表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/35

07 武器を買おう

 俺は翌朝の9時頃に宿屋『森の泉亭』を出た。

 朝食もちゃんとついていた。セシリアは、どれだけ奮発したのであろう…。至れり尽くせりである。

 俺は、Cランクスキルしかもらえなくて悲しいはずなのに、目覚めは良かった。

 ベッドが寮のものと比べて広くてふかふかだったせいかもしれないが、セシリアと昨日、話せたことも主な原因だろう。

 気が置けない幼馴染であるセシリアに、自分のスキルを話せたことにより、色々整理できた気がする。

 おかげで、気持ちを切り替えて、とりあえず今日やることを決める事ができた。

 まず、寮に行き異空間袋に荷物を詰め込む。

 次に、武器屋に行き一番安い弓を買う。

 最後に、森に行き探索スキルを試す。

 以上である。


 でもって、今は学園の寮に来ている。

 本当はあまり他人と会いたくないのだが、いつまでも、こそこそと隠れているわけにはいかない。

 他の学生は、俺のスキルについて知らないのである。

 何事もなかったように振舞おう。

 とは、思っていたものの、俺は、素早く寮の自分の部屋に向かう。

 ルームメイトのベルトと会う可能性もあるが、今日は、昨日の祝福の儀の結果が講堂に貼り出されているはずである。そこでは、Sランク以上のスキルを得た人が発表されている。多くの学生はそちらに行っているはずである。

 俺は素早く合鍵を使って部屋の中に入る。

 予想通り部屋の中には誰もいなかった。ベルトの事だから、たとえ講堂に行ったのではなくとも、この時間なら食堂に行っている可能性も高い。

 部屋の中は既に片付いており、ベルトと俺の持ち物がそれぞれ別の場所に纏めてあった。

 もっとも俺の持ち物は、そう多くなかった。

 学園に来たときは、何も持ってこなかったので、その後、学園から支給された剣と防具、いくつかの服と授業で使う本くらいである。

「ステータスオープン」

 俺はステータスを出すと『異空間袋』をタッチする。

 神殿のお姉さんは、ステータスボックスを使わずに袋を出していたが、俺はまだそのやり方を習っていないため、ステータスボックス上から手動で出す。

 ちゃんと穴が現れたので、俺は荷物を入れていく。

 どれくらい中に入るのかはわからなかったが、結局、俺の荷物は全部中に入った。

 予想以上の収納力に驚きである。

 『異空間袋』をもう一度タッチすると、穴は消える。

 その後も俺は、何度か、異空間袋を出して物を取り出したりしまったりを繰り返す。

 使ってみた感想は、異空間袋は物を運ぶのに便利だが、手動では、いざというときには使えなそうだという事である。

 俺は、ベルトが戻ってこないうちに、部屋をでて鍵を閉めた。


 そして、俺は、次の目的である弓を購入する為、購買部へと向かう。

 学園の購買部でも、弓は売っているのである。

 購買部では、町の武器屋や専門店より、種類こそ少ないが、大量生産された初心者用の武器が安く売っているのである。

 その為、俺は、学園の購買部で買おうと決めていた。

 購買部には、おそらく俺と同じのように予期せぬスキルを得て、新しい武器が必要になり買いに来ている人がいるはずである。

 購買部は、食堂の隣にあるため同級生に会う確率は高くなるだろうが背に腹はかえられない。金欠なのである。

「お、エルクじゃないか」

 案の定、見つかってしまった。この声は、パーティーメンバーのルミナスである。彼女はいつもポニーテールに結んでいる。

 しかし、振り返ってみると、今日の彼女は黒髪をおろしていた。

 何か心境の変化があったのだろうか、おそらくスキルがらみだとは思うが…。

「昨日神殿を出てから見なかったから、みんな心配していたのよ」

 彼女は、いつもすましたような感じをしているが、面倒見の良い娘である。もしかしたら、昨日から俺がいなかったことを少し気にしていてくれたのかもしれない。

「ああ、スキルがあんま良くなかったからちょっと頭を冷やしてたんだよ」

「…そう…残念だったわね…今年は特にみんな良かったからね…」

 俺の言葉を聞いて彼女はそんなことを言う。

 みんな、そんなにスキルが良かったのだろうか?

 セシリアが女神のなんちゃらというSSスキルとSスキルの守護者を得たのは知っている。

 余裕があったら、後で講堂に行ってみよう。

「ルミナスも武器を見に来たのか?」

「まあな…」

 彼女は、いつも長剣を使っていた。パーティーでは俺と同じ前衛を務めていた。

「エルクもか?」

「ああ、俺は弓を見に」

 俺は、弓を放つマネをして見せる。

「そうか。わたしは火の魔導書を買いに来たんだ」

 ルミナスは少し嬉しそうだ。お互い慣れないスキルを得てしまった仲間と思ったのだろう。もっとも俺のはCランクだけどな。

「ルミナスが後衛か…まあ頑張ろうな」

「わ…私は、後衛をやる気はないぞ。魔法も使える剣士を目指す」

 彼女はそう言ってこぶしを握る。

「ああ…頑張ろうな」

「そうだな…弓ならあっちに置いてあったぞ」

 俺は、ルミナスの指した方へと向かう。ルミナスは着いてくるようだ。

 壁には4種類の弓が飾ってある。

 まあ。はっきり言ってどの弓が良いかわからない。

「これなんてどうだ?中古みたいだけど、新品の半額だぞ」

 ルミナスは壁にかかっているものでなく、傘立てのようなものに、立て掛けてあった中古の弓を取り出す。

 見せてもらうと、壁に飾ってある二番目に安い弓と同じものの様である。

 値段は壁にかかっているのが4,500メルクなのに対し2,200メルクと値札が付いている。

 新品で一番安いのが4,000メルクなので中古でも、お買い得な気がする。良くわからないけど…。

「そうだな…これにしようかな…後は矢も必要だな…」

 そう、弓には矢がつきものである。弓は金がかかる。それが問題である。

「これなんて、どうだ?」

 ルミナスがまた先に商品を選んで見せてくる。

 そう言えば、以前、彼女の買い物に付き合ったことがあったが、悩まずにすぐに決めていた。決断が速いタイプである。

 彼女は、俺の金銭状況や目的を理解している為、すぐに今の状況に合った商品を選べるのであろう。

 彼女が選んだのは、矢筒付きで矢が10本ついた500メルクのものである。確かに矢筒も必要である。

「この矢筒なんか、エルクに似合うんじゃないか」

 そう言って茶色の矢筒と矢を渡される。

「ああ。じゃあこれにしようかな」

 結局、ルミナスが選んだものを購入することにした。追加で10本100メルクの矢も追加で購入した。

 しめて2,800メルクを3,000メルク分のギルド紙幣で払う。お釣りで2枚の小銀貨を貰う。

 ギルド紙幣とは、商人ギルドが発行している紙幣で、身分証を見せれば多くの店で使える。

「ルミナスは買わないのか?」

「ああ、私は欲しいものがなかったからな」

「そうなのか…なんか付き合わせて悪かったな…ステータスオープン」

 俺は、買ったものをしまう為に『異空間袋』を出す。

「おお…」

 ルミナスは、俺が突然『異空間袋』を出したことに驚いている。

「昨日貰ったスキルだよ」

「ああ、異空間袋だろ…便利だよな」

 俺は、弓と矢を中に押し込んだ。まだ、普通に中に入った。

「結構、入るもんだな」

「なんか、人によって袋の大きさが違うらしいよ」

「そうなのか…」

 何かの能力値が影響しているのだろうか。スキルの細かい仕様についてはまだ解明されていないことも多いのである。

「…あ、そうだ、今夜、デビッドがパーティーをやろうとか言ってエルクを探してたぞ…参加するだろ?」

 突然、思い出したように彼女は言った。

「ああ…何のパーティーだ?」

「それは。うちのパーティーメンバーからSSランクスキル持ちが2人も出た記念パーティーだってよ」

「!?」

 まじか?

「なんだ。エルク知らなかったのか?」

「ああ…さっき戻ってきたばっかりなんでな」

「そうか…今年はSSスキル持ちが4人も出たんだぞ」

 ルミナスは、目を輝かせて説明する。

 そんな事になっていたのか…。SSランクのスキルは、世界中で1年間に1人出るかでないかの確立のはずである。

 それが4人も一気に出るなんて、学園の中が騒がしい気がしたのはそのためだったのか…。俺は、なんか更に置いて行かれた気分になる…。

「それはすごいな…」

「まあ、スキルがすべてじゃないからな。お互い頑張ろうな」

 彼女はそう言うが、なんとなく自分に言い聞かせている感じがある。

「エルク。今日はこれからどうするんだ?」

「ちょっと森に行って試し撃ちしてくるよ」

「…そうか。頑張るな」

 ルミナスは、呆れたような顔をする。

「夜のパーティーには参加させてもらうと。デビッドに会ったら伝えといてくれないか?」

「わかった。『森の恵み食堂』でやるって言っていたから、直接集合な」

 彼女はそう言う。

 『森の恵み食堂』というのは、学校の近くにある食堂である。

 安くて量が多いので、学食に飽きた生徒が時々食べに行ったりする。

 俺たちも、何か良いことがあった際に何度か使わせてもらっている。

「じゃあ。また後でな」

 俺は、ルミナスに挨拶するとその場を離れた。

 他の人に見つからないうちに、このまま、森へと向かう予定である。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ