三人の英雄ーその死後でも乱世ー
二人の最強は意味がありません。
そう後世の人が言いました。
最強の一人は“武力”。
どんな相手にも負けず。戦うたびに百戦百勝の猛将。
もう一人は“知力”。
どんな相手も頭脳戦では負けず。大局的に勝利をもたらす天才軍師。
この二人は同じ時代、同じ主君に仕え、天下をもたらした。
死後は丁重に弔われ主君の陵墓の左右に埋葬された。
生前はこのような感じだったが、死後の後世は……。
「ッ! だぁァァァッ! アッブネェッ!」
「ちッ! 今の避けられねぇだろ。なんだよあの動き」
「おいッ! また罠仕掛けやがってッ! やるんなら一騎打ちにしやがれ!」
「だってさ~。一騎打ちはあんたが勝つだろ。史上最強サンよ」
「ああッ!?」
今日も今日とて争いの予感しかしていません。
この二人、お互いの得意分野が苦手すぎていっつもケンカばかりの日々です。
死んでからは普通にしていたいのですが、これはこれでなかなかうるさいです。
「主君よ。とりあえずこの世界の天下を取りますか? あのバカほっといて」
「あ、いや~。天下はもういいでしょ」
「だーれがバカだって!?」
「お前だよ脳筋バカ! 体力バカ! 武術バーカ!」
「ウッセェェェェッッ!!!!」
「あーはいはい。大声バーカ」
毎日騒々しい。
死後はのんびりなもので、最初は一人で暮らしていたのですが。
気が付けばこの二人もいつの間にか来ていました。
どこに行くこともないのでとりあえず、ここに置いているのが現状です。
「我が主、この小うるさいやつを八つ裂きにする命令はどうぞ私めに!」
「い、いやぁ~。それはダメ」
「なぜですかッ!」
「当り前だバーカ」
「ちッ! あ、それはそうといつの間にか私が持っていたのですがこの手紙がありまして」
手紙? ここにきて以来手紙などは一通も来なかった。
手紙を受け取り、中を確認する。
そこに書かれていたものは、今いる世界の“激励文”だった。
「ここでも戦乱の世ということだね」
「ではッ!」
「まさに今が好機ですかな!」
「では、二人とも。もうひと働きしてもらいましょうか?」
「「主の命のままにッ!」」
この二人が手を組めば怖いものはない。
私が天下を取りえたのも彼らのお陰。
だから、二人の力は必要不可欠である。
「旗揚げを! 諸侯へ知らせよ! 天下の軍を!」
危急の時は今、そこに立ちあがる最強の二人に支えられた主。
後世の人は一番最強で大英雄なのはこの君主であるとしている。