よくウチに来る隣人 梨深・支那
前々から思っていましたが、あまりヤンデレ感がないです。希薄です。頑張りますね。
今回も下ネタ注意です。苦手な方はお気をつけて下さいね。
最近、かなりの高確率で下ネタが出てきている気がします。まぁ、今回はギャグ要素強めなので仕方ないのかもしれませんが。
…………何が仕方ないのだろうか。
1人、読書をしていた。
ピンポーン。
ふと、耳に呼び出し音が響く。
瞬間、僕の背中に悪寒が走る。
「梨深く〜〜ん?私だよ!私!」
名乗る気配がないところから察するに、僕に自分がわかってもらえる自信があるのだろう。
宅配を頼んだ覚えはない。祖父母がくれた野菜等はもう届いている。いや、そもそも私だよ!私!なんて言う宅配があってたまるものか。
おおよそ誰が扉の向こうにいるかは察しがついている。
僕は無視した。無視して、本の続きを読む。
ピンポーンピンポーンピンポーンピンポーン。
次第に、音が重なり出す。
ピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーン。
「……っふう」
どうやら、僕が家にいない可能性は全く思案していないようである。
僕は深呼吸をしてから、しおりを挟み本を閉じる。
念入りに閉じられたチェーンを外し、上下とも施錠された鍵を、一つずつ外していく。
そして、下の鍵を外した瞬間だった。
「梨深君っ!!」
お皿を持った長髪の女性が、ドアの隙間から無理やり玄関に入ってくる。
「会いたかった!!凄く会いたかったよ!!わざと作りすぎた料理を渡すのは建前で、本当は梨深君のお部屋をお掃除したり、お料理を作ってあげたり、お世話をするために来たの!!」
開口一番、これである。
ニコニコと、嬉しそうに玄関で笑う彼女、里川支那を見て僕は顔に手を当てた。
「心の声と話すつもりだった声が逆になってます」
「えっ、あっ、ぁあっ?!ご、ごめん、ごめんね?今のは嘘!本当はオムライスを作りすぎちゃったからお裾分けにきたの!」
少し恥ずかしそうにしたあと彼女はめげずに僕に声をかける。
オムライスって、作りすぎることがあるものだろうか……チキンライスならともかく。
ラップの下をみると、ふわふわの卵がかけられたオムライスがある。ご丁寧梨深君へ♡のケチャップ文字付きである。
「ね、ね?入ってもいい?」
「…………散らかっていませんしお世話もお料理も間に合っていますしお掃除も結構ですがどうぞ」
何かが違うと思いながら、僕は彼女を部屋に入れる。
「……ん〜」
やたらと僕と僕の部屋を見つめる彼女。なにやら、何かを探しているようだ。
「ね、ね?何か無いの?」
「……何か、とは?」
わざと作りすぎてくれたらしいオムライスをキッチンに置く僕は、げんなりとした顔で彼女を見る。
「お掃除とか、お料理とか、お洗濯とか!あ、梨深君のお世話……背中を流したり、髪を洗ってあげたり、歯を磨いてあげたり、耳かきをしてあげたり!」
僕の部屋に入り、慣れた様子でベッドに正座する彼女。
僕は彼女の対面、居間の椅子に座る。
「……結構です」
「そ、そんなぁ、何か無いの?ないの?私が出来る事……な、なんでも!なんでもいいよ!!」
僕の布団を掴み、口元に布団を近づける里川さん。
「里川さ」
「支那とか、支那さんとか、支那お姉さん、って、呼んでくれると嬉しいな」
「里か」
「嬉しいな?」
無言の威圧。僕の布団に顔を埋める彼女は、頰を紅潮させた。
「支那さん?それ、やめてください。恥ずかしいので」
「それって、どれぇ?す〜〜、はぁ〜〜〜、ぁあ、梨深君の匂いがいっぱい……ん〜、最高……」
僕は頭を抱えて、椅子の上で丸くなった。
「そろそろ出禁にしますよ」
「わかった、今日は帰るね」
口元に僕の布団を当てながら玄関に向かおうとする支那さん。
「僕の布団を持って行かないでください。僕が、寒くて夜眠れなくなります」
「わ、私があっためにきてあげよう、か?」
「まずはあったまりきったその脳味噌を冷やしてください」
「梨深君ひどい……」
僕がそう言うと、またベッドに戻って布団に顔を埋める支那さん。
「……今日は何の御用で?」
「お掃除とか……お部屋が散らかっちゃって無いかなぁ、って思ったんだけど」
「部屋を綺麗にする習慣がついたので、もうご心配なく。ご帰宅されては?」
彼女が毎日部屋に来て掃除をしに来るものだから、彼女が家に来る理由がなくなるように、僕が毎日くまなく掃除するようになった。彼女のおかげと言うべきか、彼女のせいでと言うべきか。一応、感謝しよう。一応。
「そんな寂しい事言わないでよぉ〜〜!」
「用がないのでしたらお帰りください」
僕は玄関に手を向けて、帰宅を促す。
「……用がなきゃ、来ちゃダメ?」
上目遣いで僕を見る彼女。
「いや、そんな彼女みたいな事言われても困るんですけど。言っていませんでしたが、僕には彼女がいるんです。あんまり来られると困ります」
もちろん、彼女を帰らせるための嘘だ。
「またまた〜〜」
和やかな表情で笑う彼女に、妹との自撮りツーショットを見せる。
「ねえ梨深君この女誰?」
「だから、彼女ですってば」
やっと帰ってもらえそうな事に安堵すると、僕は彼女の目を見て驚愕した。
瞳孔が開き、その無表情さとは一変して、目からは涙が流れている。
「消さなきゃ」
玄関から外に出ようとする支那さん。
「ちょっ、ちょちょちょ支那さんっ?!まって、待ってください!!」
僕が止めると、彼女はニコッと無機質な笑みを浮かべる。
「大丈夫、梨深君には何の迷惑もかけないから。すぐに終わるからね」
「い、妹!妹なんですってば!!見栄……う、嘘をついたんですよ!!」
僕は大声で叫ぶ。
「妹……なぁんだ、そうなの?」
「はい、妹です!」
「ならいいや。許してあげる」
「ど、どうも」
なぜあなたに許されなければならないのか、と僕は思ったが、今それを言うと、身に危険が及ぶ気がしたのでやめた。
「話を戻すけどさ?」
「はい」
再び僕のベッドの上で布団を顔に埋める支那さん。
「なんでもしてあげるよ?私がしてあげられる事なら……そ、その、エッチな事だって、してあげる、よ?」
「いえ結構です」
僕は即答した。そこまで女性に飢えているわけではない。
が、どうやら彼女は僕のその言葉を信用しなかったようだ。
「え〜?そうかなぁ」
テーブルの上にあった、僕のパソコンに手を伸ばすと、彼女はインターネットを使い始めた。
「何かを調べる気ですか?」
「まぁ、そうっちゃそうかなぁ」
「でしたらご自分のパソコンかスマートフォンを使われては…………何を……?!」
僕が止める前に、彼女は無表情になりながらもパソコンの画面を僕に見せた。
そこには、見覚えのある卑猥な女性の画像が画面いっぱいに広がっていた。
「ねぇ、これ何?」
「な、何でしょう、ね?」
「一度消したくらいじゃ、エッチなサイトの履歴は消せないよ?」
「……」
「言ってくれれば、いつでも何回でもしてあげるのに」
頭痛がしてきて、僕は頭に手を当てた。
「どうして他の女に目を向けるの?」
「どうしてと言われましても。僕が目を向けるべき女性がいないので」
「かっちーん頭きた!ここにいるじゃん?!ねぇここにいるじゃん?!梨深君に相応しい美少女がっ!!私独身だよ?!一人暮らしだよ?!隣の部屋だよ?!いかがわしい事なんでもできるじゃん!!」
「……」
確かに。確かに、彼女は美少女だ。もちろん、お隣さんに引越しの挨拶をした時くらいは、胸がときめいた。ましてや一人暮らしだと、独身だと言われれば、仲良くなりたくもなる。
が、それは初めだけ。
「あの、先程から僕に対して性欲の話ばかりされてますけど僕をなんだと思ってるんですか?支那さんは」
「だって毎日一人でしてるじゃん。寂しいでしょ?一人で画面越しじゃ」
負けだ。ここで、なんで知ってるんですかと聞こうものならそれは負けである。聞かない。聞いては負けだ。おそらく、とんでもない答えが返ってくる。彼女は適当にそれらしいでたらめを言ってるだけだ。気にする必要はない。
「そんな事は無いですよ?1人だと、相手の事を考える必要が無いですから、気楽なんです」
「そう言うけどさ、梨深君」
「はい、なんでしょう」
「梨深君て童貞じゃん」
「ぐうっ?!」
まさかのストレートパンチに思わず倒れる。
く、くそ、この女、なぜ知っている!!
「あっ、ちなみに私も処女だから安心してね。梨深君と同じで、は、じ、め、て、ど、う、し♡だから」
「うるさいです聞いてないです少し黙ってください」
「酷いっ!!」
僕は彼女を下から睨みつけた。
「そりゃ、言動を見てればわかるよ」
「僕がどうて……未経験だと思われるのは不快です。今後の参考までに聞きましょう。その言動とは?」
平静を装って……いや、よろめきながら僕は尋ねた。
「ほら、私と会って間もない頃。なんか一々私の言葉に過敏に反応して、私が梨深君の部屋に来てベッドに座ると、凄い顔赤くしてたもん。わかるでしょ、そりゃ」
「…………」
そんな事はない。ないと言い切りたいが、正直自覚がある。見に覚えがありすぎる。仕方がない。たまにお裾分けをしてくれる彼女は、本当に完璧な美少女だった。そう、最初のうちだけは。
「あの頃の梨深君は可愛かったなぁ〜〜もう1年前?うわ、時間経つの早いなぁ。今じゃ私は23で梨深君は19。書類上の歳の差は埋まらないけど、心の距離は近づいた気がするよね」
彼女が、ニコニコと笑いながら言う。
それに対して、僕も笑って言った。
「それは確かに、そうかもしれませんね」
「え、以外。あの梨深君が認めるなんて!!もしかして私の事……」
頬を赤く染めながらキャーキャーと騒ぐ支那さんに、僕は笑顔で言った。
「心の距離が近づくと、見たくない嫌な面も見えますもんね?僕、支那さんの嫌なところたくさん知ってますもん」
先程の仕返しである。
「うわっ、梨深君ひどい!!私のどこが嫌なのっ?!」
ぷんぷんと腰に手を当てる支那さん。
「言っていいんですか?一応隣人の情けで聞いておきますけど」
「い、良いよ?梨深君から見て嫌なところは直すもん」
「では遠慮なく」
僕は大きく息を吸い込んだ。
「まず、突然家にやってくるところ。はっきり言いますね迷惑です。やめて下さい。最初のうちは美少女っぽい人がなんかサプライズで来てくれると嬉しかったと思うような血迷いが僕にもありましたが、毎日毎日仕事行く前と仕事終わりと休日に、しかも毎度毎度不規則な時間帯に来られるのは本当に心臓に悪いですやめてください」
「え〜?梨深君が1人でしてる時は突撃したくてもしないようにしてるんだけど、ダメ?」
言われてみれば彼女は、事後、片付けが終わった時ちょうどに、やってくる事がある多々あった。
今更ながら気づいた。
う、嘘だろ?!この女、僕の部屋に盗聴器でも仕掛けてるのか?!
慌てて辺りを見渡し、コンセント付近をチェックする。
すると、支那さんが真顔で言った。
「別に盗聴器なんてつけなくても梨深君の行動パターンはわかるって〜〜」
むしろ盗聴器があって欲しかった!!!
僕は床に拳を叩きつけて悔しがる。
「梨深君と私は完全に協調してるからぁ、そんな事しなくても全部わかるよ?それに私、プライバシーの侵害はしないよ!」
頬を膨らます彼女に、僕は真顔で言った。
「さっき普通に僕のパソコンから履歴開いてましたよね?しかも一度消したやつ」
「あ、あれは……浮気してる梨深君が悪い!いつもはそんな事してないから良いじゃん!!時々だよ、と、き、ど、き!」
「時々でもされるのは困りますっ?!」
「うわ梨深君必死すぎだよ……そんなに履歴見られるの嫌?」
「嫌です?!超嫌です!!支那さんだって嫌でしょ?!」
これが地雷だった。
急にモジモジとし始めた彼女は、僕を見て呟いた。
「私は、梨深君の事考えてシてるから……むしろ、見て欲しい、な?」
「ダメだこの件で僕に勝ち目はない!!」
ガッデム。僕は血の涙を拭いた。
「さぁ、気を取り直して支那さんの悪いところを言いましょう」
「えっ、取り直さなくていいよ……」
「はいどんどん言って行きます!」
「急に元気になったね。お姉さん悲しいよ、梨深君がそんな子に育ったなんて。お姉ちゃんそんな子に育てた覚えはありません!」
僕もあんたに育てられた覚えはない。
ひきつる口元を、無理矢理動かして喋る。
「支那さんの悪いところその2!他人の生活に侵入してくる!!侵食してくる!!僕の服とか勝手に買ってきてタンスに入れるのやめて下さい!!上着はともかくなんで下着まで?!買うの恥ずかしくないんですかっ?!あと、さりげなくこの前歯ブラシ置いていったでしょう?!捨てようにも捨てられないのでポストに投函しておきました回収はご自分でどうぞ!!さらに、布団!偶に枕が僕の使っているものではなくなっている事があります!!さりげなく交換してるつもりなのかもしれませんが!!思いっきりピンクなんですよ!!フリルもついてればいくらなんでもわかります!!やるならもっとわかりにくくやってください!!」
僕は、徐々に自分がヒートアップしてくるのを感じた。
「いや、枕の件は隠す気ないから」
「なんで?!隠してくださいよ!!せめて!!せめて僕にわからないようにやってくださいます?!心臓と僕の精神衛生に良くないからっ!!」
「ほら、枕は私が梨深君の枕を使ってる間に、同じ事をしてくれたらな、って思ってさ」
「使う……?同じ事……?枕は、頭に敷くもので、使うものではないのでは?」
僕が言葉の間違いを指摘すると、彼女は微笑みながら首を振った。
「私、梨深君の枕を使ってるの!」
「…………な、何、に?」
冷や汗が出る。そういえば、と。枕にシミができていた事があったのを思い出した。自分のよだれだと思って気にしなかったが、僕は涎を零した事などない。
おかしい。これは、おかしい。
「何って、ナニに?」
「ぁあああっ!!!僕はなんて枕で寝ていたんだ!!あれは涎じゃなかったのか?!」
「梨深君のでは無いけど、私の涎だよ?」
……どうやら、僕の想像よりは幾分かマシだったようだ。
ホッと一安心しつつ、彼女につられて自分まで下ネタばかりを考えてしまっている気がして、自分を恥じた。
「下のお口……だけど、ね?」
「僕の恥じらいを返せぇええええええ!!!」
はぁはぁ、と肩で息をする僕。枕は処分する事にした。
「あ、次の枕は一緒に同じの選ぼうね?」
「嫌ですよなんであなたと同じ枕にしなきゃいけないんですか?!」
「彼氏彼女たるもの、ペアルックならるペア枕くらい普通だよ!」
ね?と話す支那さんに、僕は般若の形相で言った。
「誰が彼氏彼女だぁああああっ!!!」
「ちぇっ、誤魔化せると思ったのに」
誤魔化せてたまるか。
「ではあなたの悪いところ3つ目!!」
「え〜、まだあるの〜〜?人間悪いところに目が行きがちだけど、その人の良いところをみたほうが、良い人間になれるよ?」
「なっ……んっであんたに諭されなきゃならないんだっ!!」
僕は、本日の気力と体力の限界が近づいてきている事を悟った。
「下ネタが多い!!」
「梨深君だって下ネタ好きじゃん」
「紳士淑女たるもの恥じらいを持って」
僕が言いかけたところで、彼女が口を挟む。
「じゃ梨深君さ、好きな男の人とでも絶対にエッチな事しないって言う凄く清楚な子と、好きな男の人の前ではめちゃくちゃ乱れる普通の女の子、どっちが良い?」
「後者ですが」
「でしょ?」
「あんたは少しくらい恥じらいを持てっ!!」
「誤魔化せなかったか……」
「続きまして4つ目!!これが1番嫌なところ!!すれ違った人みんなが振り向くくらいには美少女なのに、あなたと付き合いたいと思わない理由!!」
「褒めてくれてありがと」
僕は4本指を突き出しながら、言った。
「では支那さん?」
「なぁに?梨深君」
「僕とあなたが付き合ったとして。1番最初に何をしますか?」
「う〜ん、合体もいいんだけど……まぁ最初は、邪魔な女の連絡先全部消させるかな」
「妹や母の連絡先を残すのは?」
「もちろんーー」
僕は展開を予想して口を開く。
「「絶対に許さない!!」」
「……なんだ、梨深君わかってるの」
「ええ。だからあなたとは付き合いたいとは思わないんです。嫌なところその4!嫉妬深い」
僕が言うと、彼女は僕のベッドに倒れこんだ。
「……これでも大分セーブしてるんだけど?」
拗ねたような声だった。
「あなた23歳でしょ、子供みたいに拗ねないで下さいよ?も〜」
「歳のことは言わないで!歳の差結構気にしてるんだからっ!!」
「あ、そうなんですか。以外です」
彼女の事だから自分が歳上だからとなんでもかんでも権力を振りかざすつもりなのかと思っていた。
「私をなんだと思ってるわけ?」
「変態美少女ジェラシストの隣人お姉さん」
「……間違っては、いないかも」
苦そうな顔をする彼女は、僕の枕ーー本日中に処分予定ーーを抱きしめている。
その、少ししょんぼりとした顔を見て、僕は微笑んだ。
「すみません、ちょっとたくさん言いましたね」
「いいよ、お姉さん過ぎた事は気にしないの。人間……梨深君にだって言い過ぎちゃう事あるよね?」
「微塵も言い過ぎだとは思ってませんよ?むしろ過小評価していたくらいです。悪い方向に」
「……梨深君て人の心をえぐるよね」
「あなたにそれを言われる筋合いはありませんね。いつも、僕で遊んでらっしゃるからその仕返しですよ」
「だって、会社つまんないんだもん。なんか毎日飲み会に誘ってくる男供とか特に嫌だ」
「いいじゃないですか、モテモテで。製薬会社でしたよね、眼鏡をかけたイケメンさんとかいらっしゃるんじゃないですか?」
「裸眼の梨深君の方が1億倍ご飯のおかずになる」
「それはどうも」
ふと、僕は考えてみた。
「……」
「どうかした?梨深君」
「あの、1つ聞いていいですか?支那さん」
「なぁに、改まっちゃって。なんでも言い合える仲じゃない、私達」
ツッコマナイ、ツッコマナイゾー。
「支那さんて、なんで僕の事好きなんですか?僕、色々上から目線で言ってますけど、どう考えても見た目のスペックは、見た目のスペックだけは、支那さんの方が上だと思うんですよ」
「やたらと見た目のところだけを強調したね〜。私、そんなに性格悪い?」
「悪くはありませんがエロいです」
「褒めてる?」
「自分でもわかりません……と、そうではなくてですね」
僕は声のトーンを真面目にして彼女に尋ねた。
「ずっと疑問だったんですが……どうして、支那さんは、やたらと僕に構うんですか?」
「……知りたい?」
「ええ」
ベッドから起き上がり、僕の目の前に来る彼女。
「梨深君てさ、よく人助けをするじゃない?」
「そうなんですか?」
「わかってるくせに、とぼけちゃって」
「1年くらい前の事だよ。ある女性が、酔った男性達に絡まれてたの。それで、囲まれた女性は大ピンチ!そこに、高校生くらいの男の子がやってきて、女性を助けてくれたの。男性達の間に入って、相手は自分がするから、今のうちにって。びっくりしたよ、その後、隣にその子が引っ越してきたんだもの」
微笑む支那さんは、僕の頰を撫でた。
「……それ、人違いでは?記憶にないです」
「間違えないって、その時、お礼としてその子の首筋にキスマーク付けたから。後日会った時も付いてたわ」
「……」
僕は自分の顔が青くなるのを察した。
「初対面の高校生相手に何してるんですかっ?!」
「でも、かっこよく助けてくれたお礼だし。後で結婚の約束もしたし」
「そんな約束してません!!」
僕は慌てて訂正すると、ニヤニヤと笑う支那さん。
「ほら、覚えてた」
「……実際は、男の人達を追い払えなくて、あなたが僕を弟役にして、家族の迎えがきたから帰る、って言ったんですよ」
「そうだった?でも、かっこよかったよ?」
「僕以外の人でも助けたでしょうね。そうなったらその人を好きになったんですか?」
「助けてくれたのは梨深君だよ?」
ぐいっと、鼻の先まで彼女の顔が近づいた。
「だ、だから……もし助けたのが僕じゃなかったら、その人を……」
「うるさい口は塞いじゃえ!」
支那さんは目を閉じて、僕の唇を奪った。
しばらくそうした後、彼女は、ゆっくりと唇を離す。
「……え?」
突然の事に固まっていると、彼女はこう言った。
「初恋だったの、あなたが。ちょうど、会社が辛くて悩んでた時期だったから、なおさら王子様に見えちゃって」
「…………僕みたいな出来の悪い人間じゃなくても」
「そんな出来の悪い子だったら、ご両親が19歳で一人暮らしなんてさせないと思うけど?」
「……そうですね」
「心配しなくても大丈夫!私、あなたを逃さないから」
「え?」
「地球の裏側まで逃げられても、天国だろうと地獄だろうと地の果てまで追い詰め……… っと、違った。追いかける!絶対に、梨深君の事離さないから!」
途中、追い詰めるという言葉さえ無ければ完璧だったと、僕は思った。
「わかりました……これからも、よろしくお願いします」
「え、付き合うって事?!」
「いえ、そうは言ってません。ただ、良き隣人として、これからもよろしくお願いしただけです」
僕は笑って彼女を見つめた。
彼女もまた、笑って僕を見つめた。
「逃さないからね、梨深君」
「どうぞご自由に。僕は今から枕を買いに行きますから」
「あ、一緒に行く!」
「ご自由にどうぞ」
「梨深君順調におちていってるね」
「うるさいですよ。やっぱり一緒に来ないでください」
「じゃあこの部屋で待ってる」
「自室に帰ってください。隣でしょう?」
「彼女になったんだしここで待ってる〜!」
「なってません。はぁ、知りませんよもう。僕は行きますからね」
僕は彼女を置いて、玄関に向かいながら幸せについて考えるのだった。
「うんっと、盗聴器をセットし直さないと……」
ドアに手をかけた時にふと聞こえた声に、僕は背筋を凍らせる。
どうやら、枕を買いに行くのはもう少し先になりそうだ。
なんというか、ヒロインのキャラが被ってきた気がします。というか、同じキャラしか書けていないような……一話ごとに別の世界の話なので気には留めないで頂きたいですが、気に留められないように頑張ろうと思います。
ブックマーク、評価、感想、ありがとうございます!!よろしくお願いします!!
前回1日に2回投稿しましたが、翌日に投稿しないのではあまり意味が無いですよね。すみません。