8.たぬき型原住民~本当に口?尻ではなく口?~
十一機の宇宙船が、町の開けた場所に並んでいる。〈銀河帝国・加魔苦羅〉へ乗り込むメンバーは既に全員乗り込んだので、もう出発だ。
十.九、八、七、六、五、四、三、二、一、零。
ゴォォォォォ・・。
全ての機体が浮上し、急加速して空に消える。見る見る内にオナラ王国の王宮が見えなくなっていく。ついには大気圏を脱出し、宇宙に出てきた。
「全ての機体が異常なし。目的地までの距離は、およそらっきょう十五億個分です。」
らっきょうで表す必要はないと思う。
ロケットの中は意外と快適だった。無重力状態でおならをすると、どうなるのだろうか?おならを排出する方法がないのでやめておく。長い時間、僕のおならを嗅いでいるといくら選抜メンバーでも失神するからね。
お腹が減ったのでカレーを食べる。次のご飯は、中継地点の星で調達する予定だ。暇だな。ツイッターでも見るか。Xとかいう新しい名前があるけど、ダサすぎると思う。
結構長い間ツイッターを見ていたみたいだ。ロケットの前方に素晴らしい緑の星が見えてきた。
「Excelのテーマカラーみたいな色ですね。」
エクセルで表す必要はないと思う。
着陸。素晴らしい緑。空気が美味しい。何故酸素があるかって?無かったら僕たちが死んで物語が終わっちゃうからだね。物語の都合って素晴らしい!
そんなことを考えていたら、現在地の草原の近くの森林から、たぬきが出てきた。石器のような武器を持っていが、攻撃はしてこない。警戒されているだけで、友好的な生き物のようである。まずはコミュニケーションをとろう。ライプニッツは既に話しかけている。
「こんに――」
「オマエノ イキ クッセーナ」
「へ?」
ライプニッツだけではなく、僕も挨拶してみよう。
「おはよう!」
「オマエノ イキ クッセーナ」
こいつ何を言っているんだ?僕が臭いのは口の息ではなく尻だぞ?
「王子、落ち着いてください、これからこの者たちの説明を・・・」
ズンズンズン。
たぬき型原住民のところへ鬼の形相で近づいていくものがいる。僕のおならに完璧に順応した唯一無二のものであり、兵士の序列二位のライプニッツだ。
「キミ、〇にたい? いや、別に言っていいんだよ?でもね、同じことを言った回数によって刑の重さが変わるから。ナイフで刺〇、スタンガンで電〇、ボクの新作、『のこぎり兵器・虐〇君』とかね」
たぬき型原住民が地獄の淵に来たような顔になる。そりゃそうだ。あんなおとなしそうな、女性のような美形の少年だったのに。恐ろしく物騒な発言を連発している。めっちゃホラー。たぬき型原住民も、焦ったように謝罪している。
「オマエノイキクッセーナ!」
「オマエノイキクッセーナ!」
え?こいつら、謝罪してないじゃん!
「そうかい。一酸化炭素をパンパンに詰めた部屋で中毒死がいいんだね?着いてきて。オナラ王国に帰ったらすぐ準備してあげるよ」
ライプニッツはかなり怒っているようだ。怒る気持ちは分かるが、そこまでしなくてもいいと思う。
「大丈夫だよ、ライプニッツ。こいつらから悪意は感じない。正直に思ったことを述べているだけだよ」
「つまり、本当にボクの息が臭いってことじゃないですか!」
あれ?逆効果だったかもしれない。
「王子!ライプニッツ殿!聞いてください!彼らは『オマエノイキクッセーナ』の一連の発音しかできないのです!」
曰く、この星の原住民は声帯機関の特徴で、ある一連の発音しかできないとのこと。では、どうやって一通りしかない発音で意思疎通をしているのか?簡単だ。こいつらのもう一つの特徴として、意思を込めて発音すれば、どんな発音でも意志が通じるらしい。
この話、宇宙人(オナラ王国や加魔苦羅)と地球人が普通に、会話してるけど、一応言語の概念はあったんだね!
「なるほどね。教えてくれたお礼で、らっきょうマン一号君はボクに『殿』をつけなくていいよ!
「いえ、ですが・・・」
「大丈夫だよ!正式な立場はボクの方が上だけど、なんからっきょうマン一号君やさしいから!」
うんうん。仲良しっていいね。らっきょうマン、仲良くしてあげなよ。僕は別にいいかな。怒らせたらめっちゃ怖いし。
しばらくすると、ライプニッツにすっかりビビってしまった、たぬき型原住民の皆様が晩御飯を用意してくれた。しかも、宿付きで。では、ありがたく利用させてもらいましょう。
ライプニッツは、「化学兵器マニア」です。これからも素晴らしい科学の力を見せてくれるでしょう。