ヤンデレはナルシストよりもナルシストを愛せるか 神奈・鹿波
感想を頂きました。とても嬉しいです。とても嬉しいです。もう一度言いますね?とても、嬉しいです。
本当なら1日1回以上は投稿しないようにストックするのですが、とても嬉しかったので本日二つ目を投下します。
あ、別に長くはないですし、ヤンデレ感もあまり無いので、いつも通りあまり期待はしないでくださいね?
自己紹介をしよう。私の名前は夢野神奈、進学校に通う高校2年生だ。
人々が集まる箇所に行けば、私は人を掻き分け最前列に行く。
なにを見に行くかって?期末試験の結果発表だよ。
「はっ、当然だな」
私の名前が、一位に君臨している、これで5回目となるNo. 1だ。
「くくっ、くくくくっ」
笑いが止まらない。
「な、なんだよ夢野。今日はどうしたんだ?一位おめでとう」
「おめでとう夢野君!凄いね!」
人混みの所々から私を祝福する声が上がる。
「ありがとう、諸君。いや、澤野君、聞いてくれたまえよ」
「な、なんだよ」
「いや、笑えると思わないか……?くくっ、くくくくっ」
僕は両手を広げてみんなに言い放つ。
「運動神経は抜群!!成績は超優秀!!そして超絶美形な顔立ち!!この私にっ、くくっ、足りないものがあるかっ?!澤野君、あったら言ってみたまえよ!!そうか、そうだろうな、無い物なぁ、くくっ、くくくくっ!ぁははははははっ!!」
私は、あまりに愉快で、笑いが止まらずお腹が痛くなってくる。
「性格だよなぁ……嫌味なわけじゃないけど」
「そうだねぇ。イケメンだし文武両道だし最高に条件は揃ってるのに、あとは性格だねぇ。性格さえ良ければ女子が群がるのにねえ」
なにやら澤野君と東雲さんが言っているようだが、よく聞こえないねえ。
「このっ、僕の!どこに悪いところがあるのかっ!!」
あまりに完璧な自分、私は天の不平等さにいたたまれなくなり、空を仰ぎ見る。
「ぁあっ!!神は不平等だ!!」
「「いや、そういうところだよ」」
いや、待ちたまえ。考えてみるんだ。普通の者ならここで満足するだろう。
だが私は特別だ!!逆に、考えてみるんだ、もしや、私に足りないものがあるのではないか?
「……この私に足りないもの。それはなんだろうか」
「「だから性格だって」」
「そうか!!わかったぞ!!私に足りないものが!!」
私は澤野君と東雲さんの方を向いた。
「それは!!」
「「それは?」」
「愛する者、つまり彼女だ!!」
「「だめだこりゃ」」
顔を見合わせてため息をつく2人。何かあったのだろうか。
「私に相応しい愛する者とは……まず、前提条件として、私を愛せるものが良い……そうだ!!わかった!!私よりも私を愛せる者!!これだ!この者となら私はうまくやっていける!!見た目や性格、もはや性別すら私には関係ない!!それさえあれば何人でも構わない!!」
「いや、それ中々厳しいな……」
「もうなんか5周くらい回って清々しいよねぇ」
「よし、こうしていても始まらない!!調査をしよう!足りないものは早く見つけるに限る!!」
私は、後ろにいる2人に尋ねてみることにした。
「澤野君、君は私よりも私を愛せるかね?」
私は澤野君の顎に手を当てる。
「いや悪い俺ノーマルなんだわ」
弾かれる私の手。
そうか、私が相手だと触られる事すら恐れ多いと、そういう事か。
「そうか無理か……仕方がない、君は常人だ。恥じる事は無い。では東雲さん、次は君だ」
「へっ?私?!」
突然の事に顔を赤くする東雲さん。
無理もない、この私のような超絶完璧なパーフェクト人間が相手なのだ。どのような女性でも照れて話せなくなるのは仕方ないだろう。
「東雲さん」
私は彼女の顎に手を当てる。
「君は、どうだい?」
「ひゃ、ひゃいっ?!ふぇっ、ちょ、ちょっと」
「君は、私の事が好きかい?」
「えっ、そ、その、す、好きか嫌いなら……」
私は右手で彼女の顎を撫でながら、左手で人差し指を振った。
「ノンノン、私は、君に、私が好きか、と聞いているんだよ?聞きたい言葉は、好きの一択だ。さぁ、言ってごらん。ワン、トゥースリー、はい?」
「ふ、ふぇっ、す、す、好き……です」
真っ赤になりながら答える彼女は、とても恥ずかしそうだった。
「うわー。夢野やるなぁ〜まぁ無理もないか。顔は、どこ探してもいないようなイケメンだもんなぁ。俺が女子だったら今の一瞬で堕ちる気がする」
「あ、あの……」
「何かね?東雲さん。いや、遥さん、と呼ばせてもらおうかな?」
「あふっ?!」
「あ、爆発した……」
動きが完全に止まる遥さん。
「っと、いけない……すまない、少しからかいが過ぎたようだね」
「ふぇ?から、かい?」
「私は知っているよ、君達が私を好きだという事を。ただし、それは私が私を愛する気持ちを上回ってはいない。わかっていたことさ」
「ひっでー、東雲完全にフォーリンラブじゃん」
「わ、わたし、からかわれて……」
涙目の遥さん。
「これはすまない、レディを泣かせてしまった。私は罪な男だね……だけど、安心してくれたまえ!君達が私よりも私を愛する事ができれば、私はいつでもウェルカムだからね!」
私は胸に手を置きながら高らかに話す。
「だってよ、東雲。チャンスはあるみたいだぜ」
「ふぇえ……無理だよ、あのナルシストを超えて好きになるとか、絶対無理だって……ぐすっ」
「泣くな泣くな、夢野、お前ちょっとやりすぎだぞー?」
「すまない、私の美しさが悲劇を生み出してしまったようだ。どうか2人とも、私のために争わないでくれたまえ」
私は2人を牽制する。
「いやいや、誰も……少なくとも俺はお前とくっつく気は無いからな?」
「ぅう、私も無理ぃ!!あんなのと一緒にいたら身がもたないっ!」
「はははっ、2人とも、私はいつでもウェルカムだからねっ!!」
こうして、私は2人の元を去っていった。
その後も、学校内で全ての人に私に対する考えを聞くが、あまり良い答えはでず。
気づくと、帰宅時刻になっており、生徒から先生にまで全ての生徒に……いや、1人残っていたか。
「いや、しかし、彼女は……」
ふと、廊下に貼ってある期末試験の結果発表が目に入る。
一位、夢野神奈。その、下。同列一位、夢野鹿波。同列一位、つまり……同じ得点。そう、彼女もまた100点である。私と同じで。
「……くっ、くくく、まさか、ね。そんな、まさかね」
「何が?」
「ッ?!」
私の背後を取るだと?!この、私の?!背後をッ!!そんな事ができる人物なんて、限られている!!私の両親……いや、ここは高校だ。この時間にいるわけがない。考えられるのは、ただ1人。
私は意を決して振り向く。
「鹿波さんか?!」
「いや、声でわかろうよ」
そこには、少し呆れ顔の……超絶美少女が、いた。
「私に似て整った顔立ち、私に似て引き締まったウエスト。私に似」
「私に似てが多いな」
「くっ……さすがだ、我が血を分け合った親族よ…………」
「いやいや、普通に双子の姉って言いなって」
ツインテールにまとめた髪の毛を揺らしながら、彼女は私の腕に抱きついた。
「?!」
「どうかした?もう最終下校時刻過ぎてるし、先生に怒られる前に帰ろ?」
「な、なんだこの膨らみは?!」
「いや胸だよわかるだろ普通」
はっ、くっ、そうか、そんな事すらわからないほどに私は彼女の美しさにやられていたのか……!!
「さすがだ、我が姉ながら素晴らしい人心掌握術だ。見習わさせてもらおう」
「……いやいや、私何もしてないから。も〜、い〜から一緒にか〜え〜ろ〜!」
腕に押し付けられる脂肪の塊。
くっ、な、なんだこれは?!
「せ、精神攻撃かッ?!なぜ頭が揺れる……物理攻撃も……い、いやっ、心臓の鼓動が早く……そうか薬か!いつ薬を入れた?!」
「普通に、胸押し付けられてドキドキするって言いなよ。うりゃうりゃ!どうだどうだ〜〜!!」
むにゅ、むにゅむにゅ。左腕が柔らかな弾力に包まれる。
「ぐぐっ……っう……こう、なったら、もはや左腕を捨てるしか…………」
「いやいやいや大袈裟だなぁ何言ってるのもう良いから帰るよ神奈。先生に怒られるからっ!」
私は背中を押されながら、階段を降りて行った。
その時、背中に柔らかさを感じて階段を転げ落ちたのは何者かの陰謀に違いない。きっとそうだ。
「ね、神奈さ、告白して回ってるって本当?なんか、学年性別職種構わず誰彼構わず付き合おうとしているとか聞いたんだけど。クラスの子……っていうか、私以外の人、先生までみんながみんな聞かれてるって言ってるんだけど、どゆこと?」
この私の美しさを拘束するためか、私の左手の指と彼女の指を絡ませて手と手を繋ぐ鹿波さん。
「ぐっ……わ、私に足りないものは、なんだと思う?」
「性格じゃない?」
「そう、愛する者だよ!」
「そう、って私微塵もかすってないんだけど。っていうかなんで苦しそうなの?」
「く、苦しそう?何をおっしゃっているのかわからなっっぐうぅううう!!!」
「あーはいはいどうせくだらない事だと思うけどもしなんかあったら後味悪くなるから聞いてあげるよどうしたの?」
「さ、先程から心臓の鼓動が……特に、私の左手のあたりで脈を感じる……ま、まさかっ?!鹿波さん、自分の右手に劇毒物を塗って」
「ないから。え〜?姉弟のスキンシップのつもりなんだけど、ダメかなぁ。まぁ、もう高校生だもんねえ。恥ずかしい?私は全然平気だけど」
「はっ、この私にとって羞恥心などあったとしてないようなものののののの」
すれ違った人に、やたらと繋いだ手を見られる。
瞬間、汗が吹き出る。
「くっ……くそっ、どういう事だ?!これはどういう精神攻げ」
「はいはい恥ずかしいのね。でもやだもんね、今日は私だけのけ者にした罰!」
「の、のけ者?なんの話だね、鹿波さん」
「えー?ほら、告白とかの話」
「そ、そうだった。その話をする気だったのだよ、鹿波さん」
「あらそう。遮ってごめんね」
「何、私ほどの完璧な人間となると、そんな事気にならなくなるのだよ気にするなかれ」
私は右手で彼女を制する。
「それでだね、私には愛する者が足りないと思ったのだよ」
「意味わかんないけどまぁいいや。続けて」
「私が愛する者に求める条件はただ一つ。それさえクリアできれば何人でもどんな性別でもどんな見た目でも構わない」
「なになに、どんな条件?」
「学校の人達では、鹿波さん以外誰もクリアできなかったのだよ」
私の言葉に、興味を示す鹿波さん。
「言ってみて」
「私を、私よりも愛する事だ」
その時、鹿波さんの動きが一瞬止まった。
「どうかしたのかね?鹿波さん」
「……それで、学校のみんなに聞いてたわけね?」
「そうだ」
「なんで私には聞かなかったの?」
ふと、握られた左手が締められた。
「い、いや、それはその……」
「ねぇ、なんで?教えてよ」
鋭い眼光で見つめられて、思わず私は目を背けてしまう。
くっ、この私が見つめ合いで負けるなど……さすがは我が双子の姉である。
「な、なんとなくですからお気になさらず」
「あー、なんか気まずい事があるんだ〜」
「な、無いですが?!全然無いですがッ?!」
「うわ、わかりやすっ。なんで私には聞かなかったの?誰でもいいんでしょ?条件さえ満たせば」
「………………言わなきゃ、ダメでしょうか」
「ダメです」
「姉上、ご勘弁を」
「急に敬語にしてもダメ〜〜!いいから話せ話せ!」
脇腹を、肘で突かれ、私は降参した。
「なんとなく、嫌な予感がしたので」
「もっと、具体的に言えるんじゃ無いのかなぁ?」
ニタニタと笑う鹿波さんは、とても楽しそうだ。
「お、弟をからかって楽しいですか?!」
「うんめっちゃ楽しい」
「ぐっ…………」
「話して?」
少し声が高圧的になり、私はいよいよ逆らえなくなる。
「その、なんていうか」
俯いて、自分の影と見つめあった。
「くよくよしない!らしく無いぞ自称完璧人間!!」
「だ、だから……」
「だから?」
「鹿波さんが、条件を満たしてしまうような気がして……」
「あれれ〜?愛する者が欲しいんじゃなかったの〜〜?」
とても楽しそうな声は、私をどんどん追い詰め行く。
「あぁっ、もしかしてぇ、みんなに聞いたけど、結局自分に相応しい者はいませんでしたぁっ、て自慢する気だったのかなぁ?」
「…………ち、ちがいますっ」
「うふふ、可愛いなぁもう」
く、くそっ、これだから鹿波さんは……!!我が姉ながら、なんて推察力。違うのは性別と生まれた時間数十分だというのに!!なんという事だ……一体何が違うというのだ!!
「それでぇ?私には聞いてくれないのかなぁ?」
「…………ぜ、全員に聞くとは言ってませんからっ!」
「でもぉ、私以外の人に聞いてるって事はぁ?みんな私に聞いてないって知ったら不自然に思うんじゃないのぉ?」
くうっ、楽しそうな鹿波さんの顔が悔しい……!!
「か、鹿波さんが黙っていればいいのでは?みんな気づきませんよきっと」
「そっかぁじゃあ私はみんなに言っちゃおーっと。完璧人間の神奈君はぁ、お姉ちゃんには敵う気がしなくて自分で作った場から逃げ出しちゃいましたぁ〜〜ってえぇ」
「ぐぐぐっ……」
そんなものは、この、完璧人間にあるまじき失態!!
失態を晒し、一生完璧で無い人間として過ごすか……ここで腹をくくるか。
「いいだろう、決めたよ。腹をくくる。では尋ねよう。夢野鹿波さん、貴方は私を、私よりも愛する事ができるか?!」
こ、ここでノー、と言われれば万事がうまく行く!!行ける、私には運がある!!
「はぁ〜い!私、夢野鹿波はぁ、夢野神奈を永遠に夢野神奈よりも愛する事を誓いまぁ〜〜す!」
「だっ、だだだ、だれも誓えなんて言ってません!!」
周りの人の視線が痛い。
「それでぇ?真っ赤な神奈君はどうするのかなぁ?」
ニヤニヤと笑う鹿波さん。
ま、まだだ。ここで諦める私では無い。
「く、くくくっ、勝ったと思わない事だ!」
「お?」
「証明してもらおうか!!私よりも、私を愛している事を!!」
くくっ、どうだ!!気持ちを証明する事など不可能!!私にもできる事では無い!!それを鹿波さんができるはずがない!!そう、つまり私の勝ちだということーー
「いいよ〜、私のやり方で証明すれば良いかなぁ?」
「くくくっ、そうだろう証明なんてできないだろうそうだろ……え?」
「はい、神奈くーん?こっち向いて」
私の両頰を持って顔と顔を向かいあわせる鹿波さん。
「え?な、なんですか?」
「息吸って〜!」
「すぅ〜」
言われるままに、息を吸う。
「吐いて〜」
「はぁ〜〜」
今度は息を吐く。
「また吸って〜〜」
息を吸う。
「はいここでキス」
「えっ、えっキんんんんんっ?!」
瞬間、私の唇が奪われる。
「んっ、ぱぁっ、はぁ……んんんっ」
鹿波さんの舌が、涎が、私の口の中に侵入してくる。
「んんんっ?!ははひはん?!はひを!!!」
「ん〜?ちゅっ、ん、れろっ、っぱぁ、はひっへ、きふ?」
「んんっ、ちゅる、んんんっ」
ま、ちょ、まっ、て…………え?な、何?何が……何が、起きてる?わ、私、何が……え?鹿波さんに、私の口が…………うっ。
意識が、飛んでいく。ゆっくりと、頭が白くなって、い……く………………。
「っぱぁ。どう?これで証明…………って、あれ?お〜い?神奈さ〜ん?」
遠くで、鹿波さんの声が聞こえた気がした、
「ぐぅ…………」
ーーー
「あ、起きた?」
目が醒めると、そこには心配そうに私の顔を見つめる鹿波さんがいた。
「ここ、は?」
「家。神奈は今自分のベッドの上で寝てる」
「……そ、そう、なんだ。ご、ごめんなさい、私、記憶があまり……」
「あれ、そうなの?あちゃ〜、刺激が強すぎたか。まさか飛ばしちゃうとはね〜。イメージトレーニングはしてたんだけどなぁ。これじゃ深呼吸の意味がないや」
ここで、私はゆっくりと先程までの経緯を思いました。
「…………………鹿、波、さん?」
「ん〜〜なぁに?」
少し上気した頰に、ペロリと唇を舐めたその仕草で、私は全てを思い出した。
ズゾゾゾゾゾ。私は、慌てて慌てて起き上がり、ベッドの上で移動した。壁と壁の間で、体育座りをして、すぐさま口を両手で塞ぐ。
「あらら。警戒されちゃった」
「な、何をするんだ!!……と、その前に運んでくれてありがとう原因も鹿波さんだけど!!」
私は軽く礼をすると、すぐに怒る。
「あはは、気にしないで。っていうかさぁ、おんぶしたけど、神奈体重軽すぎない?なんか私よりも軽い気がして嫌になっちゃうよねぇ」
「そんな事より!!何をするんだ!!」
「え?何って、証明」
「あれのどこが?!ただ単に私の口を蹂躙しただけじゃないか!!」
「あはは、言えてるかも」
「あははじゃないっ!!何を考えてるんだ!!」
「でも、あれで私の気持ちはわかったでしょ?」
ニコリと笑う鹿波さん。私は寒気がして、さらに壁際に寄る。
「わ、わかるわけが……」
「証明出来てたよね?初めて……は小さい頃に私達してるから初めてじゃないけど。まぁほぼ初めて?あげたんだし。貰っちゃったし?」
「ちょ、ちょっと待って鹿波さん。なにそれ私キスした記憶はさっきのが初めてなんだけど?!」
「あー、ごめん神奈が寝てる時だったかも。父さんと母さんがキスしてるの見てさ……まぁ、幼稚園児のした事だから許して?」
「幼稚園児ならともかく高校生だよ?!ねぇ?!鹿波さんっ?!ほんと何やってるの?!」
「まぁまぁ。それで?証明出来てたよね」
「で、出来てないです」
「んじゃしょうがない。認めるまでヤるしかない」
「何を?!ねぇ何をするの?!鹿波さん答えてっ?!」
私がそう言うと、四つん這いでベッドの上を歩いて近づいてくる鹿波さんは、艶めかしく笑った。
「言ってからされるのと、言われずにされるの、どっちがいい?」
「さ、されない選択肢、は?」
「私が神奈の事を神奈より好きだと証明したって認めない限りはありませーん」
「ぐっ……」
「へぇ、頑張るね。諦めて認めるかと思った」
耐えるんだ、耐えれば大丈夫。相手は女性だ。その気になれば私は逃げ出せる!!大丈夫、大丈夫!!
「あ、でも…………これやっちゃったら、今度こそは、初めて……だね?」
顔を赤らめながらブレザーを脱ぎ始める鹿波。
「ねぇなんの話?!ねぇなんの話しをしてるのッ?!」
「あ、父さんと母さんは呼んでも無駄だから。この日のために、私がずっと説得してきたからね。快く私達の事を了承してくれたよ」
「くくっ、見え透いた嘘を吐きましたね?それははったりでしょう。そう言えば私が母と父を呼ばないとでも思って……」
「2人は、気を利かせて今夜は帰ってこないって言ってた。はい、これ」
床にセーターを脱ぎ捨てる鹿波さんに、携帯を渡される。そこには、メッセージで2人から『弟か妹に期待しててね♡』と、仲良く2人で同じ文章を書いていた。
「ふ、2人の携帯を勝手にいじって、後で2人の携帯からメッセージだけ消去すれば証拠は残らないですよね?」
「私2人の携帯のパスワード知らないし。なんなら、2人にホテルの中の写真自撮りして貰えば?」
「いいでしょうそれもはったりなんでしょう?わかってますよ私は完璧な人間なんだ、送りますとも!!」
送信ボタンを押して10秒後、両親の顔が映った映像に、豪華なホテルの背景と2人の自撮り写真が送られたきた。
今夜は帰らないのでごゆっくり♡のメッセージ付きで。
もちろん、メッセージが送られてくる瞬間は、鹿波さんは服を脱いでいたので携帯の操作はできない。
「……仲睦まじいな畜生!!」
私は携帯をベッドに叩きつけた。
「はい、私は脱いだからつぎ神奈の番ね」
目の前には、ワイシャツとリボン以外全て脱いだ神奈さんの姿が。
「きゃーーーっ!!隠して隠して見えちゃうからっ!!」
「いいじゃん姉弟なんだし双子なんだしどうせ昔から一緒にお風呂はいってたじゃん」
「なおさらだめじゃん?!ねぇ鹿波さん?!ねえ?!」
わさわさと両手を動かしながら壁際の私に近づいてくる彼女。
一歩。また一歩。最初は1メートルほどあった距離が、もう30センチほどしかない。
一歩、また一歩と迫り来る鹿波さん。
「な、なんか襲ってるみたいでドキドキするね」
「こっちは襲われてるからドキドキなんだけどっ?!ねぇ鹿波さん?!」
私は、もはや自分の死を覚悟した。
「最初に言っておくね?お互いに初めてだけど、優しくできる自信ないからごめんね許して」
「ねぇ何するの?!私何されるの?!」
彼女の顔が、私の鼻先まで来た時、私は覚悟を決めた。
「……わかった」
「え?」
鹿波さんが、ネクタイを放り投げ、私のシャツの第三ボタンを外した時だった。
「認めます。鹿波さんは、私より私を愛しています。認めますからぁっ!!」
「本当に?!本当にっ?!」
鼻同士がくっつき、再び唇が近づく。
私はとっさに唇を手で塞ぐ。
「認めるからっ!!も、もう許して、鹿波さん……」
「じゃあ、私達、晴れて恋人って事?!」
「そ、そうなるのかな……え?姉弟で?えっ?」
「やったぁ!!生まれた時からの念願が叶ったぁあ!!」
両手を上げてから、私に抱きつく鹿波さん。
「ま、まぁこれで完璧人間の私に足りないものは無くなった、というわけだ……よかったよかった…………よかった、のか?」
私は首を傾げた。
「ごめん、何を言ってるのかよく聞こえないから、口から手を外してくれない?キスしないから!」
「……わかった」
私は手を外す。
「ごめん嘘」
「え……んんんんっ?!」
「んちゅ、れろぉ、ぁははぁ、よかったぁ、他の女に取られる前に、ちゃーんと神奈をゲットできて!んんっ」
私はもはや、鹿波さんにされるがままだった。
「んーっ、大好き!愛してる神奈!!んっ、恋人になったんだから、キスより先の事しても、いいよね?」
「…………え?」
ドンッ、という音を立てて、鹿波の両腕が、私の頭を挟んで壁につく。
「もう、逃さないから」
「は、はは。ご勘弁を…………」
ニコッと笑う鹿波さんに、安心する私。
「やぁ〜だ!」
再び迫る、鹿波の唇。
この日、この家には私の、非の打ち所がない完璧人間である、この私の悲鳴が、永遠に響いたと、後で聞いた。
今回の話はサブタイトルが面白く書けたと思っています。リクエストが来たら、この2人の話をまた書きたいですね。次は時間が経ってからの、2人の日常になると思うので、きっとヤンデレが加速する事でしょう。
毎度すみません、あまりヤンデレ感が無くって。どうしても背景説明で話が終わってしまいます。でも、他が短い分、あんまり長いのをいきなり、というのもどうかと思ってしまうんですよね〜。
ブックマーク、評価、感想など、ありがとうございます!!とてもやる気が出ます!!特にブックマークと感想は桁違いでやる気が出ます!!評価も、もちろん嬉しいです!!色々していただけると、本日のように調子に乗って二本投下とかしますので。
いつも(?)読んでくださってありがとうございます!!これからも、私と一緒にヤンデレを楽しんでいきましょうね!!