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兎と狼 甘利・礼智

感想を頂きました。嬉しいです。ありがとうございます!!おかげで頑張れます!!

僕、時雨甘利(しぐれかんり)は甘えん坊だ。高校2年生、17歳にもなってなんではあるが。

自覚している。それでも、甘えん坊だ。一人は寂しい。自分の気持ちには素直になり、人が傷つかない程度に思った事を言い、見栄を張らずに嘘はつかない。僕の信条だ。

「甘利ちゃ〜ん、今度は私のお膝に乗らな〜い?」

「あ、ちょっと!今は私の番でしょ?!3時までは甘利君は私のものなんだけど?!」

僕は女の子の膝の上で、気持ちよく眠る。

本日は、快晴なり。芝生の上で、クラスのみんなとピクニックである。

みんな、とは言っても、男は僕一人である。なぜかはわからないけれど、来る予定だった男子達が急な事情でみんなキャンセルになってしまったのだ。

理由を聞こうとしたものの、聞かない方が身のためだと言われた。

みんな、酷く怯えていたようで、女子ってまとまると怖いと言っていた。

どういう意味なんだろう?

「みんなでピクニックって、のどかでいいね〜和むよ〜。なんだか幸せを感じるよ、僕は。きっと、みんなが一緒だからだね?一人じゃ寂しくって、こんな気持ちにはならない」

僕の言葉に微笑む女の子達。頭を撫でられる。

「甘利ちゃんが好きな時に好きなだけ一緒にいてあげるよ〜〜!だからぁ、私とずっと一緒にいない?」

「甘利君は私がいいんだよね〜?」

「いやいや、私がいいのよ」

「あなた達じゃあ甘利君の求めるお姉さん像には届かないわ!私がふさわしいのよ!!」

なんだか、だんだん平和じゃなくなってきた気がする。

どうやら僕を巡った争いのようなのだが、僕は眠くて口を出す気になれない。

自分勝手なのはわかるけれど、でも、これが僕だ。

「ぅん……眠い」

女の子の膝の上で、うとうととしてきた、その時だった。

「起きなさい」

その一言と同時に、僕の胸ぐらが思いっきり上に引っ張り上げられた。

「いつまでそんな事をしているつもり?癪に触るし目に悪いわ。やめてもらえる?不快よ」

ストレートに綺麗な黒髪を伸ばす彼女は、見るからに不機嫌そうで、少し息切れをしていた。

「僕を探して来たの?走って?」

「全然違うわ1ミクロンも合ってない。走っていたらあなたが自クラスの女子を侍らせているのが見えて、気に障ったからやめさせに来たの」

「でも、それは、走る格好じゃないよね?」

ロングコートに、清楚なボックススカート。艶めかしく覗く肌が、足の存在感を際立たせている。極め付けは、ブーツである。

どう見ても、走るような格好ではない。

「……この私に口答えする気?私が走ってきたと言ったら、走って来たのよ」

突然現れて僕の胸ぐらを掴み上げて宙ぶらりんにする彼女は、海川礼智(うみかわれいち)。僕の幼馴染だ。

「あなた、よくもまぁ毎週毎週そんな事して飽きないものね」

「飽きたら寂しく無くなるわけじゃないからねぇ」

「その減らず口は、いつになったら無くなるのかしら?」

胸ぐらの次は、両ほっぺを抑えられて喋れなくされる。

「むぐ、しゃへれはい」

「ふふっ、滑稽よ。今のあなたとなら一緒にいてあげてもいいわ」

とても楽しそうである。

「ところで……あなた達?」

僕の周りで呆然とする女の子達を見つめる礼智。

「いつまでそこにいるつもり?この子の毒牙にかかったのは可哀想だと思うけれど、この子、全くその気は無いわよ?ただ、誰かで寂しさをまぎらわせたかっただけの寂しがりや。帰って?」

「い、いやでも、まだ3時だし」

「帰って」

彼女が睨みを効かせると、女の子達はそそくさと帰って行った。

「いいふひはらい?」

「何言ってるかわからないわ。ちゃんと喋ってもらえる?」

彼女は、僕の口を塞ぎながら楽しそうに言う。

「……」

「ま、いいわ。離してあげる」

僕の口と胸ぐらから手を離す礼智。

「昨日ぶりだね?礼智」

「勘違いしないでもらえるかしら?私はあなたに会いにきたわけじゃないのよ?」

「じゃあ何しに来たの?」

「言ったでしょう?走りにきた、と」

「なら、ここで別れることになるね〜。残念だよ。一人での帰り道は寂しいから」

僕はしょんぼりしてそう言うと、彼女は顔を上に上げて、僕を見下すようにして言った。

「一緒に帰ってあげないこともないわ。どうせ家も隣だし、ね?」

「本当に?!やった、一緒に帰ろう?」

「まったく、しょうがないわね……」

僕は2人で帰れる事に嬉しくなり、思わず彼女の手を握った。

「……なんのつもりかしら、これは?」

「これ、って?」

「この手よ。なんで握るの?」

「僕が握りたいから」

「そう」

冷淡に言う礼智は、興味なさげに前を向く。

「付き合ってるんだし、良いよね?」

「あなた、付き合ってない子に膝枕して貰っておいて、よくそんな事言えるわよね」

「みんな頼んだらしてくれるんだもん」

「…………私には頼まない癖に」

「え?ごめん、なんて言った?」

ぽつりと、彼女が何かを言っていた気がしたが、よく聞こえなかった。

「なんでもないわ」

ため息をつく彼女は、少し物憂げだ。

「ところでさ」

「何かしら」

「礼智って、なんでこの辺りを走ってたの?」

「なんで、と聞かれれば、走りたかったからと答えるわね」

「さっきも言ったけど、その格好で?まるで僕とデートに行く時の格好じゃないの、それ。僕思ったんだけど、実は僕が女の子達とピクニックをする事を礼智が知っていて、その子達に嫉妬してそれを邪魔しに来たのかと」

「それ以上妄言を吐いたら、みぞおちに一発いれるから」

思いっきり握られる僕の右手。

うん、痛い。

「暴力反対」

「あなたは行動の暴力を振るうわよね」

「行動の暴力って何?」

「文字通りよ。言葉の暴力の行動版」

「僕、人を傷つけるような行動した覚えないんだけれど」

直後、また右手がすごい力で握られる。

「痛い痛い痛い!!」

「そんなんだからたくさんの女の子を傷つけるのよ」

「僕、魔性かな」

ちょっとキメて言ってみる。

「ええ魔性よ」

すると、礼智が真顔で頷く。

「冗談だったのに……」

「あらそうなの、私は冗談じゃないわよ?」

「そ、そうですか」

強く握られる右手に、なんとなく僕は反抗できない。

「あなた、どれだけの女性をたぶらかせば気がすむの?」

「僕、1人もたぶらかした気は無いんだけどな」

「あらあらよく言うわね本当はわかってる癖に」

「……」

僕を蔑視する礼智は、やはり不機嫌だ。

「そんなに僕の事嫌い?」

僕は立ち止まった。手を繋いでいるため、それにつられて、彼女も立ち止まる。

「……なに?急に立ち止まらないでくれる?」

「別れよう」

「…………………………………………」

「別れよう」

「聞こえてるわよっ二回も言わないでもらえる不愉快よ!!」

彼女のその声は、どこか上ずっていた。

「理由をお聞かせ願えるかしら?」

「君が可愛そうだよ。僕みたいな人間と、君は釣り合わない。君はもっと良い人間と付き合うべきだ」

「あなたに憐れまれるいわれはどこにも無いわ」

やっぱり、礼智は僕の事好きじゃないみたいだ。

「僕は、いつも自分勝手だから。それに君を付き合わせたくない」

「なんでなの?他の子にはいつもお願い(・・・)しているじゃない」

「君が大好きなんだよ、礼智。ずっと昔から一緒だったから。君には幸せになってほしいんだ。だから、僕なんかとは一緒にいるべきじゃない」

「……どうしてよ」

「誰よりも君が大切なんだ。だから、仕方ない」

「……本っ当に、減らない口ね」

僕は手を緩める。そして、彼女を置いて家へと向かう。

「今まで、ありがとう」

それだけ言うと、僕は走って家へと帰った。

思い起こされるのは、彼女との出会いから今までのたくさんの時間《思い出》。

「色々、あったなぁ」

僕から告白した。彼女は渋々了承した。いつも一緒にいたかった。素直になれない彼女が可愛かった。僕は、いつも1人だったから。誰かと一緒にいたかった。

玄関のドアを開けても、誰もおかえりと言ってくれる人はいない。

もう長い事、そんな言葉は言われていない気がする。

休日だけれど、母は家にいない。僕は、いつも1人だった。幼稚園生の頃から、ずっと1人だった。

食事も1人。テレビを見て寂しさをまぎらわせた。夜は毎晩泣いていた。誰かが自分を助けてくれはしないかと、何度も願った。天使が舞い降りてきて、いつか僕を助けてくれる事を信じた。

そんな時、彼女が現れた。隣に引っ越してきた同い年の女の子が。いつも僕を見下して、罵倒してくるし、毒舌だけれど、僕は知っている。それは全て照れ隠しだと。

た、たぶん、そうだと思う。いや、そうでなければ困る。

彼女がどんな事を言おうと、彼女の存在が僕の中でとても大きなものだったのは間違いない。

たぶん、僕は今夜泣くのだろう。自分のした行いを後悔して、一生泣き続けるのだろう。

そんな確信を胸に抱きながら、自室の部屋を開けた。

瞬間ーー、僕の腕が、何かに引っ張られる。

「わっ?!」

閉められたカーテンに、すぐに閉じられるドア。

何かが部屋にいる。

母親……ありえない、僕の部屋に入るわけがない。父親……会ったことすらない、ありえない。親戚……知らない。友人……玄関の鍵は閉まっていた。入れることがそもそもおかしい。

「遅いのよっ!!いつまで待たせる気っ?!」

聴き覚えのある声を耳にしながら、真っ暗闇の中、僕はベッドに押した押し倒された。

「ねえ、どういうわけ?私を置いて走っていったのに、私の方が着くのが早いって」

「ど、どうして……」

僕を逃さないようにするためか、僕の上にまたがるようにして、四つん這いになる女の子。

「あなたみたいなもやしっ子に負けるほど筋肉がないわけ、ないじゃない。それにしたってあなた走るの遅いわね」

いつもの罵倒。毒舌。いや、事実か。

そこにいたのは、礼智だった。

違う、ちょっと待て。

「ど、どうやってここに?鍵は……」

「そんなもの合鍵を作ったに決まってるでしょうそんな事もわからないの?」

「い、いやそんなの僕聞いてないんだけど」

「あらそう?なら今言うわ。この家の合鍵を持っているの、私。あの忌々しい義母様にあなたの世話をする代わりに合鍵をくれって言ったの。簡単に了承してくれたわ」

チャラチャラと僕の前で鍵を見せる礼智。その頰は、暗くてよく見えないが、微かに赤く染まっている気がする。

「私、ここであなたといろんな事をするつもりだったのだけれど?ここで寂しがりやのあなたを癒してあげようと色々画策していたのだけれど?」

徐々に声が大きくなり、僕を威圧する彼女。

「それは……嬉しいけど、もういいよ。君はもう僕に付き合う必要は無い」

「嫌」

酷く、高圧的な声だった。

「……え?」

「嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌、絶対、絶対、絶対にっ、嫌っ!!」

狂気を孕んだその声は、僕の身体を凍りつかせるのに充分だった。

「許さないわ、あなたが私から離れるのも!!離れようとするのも!!おかしいわよ、なんで?あなたはいつもいつもいつもお願い事ばっかりする自分勝手な人間じゃないの?!なんで突然私のために別れるなんて話をするの?!意味不明よ不愉快よ不快極まりないわ!!憤慨だわ!!」

数センチの鼻先で激しく怒り狂う礼智。こんな礼智は、初めて見た。

「で、でも君は僕が嫌いなんじゃ……」

「そんな事一度でも言った?!ねぇ、私がそんな事一度でも言った?!」

「い、言ってない、かも」

「私、思った事で嫌な事は口に出すようにしてるのなんでかわかる?!相手が改善できるようにチャンスをあげてるのよ!!ねえ私はあなたの嫌いなところを一度でも言ったかしら?!答えて!!」

思い返す日々。そこには、いつも毒を吐く女の子の姿がある。でも、確かに。

「言われてみれば、一度も言われてないかもしれない」

「そうよ当たり前でしょう?!私はあなたが好きなの大好きなの愛してるの!!今すぐにでも私だけのものにしたいくらい!!!わかる?!ねえわかる?!私が今までどんな気持ちだったか!!」

左手はベッドについたまま、右手で僕の後頭部を持ち上げる礼智。

「いつもいつも彼氏が他の女と遊んでいて、他の女達はあなたに媚び売って!!いつもいつもいつもいつも!!あなたはいつも私にだけはわがままを言わない!!なんで?!なんで私だけのけ者にするの?!他の女の方がいいの?!見た目は全部あなた好みにしてるのよ?!」

「そ、そんな、僕の好みなんてどうやって………」

僕が反論すると、彼女は机の上にあるパソコンを指差した。

「最近はインターネットでどんなものでも調べられるから便利よね?ただ、検索履歴を一度消したくらいで全ての証拠がなくなると思ったら大間違いよ?お馬鹿さん」

「…………ま、まさか」

「ええ、あなたが調べている普段使っている女性のいかがわしい画像は全てファイリングしてあるし、検索履歴からワードを統計にしてあるわ」

「そ、そんな、犯罪だ」

「だから、何?愛の前では罪なんてあってないものよ」

「い、意味がわからない」

「自分のパソコンをハッキングして誰が咎めるの?」

「え?」

「人のお金を使う事は悪いことかもしれないけれど、自分のお金を使う分には問題ないわ」

「な、何が言いたいの?」

「あれ、あなたがバイトして貯めたお金で買ったものよね?」

「う、うん」

彼女は、僕の顎から鎖骨にかけて、艶めかしく人差し指で撫でる。

「つまりあなた自身の所有物。結婚して、財産を共有したら、どうなるかしら?」

「……ぼ、僕と、君が、結婚したら、その罪も消えるって、言いたいの?」

「ええ。もっとも、紙切れ一枚なんてなくても、私たちはとても深い愛で結ばれているけれどね」

「な、なんかやけに饒舌だね、不気味だよ。嫌な予感がする」

「あら心外ね。あなたの嫌がる事をした覚えは一度もないのだけれど?」

そ、そうかもしれないけど……。

僕は、背筋が寒くなっていく気がした。

「それに、嫌かどうかはあなた次第よ?」

「………僕、何をされるの?」

ニタリと笑う礼智は、どこか楽しそうだ。

舌で上唇から下唇までペロリと舐めると、嬉しそうに言った。

「暖房、つけましょうか。まだ春の前だし、寒いものね」

「え、寒い?なら早く言ってくれれば暖房着けたのに」

僕はリモコンを手にとって暖房と書かれた文字を押す。

機械音と共に、ゆっくりと温風が部屋を暖めていく。

というか、寒いかな?全然寒くないと思うんだけど。

「これから寒くなるのよ」

「気温の話?」

「いいえ」

「…………脱ぐ、とか言わないよね」

「あら、脱がしたい?なら脱がしてもいいわよ?ほらほら」

胸元についたシャツのボタンを、僕の顔の前に持ってくる礼智。

「礼智、冗談ならここまでにしてくれないかな」

「私が冗談を言った事、あるかしら」

「きっと、今回が初めてになるんじゃないかな」

きっと、きっとそうに違いない。彼女は、礼智は、一方的に別れられるくらいならば既成事実をつくって結婚まで持っていこう、なんて危険な考えを持つ人間じゃないはずだ。

「僕はまだ17歳だ」

「あら奇遇ね私もよ」

「どちらにせよ、まだ結婚はできないんだけど」

「でも、これであなたは私以外の女には何があっても手を出せなくなる。あなたはそのあたり律儀というか、真面目だものね?しかも、来年の8月2日には結婚できるおまけ付き」

嬉しそうにはしゃぐ彼女は、いつもの礼智とは思えなかった。

結婚をおまけ呼ばわりするなど、どう考えてもまともじゃない。

「わ、わかった。君の気持ちはよくわかったよ。僕はもう他の女の子とはなるべく関わらないようにする。君と別れるっていう話も無しだ。これでいい?」

「んー、これから残り6時間のあなた次第ね」

「じゅ、12時までうちにいるつもり……?僕の母親が帰ってくるよ」

本当は、毎週土曜日、つまり今日は帰ってこない事を僕は知っている。

だが、ここは身を守るためにそう言わなければいけないと思った。

「大丈夫よ、毎週土曜日はあの人帰ってこないから。知ってるでしょ?私も翌朝10時くらいまでには帰るわ」

「一晩泊まると?」

「高校2年生の男女が同じ屋根の下で一晩を過ごす……何が起きるのかしらね?」

礼智はとても嬉しそうに笑う。

「……勘弁、してくれないかな。謝るよ、なんでもする」

「わかったわ。なら今から言う私の言う事を聞いて」

「うん」

「脱いで脱がせて」

「ふざけるなっ!!僕に何をさせる気だよ!!」

「あら珍しい。ふざけるな、だなんて。なかなかあなたの口から聞ける言葉じゃないわね?」

僕が声を荒げると、彼女はゆっくりと身体を下ろし始めた。

やがて、彼女の胸の膨らみが僕の胸にあたり、お腹同士が触れ合う。

「女の子って、男の子に比べて柔らかいそうね。触って確かめてみたら?」

僕の胴体に抱きつく彼女は、もはや礼智ではないように感じられてしまう。

「……どうして、いつも素直じゃないの?いつも今くらいはっきり言ってくれればわかりやすいのに」

「だって、嫌じゃない」

「嫌って、何が?」

僕と顔を合わせながら、彼女は微笑んだ。

「私が本当の気持ちを10分の1でも言ってしまったら、あなたは私から逃げてしまうもの」

10分の1って……大袈裟な。

僕は笑って礼智に問いかける。

「なら言ってみてよ。試しに10分の1くらい」

「逃げないって約束できる?」

「うん。大袈裟だなぁ、普通に言えばいいのに」

すると彼女は、何を思ったか僕の身体をがっしりと、ベッドの下に手を入れて捕まえる。

「これで逃げられないわね」

「……」

ちょっと待って、と。そう言おうとした時には、すでに時は遅かった。

「どうしてあなたはいつもいつもいつもいつもいつもいろんな女の子に笑顔を振りまくの?あなたのせいで傷つく女の子もいるのに。何より私が1番傷つくわ。私はいつもあなたの1番近くにいるし1番近くにいたいと思っているの。なのにあなたはいつもいつもいつも私から遠ざかろうとする。今日だって他の女にその大切な頭を膝に乗せさせて、許せないわ。なんで私でもした事がない事をさせるの?ねえ、どうして?あなたが寂しがりやなのは知ってるわ。でもやっぱりあなたには私だけでいいと思うの。人数がいたって質の低い愛じゃあなたの心は癒せない。私しかあなたを癒せないのよ?なのにあなたはいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつも!!この前なんて、クラスの子に誘われて王様ゲームしてたでしょう?あなた以外全員女子な時点でみんながあなたと何かをしようとしている事に気づくべきよ。あの時は私が無理やりあなたを離脱させたから間一髪で大丈夫だったけれど、きっとあのまま続けていたらあなたはどんな風に犯されていたかわからないわ。そうだ!こんど私と2人だけで王様ゲームをやりましょう?それならどんな命令をしても大丈夫だものね…………ふふ、私達の子供って、どんな子なのかしら。きっとあなたに似て、可愛い子ね。でも、私に似て憎たらしい子になるかもしれないわ。女の子は……嫌ね。きっと私と同じであなたに恋をするわ。そして私からあなたを取っていこうとする。あなたを洗脳して離婚を促して2人きりで生活しようとして。果ては背中を流してあげると言ってお風呂場で……はぁ、やっぱり子供はやめておこうかしら。でも、幸せな家庭には子供って必要な気がするのよね。あなたはどう思う?私は男の子なら欲しいわ。ああ、でも息子だとそれはそれで他の女にあげたくないわね。ジレンマだわ。女の子なら恋敵が増えて、男の子なら結婚はさせられない。ねぇ、あなたはどっちの子が欲しい?」

「………………僕、まだ17歳なんだけど」

「結婚は出来なくても子供は作れるわ」

彼女は、くねくねとしながら、僕の臀部に自身の臀部を擦り合わせる。

「あ、あの、えっと、その、やっぱり、別れない?」

「……」

「僕ら、合ってないと、思うん、だよね?ほら、なんていうの、お互い一度時間をおいてから落ち着いて考えてみればまた違った視点から……」

僕はゆっくりと自分の死期が近づいてくるような錯覚に陥りながら、決死の覚悟で説得を試みる。

腕や足を動かそうとするが、彼女に固定されていて動けない。

「ね?言ったでしょう。あなたは逃げるって。だから言わなかったの。はぁ、しょうがないわね」

「な、何がしょうがないの?」

「あなたは嫌がっていたから、なるべくしたくはなかったのだけれど、しょうがないわ」

な、何がしょうがないのだろうか。彼女の顔は、全然しょうがないなんていう顔ではなく、むしろ嬉しくてたまらないという顔だった。

「お、落ち着いて。早まらないで、ね?」

「ここで離したら、あなた、多分2度と私のモノにはなってくれないでしょう?」

「なるなる!全然なります!!凄く礼智のものになりたい!!」

「なら今しても大丈夫よね?」

ニコリと笑う礼智。

あ、策にはまった。

僕がそれを自覚する頃には、もう色々と遅かったのだ。

「……い、いやぁ高校生では大変だと思うなぁ、経済面とか」

「大丈夫、知ってるでしょ?私は株が得意なの」

「…………ですね」

彼女の家はお金持ちで、彼女もまた余裕で2人分くらいの生計を立てられるほどのお金を持っているのである。

「さぁ、他に心配事は?」

「こ、高校には最後まで通いたいです」

「私が高校をやめて子供の世話をしてるから、その間に行ってくればいいよ」

「そ、そんなの、申し訳ないし、行くなら2人で高校に行きたいし!!」

「子連れ高校生って、新鮮だと思わない?」

「……」

彼女の目は、完全に瞳孔が開いており、僕を座って見つめている。

頰は紅潮しきっており、耳まで真っ赤。

「勢いって、よくないと思うんだよね。計画性っていうの?大事だと思う!凄く!」

「大丈夫、計画はバッチリと綿密に立ててあるから」

何か、ないのか。この状況を打破できる何か凄い一言が。

僕は脳をフル回転させた。

「……………………僕は、まだ、2人だけの時間を楽しみたいな」

「ッ!!」

彼女の顔が一気に真っ赤になり、その唇が僕の唇めがけて迫り来る。

その直後、僕は意識を失った。


ーーー


5年後。我ながら、幸せな家庭を持った僕だが、未だにあの時の記憶が思い出せない。ただ、今は礼智も僕も幸せなので、気にしないようにしている。

どうでしょうか。今回はキャラが少しブレていないか心配ですが……まぁヤンデレなので気になりませんかね?次はもっとうまく激しくヤンデレします!!

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