13.ぱおんぱおんおじさん~素顔を見ないで~
「ギャハハハハハ!死ねー!」
ライプニッツがぱおんぱおんおじさんに向かってチェーンソーを振り下ろす。しかし、それは両手で受け止められてしまった。しかし、逆に言えば両手をふさぐことに成功したのである。
「「胴がら空き!」」
義経と頼朝が切り付ける。そういえばさ、「義経と頼朝」って呼ぶのは長くて面倒くさいから、「ヨシとヨリ」って呼ぶことにしよう。それがいい。仲良し感も出るしね。
「オラオラー!カッシーナ、ボーっとしてないでさっさと殺っちまいなさい!」
ラッシーナがヤバいことを言っている。物騒だな。すごく物騒だ。らっきょうマンもドン引きしている。
「その通りよ!あんたたち!全力で殺るのよ!」
政子・・、お前もか。
女性陣にせかされたので、僕も頑張ることにしよう。それまずは、フィールド作りから。〈激臭領域〉!ぱおんぱおんおじさんの長い鼻が激臭を吸い込む。すさまじく臭い。それに臭いが強すぎるので、脳が「臭い」を感じるための処理に時間をかけている。
「ぱお〜ん! これが〈不清潔の象徴〉、カッシーナの実力ぱお~ん⁉臭すぎるぱお~ん!」
〈不清潔の象徴〉って何?僕は宇宙人の間でそんな風に呼ばれていたの?やめてくれ!
「カッシーナ、行け。奴を完膚なきまでに叩き潰すのよ。これ以上用ボケっとしするのは許さないわ。」
あら、僕がエアコンを壊したことで、ラッシーナさんはご乱心の様子。さて、怒りが増大しないうちに倒しましょう。〈おなら砲〉!
「臭い、臭いぱお~ん!被り物越しでも伝わるこの悪臭。こいつは本当に人間なのかぱお~ん⁉」
ぱおんぱおんおじさんが隙を見せた。その瞬間、義経あらためヨシが、上から切り付ける。
「ヨシが上から切り付ける攻撃!名付けて『上ヨシー』だ!」
頼朝が実況と解説をしている。ヨシっていう呼び方、まだ本人にも言ってないのに何故広まったのだろうか?ていうか、謎に伸ばし棒が付け足されている。
「義経の攻撃が激しくなる!数々の攻撃!右ヨシー!左ヨシー!上ヨシィイイイイ!」
頼朝の声がでかくなる。君、実況の才能あるよ。〇ーチューブやってみたら?
斬撃をくらったぱおんぱおんおじさんが、盛大に吹き飛ぶ。さあ、その被り物をはずしてもらおうか!
〈おなら砲〉で被り物を打つと、尻からでた閃光の奥で、被り物の影が消滅するのが見えた。
「はずかしい!見ないで!素顔見ないでぇえ!あ、『ぱお~ん』ってつけ忘れたぱお~ん!」
象の被り物が外れた途端、ぱおんぱおんおじさんが猛烈に恥ずかしがりはじめた。素顔を見られるより、半裸で象の被り物を被って町中で戦闘する方が余程恥ずかしいと思うのだが。
――ッ!
上を見上げると。いつの間にか戦線離脱していたUFOが、上空に出現していた。怪しい光線を出して、ぱおんぱおんおじさんを照らす。ぱおんぱおんおじさんは顔を隠し、同時に足をジタバタさせながら、UFOに吸い込まれていく。あれは、ぱおんぱおんおじさんの意思で逃げているのではない。もっと上の存在が、失いたくない駒を回収するような――。
ぱおんぱおんおじさんは去っていった。ていうか、まず、倒しきれなかったことに驚きだ。この七人で攻撃したのにな。お喋りをするくらい油断していたから、被り物の破壊という弱点をつき、一応撤退させられた。しかし、最後までぱおんぱおんおじさんには余裕が残っていた気がする。
あの変態級の実力者が三人いる。さらに、今ぱおんぱおんおじさんを強制撤退させた、上位者までいるときた。地球を守る戦いは難しいものになりそうだ。
それにしても、今回の戦いは疲れた。エアコン壊しちゃったし、僕だけもう一度デパートからエアコンを運ばねばならない。なんで配達にさせてくれないの⁉
フハハハハ!見ろ!足が棒のようだ!
不清潔の象徴と書いて、アンクリーンシンボル。
安直すぎないか?