11.終戦~MVPはうんこ~
ズバン!
カッシーナが〈黄金の棒〉を一振りした方向で、とてつもない大きさの斬撃が発生する。部屋の外の宇宙が見える。これは〈黄金の棒〉の余波が引き起こす現象であり、本来の威力ではない。義経と頼朝も、戦う前からそれを察したようだ。
「政子さま!お逃げください・・・!」
「何?」
「この威力、加魔苦羅の全戦力を使っても勝てません。政子様、どうかお逃げください!」
「フッ。義経と頼朝よ、政子は既に捕まえている!王子、ほめて下さい!」
政子の代わりにらっきょうマンが義経と頼朝に返事をした。見ると、政子が何かに覆われ、身動きが取れなくなっている。それは大量のらっきょうだった。らっきょうマン、めっちゃナイス。
「まさか大便にここまでの使い道があったとは・・!カッシーナよ、貴様を認める。変態、そして強者だとな。しかし、我らも負けられないのだ。全ては加魔苦羅のため!」
二人して斬りかかってくるが、問題ない。数回刀を打ち合っただけで、相手の刀は折れてしまうからね。
「クソッ!『HOUKOU』全体招集!掛かれ!」
無駄である。黄金の棒がまとっている不潔さ、臭いの前では、全てが『清潔』に分類されるだろう。例え、それが生ごみや排水であっても。
「鏡よ鏡。この世で一番汚い物はな~に?」
「王子、私の手鏡が言っております。『それはあなた様のおならとうんちです』と」
「フッ、いい鏡を持ったね。らっきょうマン君。その鏡は正直者だ」
そんな余裕たっぷりの会話ができるほど、〈黄金の棒〉は強い。会話中、適当に振っているだけで、どんどん敵が消えていく。いつのまにか宇宙で戦っているが、もう決着はついたも同然だ。
最後の一体を破壊した。義経と頼朝、政子が連行されてくる。オナラ王国に帰還したら。処罰について話し合いが行われるだろう。〈黄金の棒〉、大活躍だったな。
***
オナラ王国にて。
「これこれこういうことで、こいつらには処罰が下るべきです」
「いやいや、かくかくしかじかな感じで、もうちょっと軽くてもいんじゃない?」
大臣たちが、政子たちの処分についてもめている。
「死刑♬死刑♪拷問だー!」
ライプニッツが何やら喜んでいるようだ。
しかし、政子たちから話を聞いた後では、僕たちにも悪いところはある気がする。加魔苦羅を攻め滅ぼした、銀河に点在する国々の連合の中に、オナラ王国も入っていたのだから。自分たちで攻め滅ぼした国を、記録に残さず忘れ去るとは、なかなかに酷いことである。
「ということで、僕、カッシーナは政子たちの処分はそこまで重くなくていいと思う!」
政子一行は意外な顔をしている。まるで、「おならを連発し、うんこを振り回して自分たちを倒したというのに。あのふざけた変態は何を言っているんだ?」とでも言いそうだ。
「なあ義経、頼朝。あいつはおならを連発し、うんこを振り回して我らを滅ぼしたのだよな?」
「「その通りです。あのふざけた変態は何を言っているのでしょう」」
本当に言いやがった。
「それと、こいつらの処分についていい案がある。僕の配下にするのはどうだろう?僕の地球での生活費を一緒に稼いでくれるだけで大助かりなんだけど」
本当は僕たちの配下にする気などない。しかし、こうでもしないと政子一行を地球に連れて行くことに大臣達が納得しないからね。こうすることで、地球へ逃がし、僕と一緒に地球ライフを満喫してもらうつもりだ。あそこは娯楽がたくさんあって、たくさん楽しめる。おすすめを紹介することで、少しでも償えたらいいな。
「たしかに、働かせるというのはいい案かもしれませんね。我らが王子のためになるならなおさらだ」
「流石我が息子。いい案である」
兵士長に加えて今まで描写されなかった王様も、いつのまにか初登場を果たし、僕の意見を肯定ている。そして、らっきょうマンが何か言いたげだ。
「あの・・王子?王子が地球に行ったら、オナラ王国の王は誰が引き継ぐのです?」
「ああ、それね。いつか決めるよ。いつか!」
「親などの上位者が言う『いつか』は永遠に来ないのです!」
「いいではないか、らっきょうマン。我が息子よ、地球で見分をひろめ、いつか素晴らしい王になるのだぞ。ライプニッツも地球に着いていきたいと行っておる」
「うん!ボクも地球での『科学』で新しいアイデアを得たいんだ!それに、〈銀河帝国・加魔苦羅〉の科学を唯一知っている三人も、王子と一緒に地球に行っちゃうんでしょ?その三人からも話を聞きたいな!」
「それならこの私、らっきょうマン一号もお供しますぞ!王子!」
こうして、僕は地球に戻り、僕とラッシーナの二人から七人に増えた大所帯で暮らすことになったのである。
うんこで切り倒された「HOUKOU」達はどんな気持ちだったのだろうか?