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11 パーティーとパーティー?

 『本日貸し切り』


 森の恵み食堂の入り口には、その看板が掲げられていた。

 中に入ると、予想以上の生徒たちでごった返していた。制服を着ている者、私服姿の者様々であるが、同じクラスの者だけではなく隣のクラスの者もいる。

 パーティーメンバーだけの集まりだと思っていたので、入り口を入ってしばらく立ち止まっていた。

「よう。エルク。来たか」

 そう言いながら近づいてきたのは、デビッドである。彼の後ろにはもう一人いる。確かその男は隣のクラスでセシリアと同じパーティーでザックという名のはずである。

 俺は、セシリアも居るのではないかとすばやく見回したが、一見した感じだと見当たらなかった。

「500メルクになります」

 デビッドは、そう言って革袋を広げた。

 どうやらそこにパーティーの参加費を入れればいいらしい。

「1,000メルクギルド紙幣しかないんだが…」

 俺は、財布を広げて中身を見たが1,000メルクギルド紙幣しか持っていなかったので、それを出して見せた。

「じゃあ。500メルクのお釣りだな。紙幣と硬貨のどっちがいい?」

 そう言いながらデビッドは革袋をあさる。

「硬貨にするかな」

 多少重くかさばるが硬貨の方が使い勝手が良い。

 俺は、デビッドが革袋から出した小銀貨5枚を受け取り、かわりに紙幣を1枚渡した。デビッドはそれを革袋に入れる。俺も、硬貨袋に銀貨を入れた。

「デビッドが幹事をやってるのか…?」

「そりゃ。せっかくパーティーメンバーから2人もSSランクスキル持ちが出たんだから、祝ってやろうと思ってな。それなのにお前は行方不明だし、ルミナスはへこんで武器屋を回ってるし、ミーナはもともとこういうのは向いてないしな」

「行方不明って…」

 俺はそんな扱いだったのか…。まあ確かに昨日は寮に戻らなかったし、今日もなるべく人と会わないようにしていたからな。

「それにしてもすごい人数だな」

「そりゃあ。SSランクスキルだしな。今のうち仲良くなって、高等部になったらパーティーを組みたいと思っているんだよ。少し、声を掛けたら一気にこんなに集まっちゃって、急遽貸し切りだよ」

「…そっか。確かにそうだよな」

 SSランクスキル持ちがいるパーティーは有名なパーティーばっかりである。そのパーティーのメンバーになれば将来メリットも多い。

 デビッドの言葉通り、モモカとベルトがいるそれぞれのはテーブルは既に埋まっていた。その隣のテーブルも埋まっており皆が二人のテーブルの様子をうかがっている。ざっとみて40名近く集まっている

「他の二人もいたらもっと盛り上がったんだろうがな」

 俺はエルク達と出口近くの席に腰をかけた。

「無理だって。姫はともかく、貴族勇者殿は声をかけたって『庶民の集まりに何で僕が参加しないといけないんだ』とか言って、こんな所に来たりしないさ」

 姫に貴族勇者?

 姫って…もしかしてセシリアの事か?そんな恥ずかしい名前で呼ばれているのか…それとも…

「ティカがいれば姫に声をかけてもらったんだが、今日実家に帰るって言ってたからな。姫も今日会わなかったし帰省しちゃったんじゃないかな」

 ティカというのは確かセシリアと同部屋の女の子である。

 やはり、姫というのはセシリアの事をさしている様である。

「そう言えばエルクは姫と同郷じゃなかったか?」

 デビッドが聞いてくる。

「そうなのか?」

「ああ。姫っていうのが、セシ…リアさんの事だったら同郷だよ」

 そう言えば、セシリアとはクラスが別になって以来、学園内であまり話をした記憶がない。

 帰省する時も、寮は別なので学園の外で待ち合わせした方が早いという事で待ち合わせも外でしていた。

 その為、昔から俺たちの事を知っている人以外、俺たちが同郷であることを知らないかもしれない。

「やっぱりそうだったよな。お前が行方不明じゃ無ければ、頼んだんだけどな」

「なんならチャットで聞いてみるか?」

 パーティーを組んでいるので、チャットで聞くのぐらいたやすい御用である。

 チャットというのは、パーティーメンバー同士が、約半径1キロメートルの範囲にいれば、メッセージを送れるという女神さまの恩恵の一つである。

「…?」

 デビッドとザックが俺の顔を見ていた。

「…あ」

 なんかまずったか?別にセシリアとパーティーを組んでいる事を内緒にしている必要は無かったが…

 それとも、姫なんてへんなあだ名で呼ばれているから、あいつ、また、何かやらかしていたのか?

「…あれだよ。地元が一緒だから明後日から一緒に帰る約束をしていてな…色々便利だから、仮にパーティー組んでいるんだよ」

 俺は、慌てて事情を説明する。入学試験を受けなくてはならなくなり、一緒に帰れなくなったが、元々パーティーを組んだ理由は間違っていないはずである。

「そっか。エルクは隣のクラスの女の子にまで」

 うんうん。と、笑顔で頷くデビッド。なんか変な事を考えている様である。

「なんだよ…で、どうするんだ?断られるかもしれないけど、声をかけるだけならやるよ」

 まあ、断られる可能性は少ないだろうが、一応牽制しておく。

「じゃあ。よろしく頼む」

「本当に断られるかもしれないからな…ステータスオープン」

 俺は、ステータスウィンドウを開き、『パーティーメンバー』『セシリア』とタッチする。『メッセージを送る』もタッチして、文字を打ち込んでいく。

『姫、森の恵み食堂でパーティーやるんだけど来れないよな?』と、今聞いた呼び名を使って、送信した。

 『来れないよな?』と、したのは、なんか来ないほうが良い様な気がしてきたからである。

「送っといたよ」

 そう言って、俺はステータスを閉じた。待っていましたとばかり、デビッドがニヤニヤしながら口を開こうとした。

「そ、そういえばセシ…リアさんは、なんで、姫なんて呼ばれているんだ?」

 俺は、先手を打ってデビッドに聞いた。

 セシリアは、俺と同じで孤児院育ちである。普通なら姫などというあだ名にはならないはずである。そもそも、セシリアにとっては避けたい呼び名の筆頭じゃないだろうか…

「そりゃ…」

 と、デビッドはザックの方を見る。

「それは、セシリアさんが貴族のお姫様の様に可憐で凛々しいからじゃないかな?」

 などとザックは言う。お姫様のイメージが偏っている気がするが…

「可憐で凛々しい?」

「ああ、クラスの人気投票でも1位だったんだぜ。その上SSスキル持ち何て…今後はお姫様とか女神様って呼ぶしかないな」

 となぜか得意げに言うザック。

 まあ、確かに、俺も、自分のスキルが残念な結果じゃ無ければ、パーティーメンバーからSSランクスキル持ち出たことを自慢していたかもしれない。

 とりあえず、セシリアが可憐で凛々しいというのは、少し疑問だが。嫌がらせで姫なんて呼ばれてるんじゃなくて良かった。

「あいつ、どこかの姫様のようにお高くとまってるから姫ってあだ名なんだぜ」なんて説明受けてたら、チャットを送ったことに後悔しているところである。

「あ」

 俺は、端の方にメールのマークが点滅していることに気づく。早くも返信が来たようである。

「ステータスオープン」

 俺はさっそくステータスを開き確認する。

『行けたら行く。けど、今度その呼び名で呼んだら、エルの恥ずかしい呼び名学園中に広めるから』

「…」

 恥ずかしい呼び名って…。

「で、どうだった?」

「行けたら行くだってさ」

「そっか。期待して待つとしよう…それにしても…」

 デビッドの言葉を遮って俺は立ち上がった。デビッドに捕まると話が長くなりそうだし、まだ、2人におめでとうを言ってなかった。

「そうだ、モモカ達に挨拶してくるよ」

 俺は、素早くモモカのいるテーブルに向かった。


 俺がモモカの方に近づいてみると、酒も飲んでいないはずなのに、モモカの顔は少し赤くなっていた。

 こういう場に結構なれているイメージだが、さすがに代わる代わる話しかけられている様で疲れたのであろう。

「モモカ。おめでとう」

「あ。エルク」

 隙を見て声をかけた俺に彼女は制服を正しながら立ち上がった。

「あんま。スキル良くなかったんだって…?」

「ああ…、まあな」

「でも、エルクならきっと大丈夫よ!それに、もし何かあったら私も付いてるからね」

 モモカは、ガシっと俺の手を握り明るく言った。

 彼女は結構男子相手でもこういったスキンシップを普通にしてくる。

 何人か勘違いして撃沈した先輩や同級生を見てきた…。

 それにしても、おめでとうを言いに来たのになんだか励まされてしまった…。

「ああ、ありがとう。なんかあった時は助けてくれよな」

 俺がそう言うと彼女は更ににこりと笑った。

「じゃあ。ベルトにも挨拶に行ってくるからまたな」

「うん…」

 彼女は、少し寂しそうな顔になったが、他の人に話しかけられ、また笑顔に戻っていた。

 人前で手をガシっとするから、周りの男子からの視線が厳しい…まあ長くパーティーを組んでいるのでこういった勘違いな視線には慣れているが…

 俺は、ベルトのテーブルに素早く移動した。


 驚いたことに、女子に結構囲まれている。案の定、ベルトは緊張でか尋常ならない汗を流している。デビッドの気遣いだろう。ミーナを隣に配置して他の女生徒とのクッション代わりにしている。

 ミーナはというと、つまらなそうに爪をいじっていた…。

「よう。ルームメイト」

 俺は後ろから、ベルトの肩を叩いた。汗で制服の上着まで湿っていた。

「エルグくん…」

 泣きそうな感じで俺の方に振り替えるベルト。右手にはタオルを持っていた。

「よかったな。おめでとう」

 俺は、ベルトの耳の近くでそう言った。

「うん。ありがどう。これもエルクくんのおかげだよー」

 俺のおかげなんてことは無いだろうが、ベルトはそう言って答える。

「これでモテモテ街道まっしぐらだな。俺もモテモテ街道に乗りたかったよ」

 と、小声で耳元で言う。あんまり、周りの女子に聞かれてもよろしくない。

「な…何を言ってるんだよー」

 モテモテ街道に反応して、顔を赤くするベルト。さすがに隣にいたミーナには聞こえたのであろう、視線が…。

「じゃあ。また後でな」

 俺はそう言って退散する。


 入り口近くのテーブルに戻ろうとする俺と入れ替わりでデビッドが前に出てくる。

「えー。それでは時間になりましたので、『ベルトくんモモカさんSSランクスキル取得おめでとう会』を開催したいと思います。まずは、みなさんドリンクが無い人はドリンクを頼んでください。あと注文はテーブルごとにお願いします。頃合いをみてテーブルチェンジも考えておりますので、みなさんよろしくお願いします。あと、一発芸など披露したい方もいれば、後で言ってください」

 デビッドがそう開催の挨拶を始めたのであった。

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