第6話:深夜二時半、闇の中に見た「神々しい光」
地獄の旦過寮を抜け、配属されたのは「小庫院」という台所。
不眠不休で働く私の前に、ある日、暗闇を切り裂く「神々しい光」が現れました。
前回は、トイレで泣き崩れた情けないお話でしたが、今回は一転。修行生活の中で見つけた「希望の光」についてお話しします。
上山して三ヶ月。私は「小庫院」という、参拝者の方々の精進料理を作る部署に配属されていました。多い日は一日に四百人分の料理をわずか数人でこなす、お山でも一、二を争う過酷な現場です。
朝は午前二時半に起床してお米を炊き、夜は二十一時半まで皿を洗う。まさに不眠不休のような毎日でした。
そんなある日の早朝のことです。
まだお山全体が深い眠りについている午前二時半、私は一人、炊飯のために厨房へ向かいました。ふと小庫院の勝手口に目をやると、なんと!そこから先は食材搬入のために、門前の町並みへと直接繋がっていたのです!!
外は、吸い込まれるような真っ暗闇。
しかし、その暗闇の先に、私は「見て」しまったのです。遠くでボーッと赤く、そして青く光る……あの「自動販売機」を。
「あそこに……あそこに行けば、コーラがある」
かつて同期が叫んで連帯責任を食らった、あの禁断の飲み物。
月給三千円の私にとって、自販機のボタン一つはとてつもない贅沢です。しかしそれ以上に、その光は「修行僧」という身分を一時だけ脱ぎ捨て、俗世の空気を味わえる唯一の扉に見えたのです。
静まり返った境内。もし見つかれば、即座に厳しいお叱りが飛ぶのは目に見えています。
それでも、二十四時間休まずにそこで待ってくれている自販機の灯火は、当時の私にはどんな仏様の後光よりも神々しく見えました。
果たして、二十九歳の修行僧は、暗闇を突き進んで「赤いボタン」を押したのか。
そのスリル満点の結末は……また明日にお話ししますね。
合掌
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
修行中の身でありながら、自販機の灯りに心を奪われる……当時の自分がいかに極限状態だったかが分かります。でも、あの光は本当に綺麗だったんです。
明日は、自販機へと続く暗闇の潜入作戦。その結末と、そこで味わった「一生忘れられない〇〇」についてお話しします。




