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04 幼馴染

 神殿内の部屋から外に出ると、窓から指す光は夕方のものへとなっていた。周りを見渡すと学園の生徒は見当たらなかった。

 元々、スキルを得たら今日は各自解散する事になっていたので、俺が遅かったのでみんな帰ってしまったのであろう。


 明日は、学園に行くことになっている。そこで、Sランク以上のスキルを得た人は、発表されることになっている。

 通常、スキルに関しては個人情報なので他の人には通知されない。だが、学園の生徒に関しては、『Sランク以上のスキルを得た場合には発表されることに同意する旨の契約書』にサインをしている為に発表されるのだ。

 毎年、4,5人程、Sランクスキルを得た人が発表されている。数年に1度は、さらに上の勇者などのSSランクスキルを得る人もいる。

 聖アルタイン学園でも、5,6年程前に勇者のスキルを得た人がいて、その時はすごい騒ぎだった。当時は、俺もSSスキル保持者を一目見ようと中等部に見に行ったものだ。その先輩も今は、セルトラント王国直属の冒険者をやっているはずである

 。

 神殿を出た時に、他の生徒がいなかったのは救いである。

 スキル自慢をしてくる奴が必ずいるだろう…そして人のスキルを無神経に聞いてくる奴も…そんな中に入るのはごめんである。

 今日は寮ではなく外で宿を取ることにしよう…。

 そう思いながら繁華街の方に向かっていこうと、神殿前の公園を急いで歩いていると、ベンチの所でこちらを見ている人がいるのに気づく…。

 学園の制服姿の少女は、俺に気づくと立ち上がりこちらに歩いてきた。

 俺は他の生徒がいない事を確認しつつ、そして、少女に気づかないふりをして、近づかれる前に立ち去ろうとスピードを速めた。

 だが抵抗空しく、ガシ!と手をつかまれる。

「ふふふ。何で逃げるの!待ってたのに!」

 彼女は、怒ったように言う。

「・・・セ、セシル…リアさん。いたのか!」

 少しわざとらしかっただろうか、声がうわずってしまった。

 彼女は、幼馴染のセシリアである。まあ、同級生の多くは、8歳くらいから一緒にいる奴も多いのでので、ほとんどが幼馴染と言えばそうである。

 が、セシリアは、学園に入る前、孤児院にいた頃からの馴染みであり、かれこれ10年以上の付き合いの、腐れ幼馴染である。

 今はクラスが分かれてしまった為、少々、疎遠になっていたが…。

 それに、彼女は、学園全体で1、2位を争う人気者女子に変身していた為、下手に話しかけようものなら、「人のクラスの女に話しかけるな」等と因縁をつけられたりするのである。

 それで、俺は先ほど他の生徒がいないか確認したのである。

「ふーん。あんま、スキル良くなかったようね…」

 俺の態度を見て察したのか、彼女が見透かしたように言う。

「ま…まあな…」

「まあ。仕方ないわよ。スキルなんて運だしね…」

 運で済まされるほどのレベルではないけどな…。

「だけど、約束は守ってもらうよ。スキルの見せ合いっこをしましょ」

「な…」

 そういえば遥か昔、そんな約束をした気もしないでもない…。本当に5年以上も前の約束である…。

「い…いや。やっぱ、こんなところじゃ。ほら、どこに人の目があるかわからないしな…」

 一応、自分が持っているスキルは隠すのが普通である。他人に知られても良いことはあまりない。

 その為というわけでないだろうが、通常、ステータスオープンをしただけだと、他の人は見ることが出来ないのだ。

 他人がステータスボックスを見るためには、追加で許可しないといけない。

 しかし、普通に許可をすると周りにいるすべての人がステータスを見ることが可能となってしまうのである。

 真名で限定したりして、スキルを見せることも出来るようだが、通常、真名は他人には知られてはいけないとされているので、特定の相手に見せるのも難しいと言える。

「大丈夫よ!ちゃんと宿を取ってあるから、どうせ、明後日には寮を追い出されちゃうから、3泊4日で宿をとっておいたの」

 そういえば、中等部を卒業した俺たちは明後日までには寮を出て行かないといけないのである。

 女神さまデー(12月25日)に行われた卒業式の後、各々、荷物を纏めていた。

 俺とセシリアは、卒業したら一緒に故郷の孤児院に帰る事にしていた。

 故郷は、ここから60キロくらいはなれた小さな町であるが、高等部への入学が3カ月も先なのでゆっくり帰郷する事にしたのである。

 それにセシリアとの旅も、久しぶりなので少し楽しみである。

 ただ、セシリアが隣のクラスの誰かと付き合っているなどという噂も時々聞くので、問いただしてみよう。

 セシリアの事を知っている俺としては、彼女が男の人と付き合えるとも思えないのであるが…人は変わるものである…。

「ちょっと、今、何か変な事考えていただろ!?」

 考えていたことが、顔に出てしまったのか、彼女がそう問い詰めてきた。

「お金もそんなに無いし幼馴染だから、一緒に泊まってあげるだけだからね。変な事考えないでよ!」

「は?」

 今、一緒に泊まると言われた気がするが…。一緒の部屋という事だろうか?

「もう、いいから、早く行くわよ。今日は、宿に夕食も用意してもらってるのに、誰かさんのせいでこんなに遅くなっちゃったんだから…」

 彼女は、そういって急いで先を歩き始めたのであった。

 セシリアに逆らうのも至難の業だと長年の経験で俺は知っている。

 俺は、気が重かったが、仕方なくセシリアの後を追った。


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