19 思い出
そう、あれは俺がステータスを見れるようになった日である。
つまり、俺の8歳の誕生日である。
丁度その頃、東にあったアストリアという国が魔王によりたった1日で滅ぼされたというニュースが、国中を駆け巡っていた。
だが、その頃の俺は、そんな国際的に重大なニュースよりも、他の事で頭がいっぱいだった。
少し前に仲が良かったフィーナちゃんが引き取られ、孤児院からいなくなってしまったのだ。
セシリアも含めて、俺たち3人はいつも一緒に遊んでいた。
あの当時、セシリアは、セシルと名乗っており、髪の毛も短く刈り込み、男の子のふりをしていた。
まあ、注意すれば、セシルが女の子であることに気付くチャンスはあったのだろうが、少なくとも俺は気付いていなかった。
そして、あの日、孤児院の窓から外を眺める俺を、セシルは怒り、共に、自分の素性を告白してきたのだ。
自分が女の子であり、今までは、男の子のふりをしてきたが、その必要が無くなったと。
更に、「女の子であるボクが、フィーナちゃんのかわりに、ずっとそばにいてやるからクヨクヨするな」と。
俺は、もちろん「こんな丸坊主の口の悪い奴が、女の子のわけがないだろ」と、疑った。
その言葉に、怒ったセシルは、「証拠を見せてやってもいいが、その場合はちゃんと責任を取ってもらうからな」と、言ってきたのだ。
そこで、その責任の担保として出てきたのが、セシルの母親の形見だという『女神の儀式全集』の中から、見つけた一つの儀式である。
その儀式の名が、「婚姻の儀」だったはずである。
二人とも、その時、儀式の意味はそんなに深く考えていなかったと思う。
ただ、それっぽい事をして、「これで約束破ったら、女神さまの罰があたるからな!」とか言いたかっただけであろう…古臭い儀式なんて、子供にとっては、お遊びの一環である。
しかし、あの日は、俺のステータスが見えるようになった日であり、俺の真名がわかった日でもある。
真名は、ステータスに表示されるのである。
「せっかく、お互いに真名がわかるようになったんだから。ちゃんと、この本の通りに行うぞ」とか、セシルが言っていたのを覚えている…。
――そして、現在。
結婚って…俺が、こんなにかわいくなったセシリアと結婚していることになっているとは…どういう事?。
「昔、ほらエルが、私の事を女の子だと知って、結婚したいって言ってきた時、仕方なく儀式をしたのを覚えてるだろ?」
「…なんか。俺の記憶と少し違うが…儀式をやったのは何となく覚えてるよ…」
断じて、あの頃の丸坊主で口の悪いセシルに、そんなこと言ってないからな!
「あの時やったのが、「婚姻の儀」ってやつで、それが、「永遠の誓いの儀」のひとつなんだ。ちょっとまって、今見せるから、ステータスオープン」
彼女は、ステータスを操作して俺に見えるようにする。
現れたステータスボックスには、既に守護者のスキル効果が表示されていた。
片手剣A 片手昆A 盾A 防御力アップ 状態耐性アップ
パーティー効果(1/5) 防御力アップ(15%) 魔法防御力アップ(15%)
特殊効果 永遠の誓いを行った者(1/1)と接触していた場合、お互いの能力値を100%アップする
「これで、こーやって、タッチすると更に細かくみれるんだけど…」
彼女は、パーティー効果の『(1/5)』の箇所をタッチした。
『パーティーメンバー エルク』
と、表示される。
「で、ここからが本番なんだけど…」
彼女は、『戻る』を押して、今度は永遠の誓いを行った者の『(1/1)』をタッチする。
『婚姻 ベルド・グレイシス』
と、表示される。
「…」
一瞬、誰?と思ったが…、俺の真名だった…ちなみに、ステータスには、名前、表示名、真名がある。
通常、ステータスに表示されるのは表示名である。
真名は、他人には知られてはいけないとされている…呪いの儀式などに使うこともできるからである。
「ね?」
「…セシル。お前。あの儀式は、今は廃れていて意味が無い儀式だって言ってただろう!?」
「そ、それは…私もあの時はそう思ってたんだよ。あの時はまだ結婚なんて良く知らなかったし!」
「良く知らなかったって…」
まあ、俺も、男と女の人が一緒に暮らす事くらいにしか思ってなかったけど…。
「で、どうするんだよ…キャンセルとか出来ないのか?」
「キャ…キャンセルって、エルは永遠の誓いを何だと思ってるんだ。永遠の誓いなのに、そう簡単にキャンセル出来たら永遠の誓いじゃなくなるだろ?」
「まあ。確かに…」
「それに、例えキャンセルできたとしても、守護者スキルの特殊効果の対象は最初のひとりだけらしいから。意味無いんだよね…」
「…そうなのか…って、そういう事を言ってるんじゃないだろ?俺とお前が結婚って、お前はそれでいいのか?」
「それは、まあ、元々、ずっと一緒にいるって約束だしな…別に、いいんじゃないかな?…それより、エル。いきなり『お前』なんて呼ぶなんて…そんな呼び方、まだ許してないぞ…」
そんな事をいいながら、セシリアは、頬を赤らめている。
「…まあ。冗談はこれくらいにしといて…」
って、冗談だったのか?
「…結婚とは言っても、形式的なものでしかないからな。ほら、どっかの王族なんて、守護者や守護騎士スキル持ちの他に何人とも結婚しているだろ?」
「…そういえば…、確かに、それなら大丈夫か…」
王族はそんな金があって、いいな…。
「…『大丈夫』って、エルは結婚する予定の相手が居るのか!?」
「な…そんな相手、居るわけないだろ。言葉の綾だよ。言葉の!」
「…そうか、じゃあ。問題ないな。それに『婚姻の儀』を結んでいるって事は、私のステータスを見なきゃ。バレないだろうしね。」
そうか確かに、彼女のステータスを見なきゃ、わからないはずである。
「あ、でも。結婚しているからって、変なことしようとしたら切り落とすからね。許可するのは、昔の様に『普通に』一緒に寝るところまでだからな」
「…『普通に』一緒に寝るのは遠慮します…」
一緒に寝たら切り落とされる自信があります…。
「ふーん。まあ、一緒に寝る寝ないは、任せるわ…じゃあ。そう言う事で、明日からは私のスキル実験に付き合ってもらうからね!色々、試してみたかったのよ」
もしかして、最近、セシリアが馴れ馴れしいのは、スキルの実験をしたかっただけなのか…?
俺が寝てる間に、俺に触れて変な実験していたんじゃなかろうな…。
なんか、寒気がしてきた…。
「『いちおう』言っておくが…明日からするのは俺の訓練だからな…」
「そんなの、わかってるわよ…エルには、頑張って合格してもらわないといけないからね」
ちゃんとわかっていてくれて良かった…
「…だって、もし、エルが合格できなかったら、私も学園やめないといけなくなっちゃうからね!」
「…頑張ります…」
俺は、再び床の拭き掃除に戻った。
これ以上、下手にツッコミを入れても、話が長くなるだけである。
それにしても、やっぱり、セシリアは、セシリアだな…。
学園では、猫を被っているのだろう。
昔、男の子のふりをしていたことを考えれば、余裕で猫ぐらいかぶれるだろう。
可憐で凛々しいからお姫様と呼ばれているとかありえない…。
「あ、エル。雪だよ!」
突然、セシリアが嬉しそうに言った。
窓の外を方を見ると、チラチラと白いものが落ちてきていた。
新居での初めの夜は、いろんな意味で寒くなりそうである。
そろそろプロローグ的なところが終わったので、一回、読み返して、少しでも読みやすくなるように直していきたいと思っています…
更新は、出来るだけとめないように頑張りますので、今後ともよろしくお願いします。
あと、ブックマークありがとうございます!




