② 幕間
「もーなんなのよ!あのお子様は!」
「まあまあ」
北方の高地、人があまり来ない山の頂上付近の大きな穴の中に白い竜と小さな妖精はいた。
「久しぶりに召喚されて動けないでいるうちに居なくなるし、先回りして華麗に自己紹介しようとしたらスルーされるし。もー頭に来たから、家出よ家出!」
甲高い声でまくしたてているのは小さな妖精である。
「それにしてもポチはまだこんな寒そうなところに住んでたのね。ここがシロの領域限界に最も近い場所って事?」
「それもありますが。私が山を下りて行けば騒ぎになりますからな…大人しくしている方が良いんですよ…それにしても、クロ様。召喚主からこんなに離れても大丈夫なのですか?」
「そりゃ。大丈夫に決まってるじゃない。私は自由よ!」
「いや…そういう事では無くて…ほら、クロ様は、その召喚主の魔力を借りて実体化しているわけで…あまり召喚主から離れると召喚主に負担がかかるのでは…」
「だいじょうぶよ!あのお子様、ステータス値だけは立派だったから。それに、あまり負担を掛けないように、ちゃんと小さくなってるじゃない」
そう言って、妖精はクルリンと回転して見せる。
「そうですか…」
「ポチ。わたしだって、ちゃんと学習するのよ。100年くらい前、ここに来る途中で召喚主が衰弱死しちゃって、強制送還されちゃったからね。同じ轍は踏まないわ」
「…そんな事があったんですか…」
「それにねー。今回のお子様にはちゃんと加護も与えてきたし…バッチリヨ!」
妖精は親指を立ててウィンクする。
「ねえねえ聞きたい?わたしがどんなスキルを与えたか!」
「…ええ、まあ…」
「えー。ただ教えるのツマラナイからアテテヨー」
「…はぁ~。まずは、『女神召喚』じゃないですかね…」
「そっ、そんなのアタリマエじゃない。じゃなかったらわたし。ここに居ないでっしょ!他の2つのスキルを当てろって言ってるの!ポチは馬鹿なの!?」
妖精は、クルクル竜のまわりを移動する。
「…じゃあ、『勇者』ですかね…?」
「はい。ブッブー。わたしがあんな器用貧乏なスキル与えるわけないじゃない。な・に・が、すべての武器スキル、魔法スキルAよ。そんなのカスよカス。所詮AはA。Sには勝てないのよ!」
「…そうですね」
「ポチ。あと2回間違えたら、デコピンだからねデコピン!」
「デ、デコピンって、普通のデコピンですか…?」
「デコピンはデコピンよ。威力は、まあポチなら、頭堅そうだから頭蓋骨骨折で済むと思うわ。フフフ」
「そ、それは危険そうです…。せ、せめてヒントを下さい。ヒントを」
「ヒント…ヒント…そうねえ。両方ともSSランクスキルよ…あー。これちょっとヒント出しすぎちゃったかも!」
「…そうですかね…それより、クロ様。少し休憩をなされたらどうですか…長旅してきたことで、ハイになってるというか、久々に召喚されたことで舞い上がってるというか…こちらに、フェアリードラゴンが取ってきた甘い花の蜜もありますので…」
「あ、あまいですって!そ、そうね…でも、いくら私が今妖精サイズになってるからって、花の蜜だけなんて事は無いでしょうね…?実際は、妖精じゃないんだから、に、肉とかだって食べる事ができるんですのよ…オホホ」
「そ…そうですね。配下の者たちに色々おいしいものを取ってこさせますね…」
「そう…では、少し休憩にしましょうかね。おいしいもの。き・た・い、してますわよ」
妖精は、そう言いながら、白い竜の頭に腰掛けたのであった。




