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06 見せ合いっこ

 ケーキは、結局、二人だけでは、全部食べきれなかった。

 なので、食べられる分だけ食べて、残った分は店の人に食べてもらうこととした。

 そして現在は、二人で宿屋の2階に移動している。

 その部屋は綺麗に清掃された4×4メートルくらいの部屋であった。

 部屋にはダブルサイズのベッド1つとテーブルセットが置いてある。

 すでに外は真っ暗だったが、2つのランタンの光は明るく、部屋の隅々まで照らしていた。

 また、奥にはお風呂もあり、やはり、安宿とは全然違うものであった。

「おなかいっぱいだねー。でもやっぱ緊張しちゃった」

 彼女は、気が抜けたようにおなかをさすりながらベッドに腰掛ける。

 俺はというと、セシリアのSSランクスキルが気になってしまってしょうがなかった。

 SSランクスキルを持っていれば、将来有名になることが確定したようなものである。

 そのひとつ下の、Sランクスキルでも有名人はたくさんいる…。

 そう考えると、Cランクスキルしかない俺は、今後、彼女との接点は少なくなっていってしまうだろう…。

 もしかしたら、今回の食事会はその意味も込めた、二人での最後の晩餐の意味もあるのかもしれない…と勘ぐってしまう。まあ、俺がCランクスキルしか貰えなかったことを知らないわけだから、きっと被害妄想ってやつであろう…。

「でも、せっかくエルに直接ステータスを見せて驚かせようと思ったのに、女将さんがケーキにあんなこと書いたから、なんかスキルのハードルがあがっちゃったかも…」

 彼女は、恥ずかしそうに言った。

 Cランクスキルしか貰えなかった俺の方が、余程ハードルが…というか、どんな低いハードルも越えられなそうである…。

「じゃあ。私から見せるね…ステータスオープン」

 有無を言わせず、セシリアはそう言って操作を始める。

「見にくいだろうから、こっちに座りなさいよ」

 指で操作しながら、彼女はそう言った。

 俺は、ベッドに座った彼女の隣、少し離れたところに座った。

 しばらくすると、セシリアのステータスボックスが空中に表示される。


 セシリア 15歳 Lv15 next278EXP

 HP A MP S 

 力B 体力B 器用A 速さA 知力S 精神力A 魔力S

 祝福 女神の加護(SS)

 守護者(S)

 料理人(A)


 …な…おかしい…SSにSにAってなんか壊れてる…

 しかも女神の加護って…?知らないスキルである。

 俺は、スキルにタッチしようと指を出す。

 通常、本人がタッチするとそのスキルの細かい内容が見れるのだ。

 もちろん、本人の特別な許可が無ければ、タッチできるわけもない。

 セシリアは俺の行動を察したのか、その細い指で『女神の加護』をタッチする。

 すると、ボックスの表示が更新される。


 属性魔法S 属性魔法耐性 精霊交信

 パーティー効果(0/5) 魔法攻撃力アップ(20%) 魔法防御力アップ(20%)


 一瞬、「大したことない」と思ったが、属性魔法とは、6属性の事であろうか?

 つまり、それだけでSランクスキルを6個持っているのと同等の性能である…。

 ちなみに、パーティー効果とは、パーティーを組んだ時にパーティーメンバー全員に与えられる効果である。(0/5)とは、現在パーティーメンバーが0人という事を意味している。

 ジョブ系スキルには、こういったパーティー効果アップが付されているものも多い。


「せ、セシルが魔法スキルなんてな…」

 俺は、なんか気の利いたことを言おうと思ったが、悔しさのあまりそう言葉が出た。

 セシリアは、昔から、面倒くさくなると手が出るタイプであるため、魔法より武器で戦う方が似合っている。

「ふふーん。こっちを忘れてもらっては困るわ」

 彼女は、『戻る』を押して、『守護者』をタッチする。

 こちらは結構有名なジョブスキルである。このスキルを持っている人は要人の護衛や守護騎士に就職したりする。


 片手剣A 片手昆A 盾A 防御力アップ 状態耐性アップ

 パーティー効果(0/5) 防御力アップ(15%) 魔法防御力アップ(15%)

 特殊効果 永遠の誓いを行った者(1/1)と接触していた場合、お互いの能力値を100%アップする


 これでも十分壊れた性能である。特殊効果は、守護者の守護者たる所以である。

 永遠の誓いを行った者、所謂、結婚相手と手とか握っていると、お互いの能力値を倍にするといとんでもないものだ。

 お姫様を守る守護騎士には、このスキルを持ったものが選ばれる。お姫様と結婚したいならぜひ欲しいスキルであり、このスキルに憧れる人も多い…。

 確かに、これなら物理攻撃もばっちりかもしれない…。

 セシリアは、内容を見せると、慌てて『戻る』を押した。

 俺が、へこみ過ぎているのに気づいたのだろうか…。

 あとは、料理人であるが、これもジョブスキルで、料理人に必要なスキルが詰まっている…。

 はっきり言って、料理スキルを取らなくてよかった…取っていたら、セシリアの劣化版になっていたところである…。

「じゃあ、今度はエルの番よ」

 俺が大人しくなったのを見てか、セシリアはそう言ってステータスを閉じた。

「…いや…きっと、俺のスキルを見たらびっくりするぞ…」

 逆の意味で…。

 そんなに目を輝かせながら見つめないでもらいたい…。

「ステータスオープン」


 エルク 15歳 Lv15 next23EXP

 HP S MP A

 力S 体力A 器用S 速さA 知力B 精神力A 魔力A

 祝福 弓(C)

 探索(C)

 異空間袋(C)

 .


 俺は、『ステータス開示』をタッチする。

 するとボックスには、


 『ステータスを誰に開示しますか?

 (全員・特定の人)』


 と出たので『全員』をタッチする。なぜなら、特定の人を選ぶと色々細かく聞かれるので面倒くさいのである。

 わざわざ、二人で個室に来たのもそのためである。


『本当によろしいですか?

 (はい・いいえ)』


 『はい』を押す。


 …沈黙

「はぁ!?」

 沈黙を破るように、セシリアは変な声を上げて固まった。

「ど、ど、どうして、全部Cランクスキルなのよ!」

 セシリアは、そう声を上げたが、声が大きすぎたと思ったのか慌てて自分で口をふさぐ。

「よくわからないけど、こうなった」

 まあ、俺は、長時間、考えて決めたスキルにある意味吹っ切れていた。

「おかしいじゃない。レアガチャの最低はBランクなのよ…」

 少し声を落としてセシリアは言う。

「一応、Bランクスキルはあったんだけど、なぜか取れなかったんだ」

 てへっとか、やってやろうかと考えたが、そんな雰囲気ではなくセシリアは真面目に怒っていた。

 あえて、レアガチャが1回も引けなかったことは隠した…。

「取れなかったって…確かに、特殊なスキルは、出ても時々取得できない場合があるって聞くけど…」

「そうなのか?」

「でも、それは身体的に無理な場合が多いはず…何のスキルが出たかは聞かないけど…エルは健康そのものだから大丈夫な…」

 セシリアの声は段々と小さくなっていく気がする…。見ると、なんか泣きそうな顔をしている。怒ってみたり泣きそうになったり忙しい幼馴染である…。

「…で、これからどうするのよ…?」

 彼女は、俺の目をじっと見てきた。

「?…ああ、まあ、このスキルで頑張るさ。弓はあんま使ったことないけどな」

「…そう…わかったわ…。大丈夫よ。エルの面倒はちゃんと私が見てあげるから」

「…は?」

「待ってね…ステータスオープン」

「…?」


『セシリア・エレクトムさんからパーティーに誘われています。加入しますか?

 (はい・いいえ)』


 いいえ…

「高等部になったら、同じパーティーになるって約束していたもんね…って、なんで断るのよ!」

「…だって、今から一緒のパーティーになっても仕方ないだろう…?」

「何言ってるのよ。パーティー効果があるじゃない。Cランクスキルしかないんだから、少しでも底上げしておいたほうがいいわ。それに今後連絡を取るのにも便利だしね」

 なるほど…確かに便利かもしれない。

「じゃあ。もう一回よろ」

「…まったく…」

 セシリアは、呆れながらもう一回指を動かす。

 今度は『はい』をタッチする。

 まあパーティー効果と言っても目で見えるものではないので効果の程はわからないが。

 それに、よくよく考えてみると、セシリアはあー言ってるが、高等部になったら、彼女とパーティーを組むのは無理な気がする。

 SSスキルは、特別である。おそらく、セシリアの取り合いになるに違いない。SSランクスキル持ちが居るパーティーは将来を約束されたも同然である。

 学園もCランクスキルしかない俺と組ませたりしないだろう…。

 特に彼女は、守護者のスキルも持っている…。

 …せめて守護者のスキルだけでも、俺にくれれば…。

「大丈夫よ。スキルの事は二人だけの秘密だか…あ、あとステータスちゃんとオフにしなさいよ。気づかずに外歩いたらいい笑い者だからね」

 危ない。すっかり忘れてた…。時々、「ステータスを周囲に開示にしたまま、歩いてました。テヘペロ」という、残念な話を聞くことがある。

 俺は、指で操作してステータスを消す。


「まあ。気を落とさない事ね。お姉ちゃんがついてるからね」

 彼女は、そう笑って言った。

 セシリアが自分の事をお姉ちゃんと言うのを久しぶりに聞いた。

「だれがお姉ちゃんだよ」

「ふふふ。どう見ても私たちの上下関係が確定したじゃない」

「じょ、上下関係って…」

 昔から、セシリアはそうである。

 8歳の誕生日に出るステータスが、俺より1カ月くらい早くでたのだが、セシリアは自分の方が早く生まれたとわかると、「これからは私の事はお姉ちゃんと呼んでね」と、言い出したのを思い出した。

「じゃあ。ご主人様ってのはどう…?」

「呼ばねーよ。これからもずっとセシルって呼ぶからな」

「ちぇ…まあいいわ。ま、冗談はさておいて。そろそろ行かないと寮に入れてもらえなくなっちゃうから帰るわ」

 セシリアは、そう言って立ち上がる。

「エルは、今日は寮に帰らないんでしょ?この部屋自由に使っていいからね…今後の予定だけど、私は、明日には荷物を纏めてここに来る予定だから、エルも、なるべく早く寮に行って荷物を纏めてきなさいよ」

 エスパーなのか、俺が今日は寮に戻りたくないという事を彼女は気づいていた。長年の付き合いというやつであろう。一人になりたい時は誰にでもあるのだ。

「大丈夫だよ。もう荷物は纏めてあるからな」

 元々、現在の寮は、2月にはじまる高等部の入学試験の為に使われる予定なので、俺達卒業生の使用期限は3日までと、決まっていた。なので、俺も含めてほとんどの卒業生は、ほぼ荷物を纏め終わっているのである。

 もっとも必要なもの以外は、3月後半の高等部の寮への入室まで預かってくれるので、倉庫に置いておく人も多い。

「それで、4日にはリステルに向けて出発する予定だからね」

 リステルというのは、俺達が昔住んでいた孤児院がある町である。ここから北に60キロ程行った所にあるが、休み期間中に帰省のする予定であり、セシリアとはざっくりと打合せしていたのだ…『今回は、セシルにまかせる』と…

「わかってるよ」

「それならいいわ…エルは、昔からよくすっぽかすからね」

「…そんな事…無いだろ」

「そんな事、あるでしょ?」

「ああ…ソウデスネ。寮に入れないとかわいそうだから早く行くぞ」

 言い合うのも疲れたので、そう言って俺は部屋を出た。セシリアは、当然とばかりに笑って後に続く。

「女将さん。エルは今日ここに泊まるからよろしくお願いします」

 外に出るとき、セシリアがそう言うと、おかみさんは「はーい。ちゃんともてなしておくからね」と、ウィンクをした。

 それを見てセシリアは、苦笑いをする。何があったか知らなが、本当に打ち解けているようである。

「じゃあ。セシリアさんを、送ってきます」

 俺は女将さんにそう言って鍵を渡す。

「はーい。ごゆっくり」

 女将さんは、笑顔でそう言うのであった。


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