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31 受験願書受付開始

ご無沙汰してます。不定期になると思いますが区切りが良いところまで少しずつ更新していきます。

 毎年、学園の入学試験は、2月1日から始まる。

 入学試験は、一次試験と二次試験に分かれていて、例年通りなら、一次試験で、半数程度が足切りされ、残りが二次試験へと進むことになる。

 そして、二次試験に進んだ者から、100名程度が、最終的に合格するのだ。


 その合格者とエスカレーター組の約100名を合わせた200名程度が、4月から聖アルタイン学園高等部へと入学することになるのだ。


 しかし、昨日、セシリアに聞いた話によると、今年の入試は少し違うのではないかと言う事である。


 なぜなら、SSランクスキル保有者が、既に4人、来年度に入学する予定になっているため、受験者数がかなり多くなりそうとの事である。


 そうなると、倍率が高くなるため、一次試験での足切りの人数がかなり多くなるのではないかとの事である。


 昨日から、願書の受付がはじまり、俺はさっそく申し込みに行ったのだが、やはりかなりの人数が集まっており、受け付けてもらうのに3時間ほどかかった。

 その受付会場では、クレア先生はともかく、セシリアも受付業務を手伝わされていた。

 その際に、「話が違う…」と、ボヤきながら受付作業を行っていたセシリアから、足切り人数の話を聞いたのである。


 ここで、俺にとってはひとつうれしい報告がある。

 元々、中等部の生徒である俺は、一次試験が免除されたのである。

 つまり、今回の一次試験での足切り人数増加の影響を受けないのである。


 更に、俺は2次試験が始まる2月11日から参加すれば良いとの事なので、弓の鍛錬も更に進めることができるのだ。


 と言うわけで、今日も俺は、冒険者ギルドへと向かった。

 ちなみに、今日は、セシリアが、クレア先生に拉致されてから、4日が経った1月22日である。

 ここ数日は、セシリアがいなくなった為、冒険所ギルドで、一人でできそうな依頼を探しつつ弓を片手に森に潜っていた。

 そして、今日もその予定である。

 と言うか…それ以外にやることを思いつかないと言った方が正しいかもしれない…。



「だから。この街にもう着いているはずなのに見当たらないんです!」

 俺が冒険者ギルドに入ると、女性の高い声が響いた。

 その方向を見てみると、カウンター横の席でマーニャさんが、二人の女の子の相手をしていた。

 年齢的には、同年代のように見えるので、もしかしたら俺と同じ受験生なのかもしれない。


「…そういう事でしたら…まずは、アルタインの警備隊に届け出て頂くのが良いかと思います」

 マーニャさんは、いつものスマイル顔で、落ち着いた口調で答えている。


「届け出はしました。でも、今は学園の受験で、街に入る人が多いから、マッド達が街に入ったかは覚えていないと言われました」

 二人の女の子の内、もう一人の方は多少冷静なようで、しっかりとそう答える。


「…そうですか…。ですが、ギルドに依頼するには、それなりの依頼料が必要となりますので…」

 困ったように答えるマーニャさん。


「…む、村に戻れば、マッドのお父さんが依頼料を払ってくれるはずです!マッドのお父さんは、コルム村の村長だから!」

「…それでしたら、一度、コルム村に戻って確認を取ってきていただければと思います。もしかしたら何かの理由で受験をやめて村に戻られたとも考えられますし…」


「い、今から村に戻ってたら試験が始まっちゃうじゃないですか!私たちで探します。も、もう頼みません!」

 きつそうな少女はそう言って立ち上がってギルドの出口に向かう。

「す、すみません。彼女も、いつもは…」

 もう一人の大人しそうな少女も、そう申し訳なさそうに頭を下げて、立ち上がって出口の方に向かって行った。


「ふぅ~」

 マーニャさんは、彼女たちが出て行ったのを見るとため息をついた。

 そして、顔を上げて周りをぐるーっと見渡していた。


 やり取りを見ていた俺達弥次馬は、慌てて目をそらす。


「あら。エルク君。良いところに」

 少し目をそらすのが少し遅すぎたのか、マーニャさんと目が合ってしまった…。


「エルク君。少し奥で話しませんか?」

 マーニャさんは、ニコリと笑顔でそう話しかけてきた。

 ここ数日、毎日冒険者ギルドに通っていた為、顔と名前はしっかりと覚えてくれたようである。

 普段なら、マーニャさんみたいな、美人なお姉さんに奥に誘われるなんて、誰もが羨むほどうれしい事なのだろうが、先ほどのやり取りを見た後だと厄介事を頼まれる気しかしない…。

 周りにいた弥次馬冒険者たちも、「頑張れよ」的な顔をしている。



「エルク君。さっきの女の子たちの話は聞いてたわよね?」

 奥の個室でテーブルを挟んで座った俺に、マーニャさんは聞いてくる。

「はい…途中からなら…」

 俺がそうあいまいに答えると、マーニャさんは、内容を説明してくれる。

 纏めると以下の様な感じである。


 先ほどの女の子2人と他に男の子3人の合計5人は、学園の入学試験を受けるためにコルム村という村からアルタインの街に向かっていた。

 途中、デルセアの町までは一緒だったらしいが、そこで喧嘩をして女の子2人と男の子3人は別行動になったらしい。

 デルセアの入り口で別れて、男3人が先にアルタインの街方面に向かうのは確認したらしいが、いざアルタイン街で男3人を探してみると発見できないので、何か事件に巻き込まれた可能性もあるので探してほしいとギルドに依頼を出そうと思い、先ほどのやり取りになったそうである。


 ちなみに、デルセアの町は、アルタインの街の北側にあり約10キロ程離れている。

 街道は、馬車も通れる程の道幅でほぼ一本道である。

 途中、小さな村へ向かう為の小道はあるが、道幅が全然違う為、道を間違えることはまず無い。


 街道のアルタイン側は、東西をそれぞれを『初心者の森』と『中級者の森』という二つの迷宮に挟まれてはいるが…あえて入り込まなければ道をはずすことは無いはずである。


「で、エルク君にお願いなんだけど…少し彼女たちの様子を見ていてほしいのよ。ギルドとしては他の依頼との兼ね合いもあるし彼女たちの依頼は受けられないけど…お姉さんの個人的なお願いとして。ね?もちろんタダとは言わないわよ」

 そう言って彼女は懐から中銀貨を1枚出して机に置いて差し出してきた。

 彼女のポケットマネーという事だろう…。

 中銀貨の価値は1,000メルクである。さすがにポケットマネーからそんなに貰うわけには行かない。


「…そ、そんなに受け取れません。様子を見るだけで良いなら見てきますよ」

 俺は、中銀貨を彼女の方に戻し、慌てて席を立つ。

 それに、1日、鍛錬をさぼって人探しを手伝ったとしても、はっきり言って弓の腕前はそんなに変わらない筈である…。


「そう、ありがとう」

 マーニャさんも立ち上がり、出口の扉の方へ向かっていた俺は通路を塞がれてしまう。


「でも…」

 マーニャさんは、俺の手を取り、改めて中銀貨を握らせてきたのである。

 俺は、マーニャさんの手のぬくもり感じドキドキしてしまう。

 はっきり言って反則である…。


「これは私からの気持ちだから受け取ってね。私はギルドの仕事があるから外には出れないけど、進展があったら知らせに来てね」

 マーニャさんが、なぜ少女たちの為に自腹をきってまで助けようと思っているのか、その理由はわからないが、俺は彼女の気持ちをありがたく受け取ることにした。


「じゃあ。お願いね」

 個室を出ていく俺に後ろからマーニャさんがそう言って手を振っていた。


 そんなに嬉しそうにされたら、適当にするわけにはいかない…。

 だが、まずはあの2人の少女を探さなければならない。

 既に、少女たちがギルドを出てから10分以上は経っている。

 いくら、住み慣れたアルタインの街とは言え、それなりに広い、探すのは大変である。

 俺は、どこから探すべきか考えながら、冒険者ギルドの出口へと向かった。

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