第2話
大阪発富山行き特急「サンダーバード15号」。
ミナミツバサは大阪駅から、サンダーバード15号に乗車した。
今日、2011年5月3日の切符を持ち、大阪から、富山までの全区間を乗車する。
目的は無い。
彼は鉄道マニアで、特に北陸本線を走る特急「サンダーバード」や「しらさぎ」、「雷鳥」と言った列車が好きだった。
その中で飛び切りなのが、今乗っている「サンダーバード」だ。
「サンダーバード」は、1995年、それまでの特急「雷鳥」「スーパー雷鳥」をグレードアップさせるために登場した特急列車である。
当初、「スーパー雷鳥サンダーバード」を名乗っていたが、あまりにも名称が長いため、1997年「サンダーバード」に改称された。
登場時から、681系特急車両を使用し、2001年に681系を改造した683系を投入。そして、「スーパー雷鳥」を廃止に追いやり、そして、「雷鳥」までも、廃止に追いやった。
ミナミが、なぜ「サンダーバード」にこるのか。それは、彼の誕生日がこの「サンダーバード」と同じ日。1995年4月20日だからである。
地元の家が線路に沿ったところにあることから、彼は鉄道マニアになって、そして「サンダーバード」の存在を知り、同じ誕生日に生まれた列車ということで「サンダーバード」にこだわっていた。
そして、年始の年玉や、小遣いの余りや、泡銭を貯めてこの「サンダーバード」に会いに出かけるのだ。
関西の大阪を出た「サンダーバード」は、新大阪、京都、福井、芦原温泉、加賀温泉、金沢、高岡、富山に停車する。
ミナミは、地元から東海道新幹線で、新大阪までやってきて、新大阪から大阪駅に行き、大阪から、「サンダーバード」に乗る。
大阪駅で、列車に乗り込むと、自由席に座る。
6号車の窓際に座り、発車を待つ。
ベルが流れる。
ドアが閉まった。
「サンダーバード15号」は、大阪を発車した。
車掌が車内検札をする。
(今日は、若い女性車掌だ。)
と、車掌を見て思った。
「ご乗車ありがとうございます。乗車券、特急券を拝見させていただきます。」
と、車掌が言う。
ミナミは、ポケットから、乗車券と特急券を引っ張り出して、車掌に差し出した。
車掌は、切符を確認すると、ミナミの元を去った。
「サンダーバード」は、新大阪を発車し、高速で走り出した。
京都に停車。
京都からは、湖西線を走る。
琵琶湖に沿って駆け抜けるのだ。
琵琶湖を右手に見ながら、列車は走る。
琵琶湖を抜け、敦賀を通過。
今度は左側に日本海を臨む。
12時30分、列車は福井に停車。
2分停車である。
ミナミは、2分の間に、ホームに下り、列車の写真を撮影した。
福井を発車した。
ミナミは車内販売の駅弁で、昼食を取る。
食べ終わったとき、列車は加賀温泉に停車した。
この次は、金沢に止まる。
金沢では5分停車する。
列車は、金沢に停車した。
ミナミは、ホームに下り写真を撮る。
列車は金沢を発車。定刻通りで、終点の富山を目指す。
高岡を発車すると、右に立山連峰が見えてくる。
ミナミは立山連峰に見とれた。
こうしているうちに「サンダーバード15号」は富山についた。
本当は、「サンダーバード」で大阪に折り返したいところだが、ミナミは来た道を戻るということは、あまり好きではない。それに、地図を見ると、富山から、大阪経由で帰ろうが、このまま北陸本線を乗り継いで、直江津方面に出ようが、ほとんど時間は変わらないのだ。
それに、富山には「サンダーバード」の他、「しらさぎ」「はくたか」と言った特急列車も来るのだが、これらにも681系や683系も使用されている。更に「はくたか」は681系や683系が時速160キロで驀進する列車でもあり、「サンダーバード」で使用されるこの車両の最高速を味わえるのだ。
ミナミは、14時50分発の特急「はくたか17号」が来るまで、富山の町を走る路面電車を見たり、駅で両親に買う土産物を買ったりした。
富山駅北口で、停車中の列車を見ていた時、
「あの―。」
と背後から声をかけられた。
ミナミは何気なく振り向く。するとそこには、女の子がいた。
身長はミナミより5センチほど高く、ショートとロングの中間ぐらいの髪型をした女の子だった。