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12 みんなでパーティー

「ちょっと、出てくる」

 俺は、そう言って席を立ちあがった。


 俺たちの6人掛けの入り口近くのテーブルには現在3名しか座っていなかった。

 やはり、話したい相手の近くに行こうと席が埋まっていったため、入り口近くで最も主賓から遠い俺たちの席には、俺とザック、そして、遅れてきたネリファという隣のクラスの少女が腰掛けているだけである。

 俺達3人は、ドリンクを片手に注文したポテイトフライやデルト豆をつまんでいた。他の二人はサラダやスープを頼んでいたが、俺は一応セシリアが来る予定だったので彼女に合わせようとそれらは注文していない。

 デビッドはというと、前の方に行って、場を盛り上げようと奮闘している所であった。


 俺が店を出ると、店の入り口から少し離れたところにセシリアが立っていた。

 セシリアは、制服姿ではなく、デニム生地のズボンに白っぽいチェニックに紺のカーディガンを羽織った格好であった。姫と呼ぶには遠い格好である。

 この時期にしては少し寒そうな格好であったが、彼女の顔は赤くなっていて汗をかいてるようであった。走ってきたのだろうか?

 俺は、セシリアからの『来た。店の前にいる。』という短いチャットを受け取ったので店の外に出たのでる。

「エル。ちょっと、異空間袋出して」

 近づいた俺に彼女はそう言った。

 俺は言われたまま、ステータスを開き異空間袋を出す。

 セシリアの方も、なにやらステータスを操作している様である。

 すると、俺の異空間袋と同じような黒い四角い穴が現れた。

「!?」

「これそっちに入れといて」

 セシリアは、四角い穴から包みを出した。その包みをうけとる。その包みはこの寒さの中にあってもはっきりわかるぐらいひんやり冷たかった。

「おま。それ?」

「異空間冷蔵庫よ。料理人スキルにおまけでついているの。エルの異空間袋と同じような感じだけど、中に入れたものは冷えるし、容量が少なめなのが難点ね」

「…」

「まあ冬場に下着冷やしてもしょうがないからね」

 と、彼女は笑って言う。どうやら渡されたのは下着を入れた包みの様である。

「まだあるんだから、どんどん入れてって」

「ああ」

 俺は、彼女に言われるまま。包みか服とか小物を異空間袋に入れていった。

 容量が少ないと言っていたが、結構入っているじゃないか…。

 料理人スキルのおまけで、異空間袋と同じようなものがあるなんて…なんか納得がいかない…だがそれが、AランクとCランクのスキルの差なのだろう………

「じゃあ。行きましょ…でもそんな集まりがあるなんて全然知らなかったわ…」

 一通り、荷物を俺の袋に移した彼女はそう言った。

「なんか、セシルも誘おうとしたらしいが、見つけられなかったらしいぞ」

 一応、仲間外れにされたわけでないことをさりげなく言っとく。

「うーん。今日は、午前中は職員室とかに呼ばれていたし、午後は、寮に籠って掃除とかしてたからね…ティカも早々に実家に戻っちゃったし。あんまり人に会ってないかも」

 と、納得したようだ。

 彼女を連れてそのまま一緒に店に入る。

「…頑張ろうと思いますので…」

 店の中では、モモカが顔を赤くしながら前に立って何かしゃべらされていた。一応、みんな静かにモモカの方を見ている。

 店に入った瞬間、唯一こちらを向いているモモカと目が合ったような気がするが、そのまま静かに席の方へ移動する。

 別に前へ行く必要もないので、俺はそのまま入り口近くに席に戻り、セシリアも一緒に俺の隣に座った。

「よろしくお願いします」

 モモカが話し終えて、一同から拍手が起こる。俺はよくわからないが同じように合わせて拍手をした。隣を見るとセシリアも同じように拍手をしている。

「続きまして、我らが英雄ベルト君に一言いただきたいと思います」

 と、進行を続けるデビッド。ベルトは、仕方なさげに立ち上がりゆっくりと前は向かおうとする。

「何飲む?」

 その隙に俺は、定員さんに目で合図をして、セシリアに聞いた。

「じゃあ。アプレのジュースを…」

「かしこまりました」

 来た定員に小声でそう言った。

「なんか。自由に頼んでいいらしいぞ」

 俺はメニューを開いてセシリアに見せる。彼女は覗き込むようにメニューを見ている。

「あ、セシリー」

 前を向いていたネリファがセシリアに気づいて小さく声をかけてきた。

「ネリファ。こんばんは」

「お。姫。こん」

 前を見ていたザックも気づいてそう話しかけてきた。隣のクラスではセシリアの事を女性陣はセシリー、男性陣は姫と呼んでいるのだろうか?

「ああ。ザックも来ていたのか。エルに変な呼び名を教えたのはお前だったんだな」

 セシリアは納得したように言う。姫と呼ばれるのは、やはり気に食わないらしい…。

「改めて言うが、私の事はセシリアかセシリーで頼む。姫なんて呼ばれると、貴族の連中に絡まれるからな」

 と牽制する。

 ただ、一度広まった呼び名はなかなか消えないと思うけどな。俺は、初めてセシリアに会った時、セシルって名乗られたから、今だって直接呼ぶときはセシルのままだしな。

「お待たせしました」

 アプレのジュースを先ほどの定員さんが持ってきた。

「すいません。注文良いですか?」

「はい」

「本日のサラダを2つとスープ2つ。後、おつまみフライを一皿お願いします…セシル他に何か頼むか?」

 勝手にセシリアの分も頼む俺。俺もお腹がすいているのである。

「うーん。根野菜の大イノシシベーコン巻き…エル達もいる?じゃあ2皿。あとドリンクは?」

 他の2名にセシリアが聞いた。二人は、突然、振られて少し驚いたようだがまだドリンクが半分くらい残っていたので首を横に軽く振っていた。

「じゃあ。以上でお願いします」

 俺が言うと、店員さんは、注文を繰り返し確認して戻っていった。

「…そのセシリーとエルクさんって、仲が良いんですね」

 と、ネリファさんが目をキラキラさせて聞いてきた。彼女は、小柄で髪の毛も肩くらいまでで少し幼く見える。制服姿で目を輝かせる姿は、まるで夢見る少女の様な雰囲気である。

「それは…エルと私は同じ孤児院で育った家族みたいなもんだからね」

 セシリアは、普通にそう言ってのけた。まあ別に隠してもしょうがない事ではある。

「まあ腐れ縁ってやつだな」

 俺はそう続けたが、セシリアに足を踏まれた。

「そうなんですか…でも、小さいころからずっと一緒何てステキです。憧れます」

 ネリファさん、なんか変な方向に考えが言ってる気がする。

「一緒って言っても、今は別クラスだし寮も違うわけだから全然会ってないぞ」

 俺は一応そう釘を刺しておく。変な噂を広げられたらたまらない。

「まあそうね。帰省する時はいつも一緒だけどそれ以外はなかなか会えなくてね。まあ、高等部に入ったら一緒にパーティー組む予定だから、今よりも一緒にいれると思うんだけど…」

「そ…そうなんですか!」

 また、ネリファさんが目を輝かせてるじゃないか。

「いや。多分一緒のパーティーになれないと思うぞ。セシルはSSランクスキル持ちだしな…」

「そ、そうなのか!?」

 今度は、セシリアが反応する。

「だって、普通に考えたら学園はSSランクスキル持ち同士をパーティーにしようと考えるんじゃないか?」

 それに俺はCランクスキルしか無い。無事、入学試験を突破できたとしても、素直にSSランクスキル持ちと一緒のパーティーにしてくれるとは思えない…。

「でも、約束が…」

 そう言って、セシリアは難しい顔をする。いくら約束があっても、学園に決められたら従わないわけにはいかないのである。彼女は、高等部に行ったら自由にパーティーを組めると考えていたのであろう。

 少しの沈黙。

「…僕もがんばりますのでよろしくお願いします」

 ベルトが、話し終わったようで拍手が起こったので、俺達も、拍手をする。

 その後も、今度はSランクスキルを取得したという隣の組のトーマスという男子生徒が前へと呼ばれる。

 まだまだ、先が長そうである。


「おーっと、ここでもう一人のSSランクスキル取得者セシリア嬢が到着したようです」

 一通り進行を終え、一旦、このテーブルに戻ろうとしたデビッドがセシリアが座っていることに気づきそう叫ぶように言った。

 すると生徒の視線が俺たちのテーブルのほうに向く。

 タイミング悪く、ちょうど運ばれてきていた熱々のおつまみフライを口に入れたところだったセシリアがゲホゲホとむせる。

 俺は、彼女の背中をさすりながら飲み物を渡したのだった。

 今度の、生贄はセシリアの様である。


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