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28 訓練~襲撃

 ピーーーーーーー


 相変わらず、森の中を笛の音が響いていた。

 笛の音は、はっきり聞こえるようになったが、それでもまだ遠い。


 俺とセシリアは、昨日も訪れたクロウラーの巣に来ていた。

 ジャイアントクロウラーは、数匹いたが、50メートル以上離れているので、こっちから近づいていかない限り、絡まれる事は無いだろう。


「先生から連絡来ないな」

 セシリアは、心配そうにステータスボックスを操作している。

 まだ、先生は笛が鳴っている場所までたどり着いていないのだろうか?

 それとも、忙しくてチャットを送る暇がないのだろうか?

 とりあえず、全く連絡がないため、不安ばかりが募る。


「パーティー効果の制限を解除しとくから」

 それでも、セシリアは、いつ戦闘になってもいいように、落ち着いて準備をしている。

「ああ。どんな魔物が来たって、この矢があるからな。あっという間に倒してやるさ」

 俺は、矢筒から『雷の矢』を取り出した。

 戦闘になったら躊躇なく使う予定である。


「じゃあ。二人の愛の力を見せつけてやろうか」

 セシリアは、まだそんな冗談を言う余裕があるようである。


 パン!パン!


 その時、遠くで乾いた破裂音がする。

 あれは、クレア先生の魔石銃の音である。

 更に、パンパンと何度か、音が響く。

 どうやら、クレア先生が魔物と接敵したようである。


「連絡はあったか?」

 俺はセシリアにチャットがあったか聞く。

 だが、セシリアは首を横に振った。


「どうやら、チャットを返す余裕は無いようだな…」

「うん」

 セシリアは、頷いた。


 ピーーーーーーーー


 笛の音が近づいて来ているような気がする。

 誰かが、こちらに逃げてきているのかもしれない。


「行ってみるか?」

「いや。先生はここで待機するように言ってたからな、敵が来たらここで迎え撃とう」

 セシリアは、そう言いながら『異空間冷蔵庫』からバックラーを取り出していた。

 さすがに冷たかったのか、持ち手の部分にハンカチを巻いている。

「今度は、エルのところに入れといてもらおうかな…」

 などと言っている。


「緊急時には、わざわざ出せないだろうから、使うなら普通に装備してろよな」

「えー。だってこの盾かっこ悪いじゃん!もう少しかっこいいの見つけたら考えるよ」

 まだ、セシリアは余裕があるようである。


 ピーーーーー


 やはり、笛の音は近づいてきている様である。

 この先は、少し小高くなっている。さらにその奥は、昨日、魔石が大量に落ちていた場所である。

 おそらくあのあたりで戦闘が起こっている様だ。

 ここは初心者のダンジョンの為、そんなに強いダンジョンモンスターは居ない筈である。

 となると、一番最初に、思い浮かぶのは魔族…。

 南の森からこちらに移動してきている可能性も皆無ではない…。


 その方向を目を凝らしてみていると、一瞬、丘から突き出すように何かが見えた…。

 そして、丘の上の方で大きな音がする。木が倒されている様だ。


「あれは!?」

 巨人!?しかも角があるように見える…。

「オーガ!?」

 セシリアが、呟いた。

 オーガ…人喰い鬼。あれがそうなのだろうか?


 丘の上の木と比較してみると背の高さは…ゆうに7,8メートルくらいありそうである。

 その巨体が、木を押し倒して丘を下ってこようとしている。


 森の木が、邪魔してくれているおかげで、その速度は遅い。


 ピーピーーーーーー

 パン!パン!


 笛の音と銃声が更に近づいてくる。

 そして、奥へ続く道から逃げるように現れたのは、学園の生徒だった。

 その生徒を見てみると、武器を持っておらず、左手の制服が破れていた。

 怪我をしているようである。

 彼は右手に笛を持っていた、先ほどから笛を鳴らしていたのは彼なのであろう。


「逃げるんだ!」

 俺たちに気付き、その人はそう叫んだ。

 その男の後からも、男女2名の生徒が森から走り出てくる。

 彼らは、それぞれ弓と杖を持っている。


「セシル。こっちだ」

 俺は、その人達がこっちに逃げてくることを見越して、進路からそれて、狙いやすい場所に移動する。

 おそらく、オーガは、この先輩達を追っていくはずである。

 先輩たちは、何らかの理由で『帰還の水晶』が使えずに、走って逃げているのであろう。

 だが、このままいけば、安全な場所に行く前に、追いつかれてしまうだろう。

 ここでなんとか時間を稼がなくては…。

 俺達だけなら、『帰還の水晶』で街に戻る事も可能である。


 メキメキメキ!


 大きな音が響き、いよいよ、オーガが、木を倒して広場に入ってきた。

 オーガの身長は、やはり8メートルくらいあった。授業とかで聞いていたのよりかなり大きい。

 体は長い体毛に覆われており、特に防具は着ていないようである。


 オーガは予想していたより遠い場所にいた。

 それは、オーガが道を無視して、木をなぎ倒してショートカットしたからである。


 丁度近くにいたジャイアントクロウラーが、オーガに反応して、攻撃態勢に入ったように見えた。

 だが、オーガの方が反応は早く、ジャイアントクロウラーは、一瞬で蹴散らされてしまう。

 一ジャイアントクロウラーは、蹴り飛ばされた先で消え、魔石となった。


「せめて糸で動きを遅くしてくれればいいのにな…セシル。いくぞ」

 俺は、ゆっくりと『雷の矢』を構える。

 的は8メートル級の巨体だ、外すわけにはいかない。

 セシリアは、俺の首筋をそっと触ってくる。

 特殊効果の発動の準備完了である。


 オーガは、俺達に気付いていないので、ゆっくり狙いを定めることができた。

 大きく息を吸って、ゆっくりと吐きながら、矢に魔力を送っていく。

 そうすると、矢の先端、鏃の部分が光りはじめる。


 ビューーーン!


 俺が指を放すと、弓から放たれた矢が、音を立て回転しながら、オーガの方に勢いよく飛んでいく。


 命中!


 少し上の方を狙った為、オーガの背中近くに矢は命中し刺さった。

 それと同時に、光が走り、バーンという音とともに小さな煙があがる。


 オーガは、動きを止め、血の付いた顔をこちらに向けた。

 その血走った目と目が合ってしまった…。

 さすが定食一食分の矢、結構効いている様で、お怒りの様である…


 バン!バン!

 銃の音が響く。


「こっちですよ!」

 黒いドレスのクレア先生が、両方の手にそれぞれ一丁ずつの魔石銃を持って、オーガが木をなぎ倒した斜面を下りてきた。

 魔石銃の攻撃は命中している様だが、厚い毛のせいであんまりダメージは与えられていないようだ。

 それでも、オーガの気を引くためか、クレア先生は、移動しながら銃を撃ち続けている。

 素早く移動するクレア先生…普段からは考えられないほどのテキパキさである。


「セシル。次行くぞ」

 今度は、『氷の矢』を矢筒から取り出す。

 先生が気を引いてくれている内にどんどん攻撃してやる。

 セシリアの魔法もあるし。近づかれなければ、何とか出来るかもしれない。


 俺は、再び弓を構えて狙いを定める。

 先ほどは、少し早く撃ちすぎた感じがあったので、更にゆっくりと魔力を込めていく。

 クレア先生がうまく動いていてくれてるためか、オーガはこちらを見る余裕は無いようである。


 ビューーーン!


 再び俺の弓から放たれた矢は、オーガの背中に深く刺さった。

 オーガは、バランスを崩して片膝をついて、血走った目でこちらを睨みつけてきた。


 バン!バン!


 クレア先生が、魔石銃を撃つが、オーガの視線はこちらから外れることは無かった。

 どうやら本当に、オーガを怒らせてしまったようである。

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