23 訓練のはじまり~Bランク冒険者パーティー
「あ、ロリ先生来てたんだ!」
個室からギルドの受付に戻ると、そう笑顔を向ける女性冒険者がいた。
ロリ先生って…クレア先生の事か!?
「ティナさん!ロリ先生じゃないですよ~クレア先生ですよ~!」
クレア先生の方を見てみると、また、腕を上げて抗議している。
ティナさんと呼ばれた冒険者は20代前半くらいの黒髪のミディアムストレートのスレンダーな女性で、腰には長剣を帯びていた。
「お、本当だ。先生。お久しぶりです」
今度は、20代の槍を持った男の冒険者に挨拶されるクレア先生。
20代の人に先生って呼ばれるなんて、クレア先生っていくつなの?
「あ、フレッド君。お久しぶり~」
クレア先生は、ペコリと頭を下げる。
「あ、生徒と一緒なんですね」
「そうよ~こちら今年中等部を卒業したエルク君。こっちはBランク冒険者のフレッド君よ~」
俺の事に気付いてそう言うフレッドさんに、クレア先生が紹介してくれる。
「初めまして、エルクです」
「おー初めまして。この街所属のBランク冒険者のフレッドだ。こっちはパーティーメンバーのティナ、アルバート、マシュー、ロビー。それにガドフリーだ」
パーティーメンバー全員を紹介してくれる…。
なので、それぞれに挨拶をする。
男性5名、女性1名のパーティーの様である。
「俺たち全員、学園の卒業生でクレア先生の生徒だったんだぜ」
まじか!
学園を卒業すると大抵の卒業生は、王都に行くという。
その方が仕事も多く、ランクも早く上がりやすいからである。
アルタインの町に残るのは…学園での成績があまり良くなかった人と聞いたことがある…。
この街でBランクに上がるのは、かなり大変なはずである。
「エルク君。彼らが、以前、南の森に出来た新しいダンジョンを攻略し、そこにいた魔族を倒したパーティーですよ」
なるほど。あのパーティーか!
4年ほど前、南の森にダンジョンが出来ているのが発見された。
俺も、あの時の騒ぎを覚えている。
初等部だった俺たちは学園の外に出るのを禁止され、高等部のランク上位の学生が殺気立っていた。
結局、数日でダンジョンは攻略され魔族は倒された。
彼らは、その時のパーティーという事だ。
ちなみに後日つけられたダンジョンの名前は…マシューのダンジョン。
見つけた人の名前をつけたという話である。
そのダンジョンは、コアが今も見つかっていないらしくそのまま残っている。
地下ちょうど10階層のダンジョンは、今も高等部の学生の、訓練場所として使っていたはずである。
俺は、改めてマシューさんと紹介された人を見る。
この人が、ダンジョンを見つけた人という事だ。
マシューさんは黒いローブを着た黒髪長髪の男性だった。
手に古めかしい木のスタッフを持っている…魔法使いだろう。
「じゃあ、クレア先生も戻ってきたことだし、上の大会議室にいくぞ」
ギルドマスターのベルゼルト老が、そう言った。
それに続いて、神官の人、警備兵の人、冒険者たち、フレッドさんたちが続く。
で、俺も最後に続こうとしたとき、マシューさんが、こちらを見ている事に気付く。
何か用だろうか…?
その視線に気づいてか、クレア先生が、俺の方に向き直る。
「ああ、エルク君は、ここまでね~」
やっぱりな…結局、詳しい話は聞けないわけだ…。
マシューさんとクレア先生は、最後に階段を上っていく。
「また今度ね~」
クレア先生は、上から手をビュンビュン振っている…。
「ごめんなさい。エルクさん。今回の会議は、Cランク以上の冒険者だけが参加可能です」
マーニャさんが、そう説明してくれた。
「決定した事は、また明日にでも発表しますので、その時まで待ってくださいね」
「わかりました…では、これで失礼しますね」
マーニャさんに笑顔で言われたら仕方ない。
ゆっくりと、帰宅することにした。
セシリアから、まだチャットが来ていないが、だいぶ時間もたったし、そろそろ来るだろう。
俺は、冒険者ギルドを出てゆっくりと部屋に戻ることにした。
「そう…行方不明だった人…亡くなってたんだ…」
向かい側に座るセシリアがそう言った。
彼女は、既にクマのフロイデ君のパジャマ姿である。
俺が帰ったときは、既に彼女はパジャマ姿で、食事の準備をしていた。
今は、向かい合って夕食を食べている最中である。
「しかも、クレア先生の話だと犯人は魔族かもしれない、らしい」
「魔族!?」
「ああ、まあ、確定ではないけどな…」
狩人の人が首をはねられて殺されていた、とかそういう話はやめておいた。
なにぶん、食事中である。
せっかくの食事が不味くなってしまう。
「それで、クレア先生に、しばらく南の森に近づくのは禁止って言われたからな」
「…そう…魔族じゃ…仕方ないわね…」
「じゃあ、明日も『初心者の森』に行きましょ。一角ウサギくらい弓だけで倒せるようにならないとね」
「そうだな…」
セシリアもそう思っていたようだ。
確かに、弓で一角ウサギくらい倒せないとな…。
「それと、明日からはなるべくパーティー効果を消しておくから。そうしないと実力がわからないだろうしね」
「パーティー効果って消せるのか?」
「ええ。ステータスのところで反転させると、一時的に消せるみたい」
「そうなのか…」
何とも、至れり尽くせりなシステムである。
「まあ、しばらくは『初心者の森』で訓練することになるだろうから…なんとか、ウサギくらいは倒せるようにするよ」
「何言ってるの?フォレストウルフ。いや、フォレストベアくらい倒せるようにするわよ」
セシリアは、そんな事を言ってる。
フォレストベアって…もともとソロで倒すのが大変な魔物だろ!
「あと、なんかあった時は私がフォローするから、明日から基本的にエルが使えるのは弓だけだから」
本当にスパルタ方式で、俺を訓練してくれるらしい…。
だが、セシリアがいてくれてありがたい。
彼女がフォローしてくれなければ、魔物相手に弓の訓練なんてできないだろう…。
「ありがとうな。セシル」
俺は、率直にそう言った。
「なな、何言ってるんだよ。いきなり」
セシリアは、慌てたようにそう言う。
唾とかとんでるんだが…。
「だって、そうだろ、こんなにおいしい料理も作ってくれるんだしな」
「ば、馬鹿か。料理は当番制だろ!」
セシリアは、今度は、顔を赤くして怒り出す。
全く、忙しい奴である。
「まったく…変なこと言ってないで、早く食べろよな…今日はエルが片づけなんだからな…」
セシリアは、そう言って水を飲んだ。




