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1ノ4
「僕ね、お兄ちゃんみたいなカッコいい勇者になるんだ!だから、弟子にしてください!」
小さな未来の勇者をきっかけに、周りの人たちが少年の声に振り向いてさらに俺の元へ寄って来た。
「あ!お前、パレードで主役だった兄ちゃんじゃねえか!ちょっと今からうちの酒場で飲んでいきな!お代はタダにしてやるからよ!」
「いやいや!私と一緒に、最高級のレストランでお茶をしてくださる!?もちろん、そのあとも二人きりで楽しみましょう?」
「おいおい、一斉に言ったら勇者の兄さんが困っちまうだろ。それに、この街でもっとくつろいでいって、いろんな人達と一緒にこの街を楽しませてくれよ!」
本当にこの街には、笑顔が取り戻された。
ここに初めてやって来た時は、魔王の存在によって怯えながら暮らす、活気のない、ただ広く寂れた街だった。
それに、数知れないほどの魔王討伐を掲げた勇者が、帰らぬ人となってきたのだから。