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5話 道は続いていく

これが最終話となります!

カフェの灯りを落としたあと、二人は階段を上がり、二階のリビングに腰を落ち着けた。

通りに面した大きな窓の外には石畳の道が伸び、街灯がぼんやりと夜の霧を照らしている。

下の階の喧騒はすでに消え、代わりに漂うのは煮込みの香りだけだった。


テーブルの真ん中には、真っ赤なソースをたたえた大鍋が置かれている。

今日は少し豪華に、ウサギ肉のトマト煮込みだ。

ハーブの香りが立ち上り、ローズマリーとローリエが甘酸っぱいトマトの中に溶け込んでいる。

クラリスが丁寧に盛り付けた皿からは、骨ごと煮込まれた肉がほろりと崩れ、パンを浸せば肉汁と酸味が一度に広がる。


「いただきまーす!」

セレスは待ちきれないとばかりに大ぶりのパンをちぎり、ソースを豪快にすくって頬張った。

「ん~~っ! 最高! 骨から味がしみ出してる!」


「少しは落ち着いて食べなさい」

クラリスは苦笑しつつ、赤ワインのグラスを軽く揺らす。


もりもりと食べ進めるセレスの姿に、クラリスは思わず首を傾げる。

「……その細い体のどこに入っているのかしら」


「え? おかわりしていい?」

悪びれもなく皿を差し出すセレスに、クラリスはため息をつきながらも鍋から肉を取り分けてやった。


しばらく二人で黙々と食事を楽しんだあと、セレスが口を拭いながら言った。

「今回のは、あんまり手がかりもなかったね~」


「そうね。最近は落ち着いていたけど……やっぱり、直接あいつが関わってるものなんて滅多にないわね。それに関わっていたらこんな騒ぎじゃ収まらないから出てきてないってのはいいことではあるけど。」

クラリスはワインを口に含みながら答える。


セレスはパンをかじりつつ続けた。

「犯人が買ってたのはあやしい男からだったらしいけど……ほとんどガラクタだったところを見ると、そいつも大したやつじゃなさそうだもんな~」


「たしかに」


クラリスが頷くと、セレスはぱっと笑顔になった。

「でも、ユリウスさんもいい人そうでよかったよ」


クラリスは少し視線を落とし、悩める彼の顔を思い出す。

「ふふっ……これから楽しくやっていけそうね。団長さんはあっという間に出世しちゃったもんね」


セレスはフォークをくるくる回し、にやりと笑った。

「そうだね。あいつは全然しっぽをつかませてくれないけど……じわじわ追い詰めてやるんだから!」


クラリスは落ち着いた声で応じる。

「大丈夫よ。すでに私たちはあいつと“ふか~い因縁”ができてしまっているんだから。あとはその糸を引き寄せるだけ……慎重にね」


「だね」

セレスは真剣な眼差しを返す。




――彼女たちは、世にも珍しい魔女と人魚の末裔のタッグだった。

薄暗い路地の向こう、まだ見ぬ闇がいくら待ち構えていようと、二人は笑いながら進んでいくだろう。

そして、その背後には必ず、知らず知らず巻き込まれていくユリウスの姿もある。


この先に待つのが絶望か希望かは分からない。

けれど確かなのは――

彼女たちなら、どんな闇さえも楽しげに切り裂いていくに違いない、ということだった。



最後までお付き合いいただきありがとうございました。

お楽しみいただけたでしょうか。

趣味全開となりましたが、次回作も趣味全開のものとなっております。

是非またおこしいただければ幸いです!

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