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22 訓練のはじまり~事件?

 俺は、街に戻ると、「着替えとかしたいから先に部屋に戻ってるから」というセシリアと別れて、一人で、冒険者ギルドへと向かった。

 なぜかと言うと、セシリアに「体とか拭きたいから、ちょっと外でぶらぶらしてきて」と、言われたからである。

 一応、その為に衝立とか買ってあるんだから、覗かない限り見えたりしないんだけどね。

 それに、一応、女神様的には夫婦扱いなんだから、多少見えても問題ないだろう。

 本人の前では、そんなこと言えないけど。


 冒険者ギルドに行く途中、神殿の前あたりで、南から戻ってきた街の警備隊や冒険者っぽい格好の人たちとすれ違う。

 彼らは、おそらくだが、南の森で行方不明になった狩人の捜索隊の人たちであろう。


 あまり、結果は良くなかったのかもしれない。


「あ、マルクスさん」

 俺は、知った顔を見つけて声を掛けてみた。

 マルクスさんは、主に南門で門番をしている40代のおじさんである。


「あ、エルクさん」

 いつもながら、学生の俺に対しても丁寧な口調でそう言い、立ち止まってくれた。


「マルクスさんも、行方不明になってた方の捜索に行ってたんですか?」

「まあ、それが仕事だからね…」

 御尤もである。


「見つかったんですか?」

「まあね…残念な結果だったけどね…」

 亡くなっていたのか…。

 まあ、森で命を落とすことは、比較的良くあることである…。

 学園の生徒も、毎年、何人かが、森やダンジョンで命を落としている。


「そうですか…」

「学園から通知されるだろうけど…調査が終わるまで、南の森への学生の立ち入りが制限されるかもしれないから、行かないようにな」

 マルクスさんは、まだ俺を学園の生徒だと思っている様である。


「俺、中等部を卒業したんですよ」

「あ、そうだったか。まあ、高等部を卒業するまでは、学園の生徒だからな。学園に通知されなくても、しばらく南の森に入るんじゃないぞ」

「…」

 まあ、普通なら自動的に高等部に入学できるはずなので、マルクスさんの認識は間違っていない…。


「わかりました」

 説明するのも、恥ずかしいので俺はそう答えた。


「でも…一体何があったんですか?」

「うーん。まあ、保険みたいなもんだよ。危険かもしれないから入るなってな」

 マルクスさんは、そう言葉を濁した。


「じゃあ。エルクさん。また今度な」

 マルクスさんは、そう言って、捜索隊の人たちを追いかけて、神殿の東側にある警備隊の本部の方に歩いて行ってしまった。

 なんか、中途半端な感じでモヤモヤだけが残ったな…。

 危険な魔物が出たのかな?

 それなら、明日にでも冒険者ギルドに依頼が出るかもしれない。

 流石に今日はまだ出ていないであろうが、まあ、今戻っても部屋に入れてもらえないだろうから、このまま行ってみよう。

 セシリアは、いろいろ終わったらチャットで連絡するって言ってたからな。


 冒険者ギルドに入ると、職員の人たちと冒険者達が何か話し込んでいた。

 いつも、ギルドに入ると聞こえるマーニャさん達受付嬢の「いらっしゃいませ」という明るい声もきこえない。

 やはり、南の森の件で忙しいのであろうか?


「あ、エルクさん。戻って来られたんですね」

 マーニャさんが、俺に気付いて声を掛けてくれた。


「すいません。今立て込んでまして…」

「南の森の件ですか?」

「ええ…まあ」

 マーニャさんは、言葉を濁す。やはり、何か強い魔物がでた様である。

 亡くなった狩人の人は、何か強力な魔物にやられていたという事だろう。


「エルク君。エルク君」

 誰かが、俺の後ろで服の裾を引っ張った。この声は…。

 後ろを振り返ると、赤いポニーテールがそこにあった。

 クレア先生である。


「まだ、いたのですか…?」

 思わずそう声が出てしまう…。もう既にあれから5時間は経っている。

「まだ、いたのではないのですよ。また、来たのですよ」

 怒ったように先生は頬を膨らます。


「…で、俺になんか用ですか…?」

「ちょっと、あっちの部屋まで顔をかすのですよ」

 そう言って、奥への扉を指さす。

 確かあそこは個室になっていて、パーティー単位で会議する時に使う部屋である。

 なんか秘密の話でもあるのだろうか?


「セシリアちゃんはどうしたのです?」

 クレア先生は、部屋に入るとそう聞いてきた。

 何故か、イスの上で立ちあっがっている…。

 だが、そのかわいらしい顔は、いつになく真剣である。


「あいつなら、先に部屋に戻るって帰りましたよ」

「そうですか…」

「いったい何があったんですか?」


「魔族が出たかもしれないですよ」

「魔族?」

 魔族…異界からの侵略者とも、魔物が進化したものとも、色々言われている謎の生物。

 奴らは、なぜかダンジョンを作成してその奥で暮らしているという。

 そして、彼らの王が、魔王…数年前に、アストリアというここより東にある国を一晩でダンジョンに変え、滅ぼしたという『風の魔王』が現在確認されている唯一の魔王である。

 最近では、新たな魔王が誕生したとか、変な噂も流れていた気がする。

 俺は、もちろん魔王どころか、魔族にも会ったことが無いので、その真偽のほどは全くわからない。


「そうなのですよ。南の森で行方不明になっていた方が、変な殺され方をしていたので魔族の仕業ではないかという話になって…忙しいのに、また先生が来ることになったのですよ」

 本当に先生が忙しいのかはともかく…いったい、魔族に殺されるとどんな感じに殺されるのだろう…。


「…どんな殺され方をしていたのですか…?」


「首チョンパなのですよ」

「首チョンパって…」


「人の首を刎ねるのなんて、人間と魔族くらいしかやりませんからね~」

「…でも、それなら山賊とか野盗とかかもしれないじゃないんですか?」

「う~ん。そこなんですけどね…野盗や山賊がわざわざお金の無さそうな狩人を襲うのかってところなんですよね~身ぐるみも剥がれてなかったようですし~」


「なるほど…」

 野盗や山賊にしては死体がきれいすぎるから、魔族の仕業かもしれないって事か…。


「で~先生が何を何でこんな話をしたかわかりますか~?」

「さあ…もしかして、俺達に魔族の捜索を協力しろって事ですか~!?」

「…そんなわけないじゃないですか~!学園の生徒はもちろん。エルク君たちもこの件が落ち着くまで南の森に近づくのは禁止なのですよ!」

 まあ、わかってました…。


「今から、Bランクのパーティーを含めての打合せがあるのですから…エルク君は大人しく帰って下さいね~」

「えーせめて話だけ聞くのはダメですか~?」

「邪魔になるからダメですよ~」

「邪魔しなければ良いですか~?」


「…なんで、先生のマネをするのですか~?」

 クレア先生は、イスの上で腕を上げて抗議する。

 結構、おもしろい先生だったんだな…別のクラスの先生だから知らなかった。


「…まあ。聞くだけなら良いですけど…終わったら大人しく帰るのですよ!」

 クレア先生は、トーンを落としてそう言った。

 まさかの、一応、聞く許可を貰えました。


「じゃあ、セシリアから、チャットも来ないので聞いていこうと思います」

 俺は、そう答えた。

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