7.オナラ王国~カレーライス~
アパートから歩いて行ける駐車場に宇宙船が止まっていた。車ではないので駐車違反ではない。わかったかい?読者のみんな、僕たちは犯罪者じゃないんだからね⁉
らっきょうの形をした宇宙船に乗り込むと、らっきょうマンがコンピュータに向かって叫んだ。
「大至急、オナラ王国へ!」
『了解しました。到着までの時間は十時間です』
ゴォオオオ・・・
ロケットが出発する。噴射の影響で駐車場が吹き飛んでいるが知ったこっちゃない。今は緊急事態なので、車の持ち主には我慢してもらおう。
さて、この後の予定だが、まずオナラ王国へ向かう。そこで一泊して体力を回復させ、オナラ王国の精鋭百名とともに〈銀河帝国・加魔苦羅〉星に出発する。一日では到着しないので、たぬき型の原住民が暮らしている星、〈ぽんぽこ星〉を経由する予定だ。
さて、僕は今からやることがある。らっきょうマン一号と一緒にカレーのレシピを作るのだ。記憶を失くしていた僕たちを、ここまで育ててくれた大家さん直伝カレー。その作り方を、オナラ王国の王宮料理人にわかりやすく伝えるのである。
***
オナラ王国の星が見える。美しい星だ。しかし、大気圏を抜けてみると分かるが、中世ヨーロッパ風の街並みはかなり壊されており、城下町にたくさんの仮設テントができている。王宮は何とか守りきった様子だ。
お城の門の前にらっきょう型宇宙船が着陸した。
「「「カッシーナ王子の、帰還です!」」」
兵士の中でも一番階級の高そうな者が叫び、その場にいる全員が平伏する。一般人も僕を、絶望に差し込まれた光であるかのように見ている。安心してほしい。明日には必ず加魔苦羅へ乗り込むからね。
城下町の仮設テント集落では、「カッシーナ王子帰ってきたよ祭り」が催された。僕とらっきょうマンの伝えたカレーライスはとても好評だ。
僕も食べてみたが、美味い。ここまで完璧に味付けを再現するとは、流石、王宮料理人である。
続いて加魔苦羅に乗り込む精鋭百名の選抜だ。百名しかいないのは、単純に指揮系統をわかりやすくするためである。今回行くのは、指揮官として僕、補佐としてらっきょうマン、そして、兵士長を含む精鋭百名だ。
なぜ選抜を行うのか。単純に王宮に登録されている強さの序列で、上位の一~百名を連れて行けばいいのでは?と思った読者の諸君、それも正しい。しかしだね、兵士長は連れていくにしても、他の九十九名を肉体の強さで選んでしまったら、僕の必殺技ですらない、ただのおならで失神する者が出るだろう。
そこで、臭いに耐性のある兵士を選抜するというわけだ。少なくとも、〈激臭領域〉には耐えてもらわないとね。
ということで僕の展開した〈激臭領域〉に、兵士が一人ずつ入ってもらって、選抜を開始した。一番多く意識を保っていられた人たちが選抜メンバーだ。そして驚くべきことに、兵士の序列二位、ライプニッツという人が、僕の〈激臭領域〉に順応してみせたのである。らっきょうマンと並ぶ、おなら耐性。これなら本調子の僕と一緒に戦えるのではなかろうか。
こうして、僕はカレーを食べる傍らおならを出して、同時に〈激臭領域〉を展開、そして王国の技術者にある提案をしていた。
それは、「僕のおならを完全遮断する鼻栓」である。しかし、残念ながら技術者には「今の科学技術では実現に千年以上かかる」と言われてしまった。兵士全員が僕と共闘できるようになるのは、無理のようである
え?何故おなら王国に到着したのに王様が出てこないかって?登場させ忘れただけさ!ハハッ★