] とんでもない大事件が起きるわけでもなく、「日常の1コマ」を描写するっていうのは逆に難しいと僕は思っているのですが、この話は綺麗にまとまっていていいなあと思いました。
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