第2話
学校から徒歩五分ほどのところにある公園に遅れて到着する。
「これで全員揃いましたね! では、時間内にまたこの時計があるところまで戻ってきてください。公園から外に出る場合は声を掛けてから行って下さい。それでは、行動開始!」
彼女は公園の中を奥に歩いて行き、海岸を一望できるベンチに腰掛ける。
彼女がスケッチ終えたころ、一人の女性がこちらへとやってきた。
「お隣、大丈夫ですか?」
彼女は静かに頷いた。
「ありがとう」
彼女はスケッチブックをしまい、借りた本を鞄から出すと、女性が話しかけてきた。
「その本……もしかして、あなたがヴァンに残り続けているという最後の一人なの?」
「はい。そうですが……?」
「私はエマニュエルの最後の一人、リオーレル。ずっとあなたを探していた。あなたがニーナでしょ? ニーナ=グラシア」
「なぜ、私の名前を?」
リオーレルは彼女の手を握ると、空瓶を渡してきた。
「空っぽの瓶。でも、これが向こうの世界の入り口なの」
「どういうことですか?」
「向こうの世界で、みんながあなたを待っている。ヴァンと同じように危機を迎えている。フィリカ=ヴァンの話を知っているでしょう? あれは本当に起きた事実なの。そして世界が隔てられた。私たちは人間の力を借りずにずっと海を守って来たけれど、あの洪水のときに何人も流されていった。もう限界なの。だから、あなたのその‘力’を借りるためにずっと探していた。一緒に来てほしいの」
ニーナはしばらく考え込んだ。そして目の前に広がる海岸を見て、彼女は一度頷いた。
「わかりました。ヴァンの海をもとに戻すという使命が私にはあります。困ったときはお互い様ですから。ただ、長い時間はいれませんが……。」
「それで良い」
空瓶を太陽に差し出し、リオーレルが何かを祈ると、目の前が突如真っ白な光に覆われた。