その⑫
「起きた!!ミリエルが起きたよ!!!」
ディザードが耳元で大声を張り上げキルドに向けて言い放つ。
だが・・・キルドは見向きもせず遠くでラズメスと睨み合っていた。
・・・・あ~・・・・・動揺させた後どうするのか聞くの忘れた・・・・
わたしは肝心な事をリッカルドに聞くことを忘れ、どうして良いものかと悩みそして溜息を一つつく。
・・・・・鍵って事は、わたしが何かしないといけないって事だろうけど、何をするのか具体的に分からない・・・・・
ラズメスはキルドの繰り出す重力にさらされ地面に叩き付けられる。
重力から何とか逃げ切り凄まじいスピードでラズメスは手から黒い力を無数に出現させキルドに向けて投げつける。
辺りには魔法陣があったはずだが既に瓦礫へと変わっていた。
砂埃が部屋中に充満する。
・・・・・二人共様子がおかしい・・・・
わたしはそう感じた直後、横になっていた、わたしはディザードに担がれ、気付いたらわたしの部屋に瞬間移動で戻ってきていた。
そしてベッドの上にゆっくり下ろされ、彼ディザードはわたしの血まみれの服をペラっと捲る。
「ちょっ!!??」
恥ずかしさのあまり逃げようとするが逃げれず彼は執拗にジロジロと無言で見て難しい顔をする。
「ミリエル・・・・君のその力は何なんだ?」
問われ・・・・どう説明して良いか悩んだ。
・・・・・全然考えていなかった。言い訳を・・・・正直に言って信じて貰えるのか分からないけど・・・・・
「わたしの夢の中の友人が助けてくれたのよ。」
「夢の中の友人・・・・?理解が出来ない・・・・でも生きてて良かった・・・・」
彼はわたしをギュッと抱きしめ・・
「もう死んでるんじゃないかと思った!!あれだけ大量に血が出て普通なら死んでるよ!!!」
彼は涙ながらそう強く強く話した。
わたしは子供でもあやすかの様に彼の背中をポンポンと叩き頭も撫でる。
「それよりキルド達の様子おかしかったけど・・・」
わたしは彼を抱き締めたままそう言うと・・・
「キルドは暴走してる。君の血を見て・・・・君の事をさっき知らせたけど全然反応しなかったのがまさにそれだよ。力が弱ってるとはいえキルドは普通の術者よりも力はあるはずだけど、でもこのまま使い続けていたら・・・・あっという間に力を使い果たしてしまうだろう・・・ラズメスの方は匂いの異変に気付きキルドが何かしたんじゃないかと怒り狂っている状態。」
・・・・ラズメスの感じる匂いってのは、恐らくリッカルドが白くなった事が原因なんだろうけど・・・・キルドの暴走?・・・・・
ずぅぅぅんっ!!
激しい音と共に屋敷か揺れる。
「いつものキルドなら部屋が壊れないように手加減をしながら戦ってたんだけど・・・・暴走状態じゃ、ここにいても危ない・・か・・・・
取りあえず屋敷の外に出よう。」
何が何やら状態を把握できないまま取りあえずディザードの指示に従うことにした。
外は雨が降っていた。わたし達は屋敷から少し離れた木の下で雨宿りをしながら屋敷を眺めていた。
遠くにはあの例の術者の死体が見える。
ぞくっ!
わたしは不気味過ぎてディザードの腕を強く握りしめる。
「こんな事は今まで無かったんだ・・・・僕は君は好きだけど・・・・こんな事になるのだったらここの森に入って来なければ良かったのにと思わずにはいられない。」
ズキっ!
彼の一言に心に棘が刺さる。
・・・・やっぱりわたしのせい・・・よね・・・・わたしが何とかしないといけないけど・・・どうやってやるのよ・・・
わたしは座り込み考えるも何も良い案は浮かんで来ない・・・
「力を使い果たした所ラズメスの攻撃を受けたらどうなるか・・・・」
ディザードはポツリと呟き、わたしは彼の言葉の先を理解した。
・・・・・永遠のなぶり殺し?・・・・
キルドは不死身なのだ。どれだけ攻撃を受けても死なない体・・・。
「闇族の本質は、悪だ。飽きるまで無抵抗な奴をいたぶる事に何の躊躇いもない。その後にゆっくりと封印を解除してやろう・・と通常なら考えるはず。
もっとも、ラズメスのあの様子だと慎重になっているに違いないけど・・・」
彼は難しい顔をする。
ずーんっ!!!
雨の音に混ざり地響きが聞こえて来る。建物の下でまだ戦っているのだろう。
地響きは次第に大きくなり、建物の直ぐ横の地面が崩れ落ち、そこにあった死体もついでに地に落ちて行った。
穴の底から勢いよく何か黒い物が飛び出してくる。
飛び出してきた物の正体はラズメスで、空中に浮きつつ、辺りを見渡す。
そして彼は明らかに気を失っているキルドをボロ雑巾でも扱う様に地面に叩きつける姿が見えた。
「長年やりやって来た相手だったが、冷静さを失うと・・・こんな物か・・・・くだらん!」
ラズメスはわたし達の方を見る。
「こいつの力が戻るまでまだもう少し時間はあるはずだ。その前に、お前に一つ聞きたいことがある。」
ラズメスはわたし達の方に向かってそう話すのでわたしはディザードの方を見る。
ディザードは『え゛っ!?僕?』的な驚いた表情をし首を傾げていた。
「違う!お前などもはやどうでも良い!半端者め!
俺が言ってるのはそこの人の子だ!」
「え゛?わたし??」
「そうだお前だ!」
ラズメスはわたしを睨みそう言った。
「お前は確かに助からない状態だった。なのに何故そこで生きている!?」
・・・・またこの質問、でもこれは絶対彼にだけは言ってはならない。言えばリッカルドとの計画が全て潰れてしまうからだ。
「気合と根性と友の力で無事に復活を遂げました!!!」
明らかに声のトーンと口調がおかしいが必死で言い訳を絞り出した。
顔には雨水以外にも自分の大量の汗が流れ出ていた。
「・・・まぁ良い。」
怪しんではいるがそれ以上の追求はしてこなかった。
「さて、そろそろやるか。封印されているのはダーク様だということは分かっているのだからな。」
ラズメスは地面に叩き付けられたまま身動きしないキルドを見て、何から呪文を呟き出す。
恐らく封印解除の呪文なのだろう。
・・・・そう言えば根本的な事リッカルドに聞いてなかったけど・・・・
「これで封印が解除されたらキルドはどうなるの?」
わたしの言葉にディザードは・・・
「普通に解除すれば間違いなく死ぬよ。ダークが外に出て来るわけだし不死身の力はもはやなく、恐らくその場で消滅するだろうね。」
わたしの背中に寒気が走る。
「ちょっと邪魔しに行って来るよ!さっきはキルドの敵味方見境なしの攻撃で何も出来なかったけど・・・・」
言ってディザードはその場から消え、宙に浮いているラズメスの背中に力強く蹴りを入れた。
吹っ飛ぶラズメス。
「邪魔すんじゃねぇよ!半端者!!!」
ラズメスは荒々しい言葉で叫び空中に無数の赤い力を出現させディザード目掛けて打ち放つ。
だが軽くそれを避け、赤い力は凄まじい音を立てて森の一部をふっ飛ばした。
爆風がわたしの元にまでやって来る。
わたしは風に飛ばされないように木にしがみつきながら近くの森沿いを走り、倒れているキルドの元に駆け寄った。




