【第一部】明けない夜など存在しない
闇の向こうに、必ず光はある。
口下手。低い声。血管が浮き出た腕に、大きな手のひら。
人差し指で眼鏡を持ち上げ、目の端で見る癖も相まって。周りは俺を「クール」だと、「淡々としている」と評価する。
だが俺は、ある難問を腹に抱えている。
昨日も今日も、そして明日も変わらない。
ずっとこうだ、きっと永遠にそうだ。
解けない。解けない。解けない……。
俺は偏見が嫌いだ。
固執を押し付け、変化を拒み、問答無用で却下する。
だから俺は、偏見が嫌いなのだ。
そんな俺が解けないのだ。なんという難問なのだろうか————
月の光に照らされる、長いまつげと白い肌。
ベッドの隣で、俺はその愛しい寝顔を見つめた。
さらさらとした黒髪に手を伸ばし、撫でたい衝動を抑えながら。
柔らかそうな唇と、漂う甘い匂いに、理性が吹き飛びそうになる。
——ダメだ。解けない。解いてはならない。
俺は強引に目を閉じた。
胸の奥で必死に叫んだ。
あなたは一人ではない。
闇夜にその身を引きずり込まれないでくれ。
自分はダメだと、なぜこうなんだと、卑下して涙をこぼさないでよ。
朝日が昇るまで、耐えて、耐えて。
小さな光を探して、探して。
がむしゃらなその姿を誰かが嘲笑しても、放っておけばいい。必ず俺が、褒めるから。
明けない夜など存在しない。
月も、太陽も、美しい。
闇と光は、共鳴する。
明るさと暗さは、紙一重だ。
だから、どうか笑って。俺と共に。