10 冒険者ギルド
学園長室から出た俺は冒険者ギルドへと向かった。
結局、あれから入学願書や誓約書やらを書かされて既に夕方近くになってしまっている。
そろそろルミナスから聞いたパーティーに行かなくてはいけない為、少し急がなければならない。
とは言っても冒険者ギルドは、学園の南門のすぐ近くにあるためそんなに時間はかからないはずである。
アルタインの街では、聖アルタイン学園と冒険者ギルドは親密な関係にある為、あえて近くに造られているのだ。
冒険者ギルドは、学園に手頃な依頼をまわし、学園は生徒にその依頼を教育の一環として解決させて、報酬を得ているのだ。
もちろんその報酬は、学園の運営費用や生徒のお小遣いに回される。
(そう言えば、どうせ森に行くなら、依頼見てから行けばよかったな…)
すっかり忘れていた。
何だかんだで、俺は、貰ったスキルの効果を早く試してみたいという事で、朝から頭がいっぱいだったのだ。
その為、冒険者ギルドに朝寄って、ついでに出来る依頼が有るか確認する事をすっかり忘れていた。
うまくいけば、良い小遣い稼ぎになったかもしれないのに…
はっきり言って、俺達学生は貧乏である。
卒業祝いで貰った10,000メルクの内、今日弓矢を買うのに2,800メルクを使ってしまっていた。
へそくりも合わせても12,000メルク程しか手元にない。
12,000メルクでは一カ月過ごすのもやっとである。
今日もパーティーで1,000メルクくらいは支払うのを覚悟している。
そう考えると、大イノシシの素材を高く買い取ってくれることを祈るのみである。
「いらっしゃいませ」
俺が、冒険者ギルドに入ると女性の声が店に響いた。
ギルドの受付のマーニャさんである。
いつも元気な高い声が特徴である。元々、学園の卒業生らしく学生にいろいろ良くしてくれる。
「こんにちは。マーニャさん」
「おや…エルク君だったか」
一瞬、間が開いたが、俺の顔を思い出してくれたようである。
まあ、そんなもんである。冒険者も学生もいっぱいいるからな。
「すみません。買取りをお願いしたいんですけど」
俺は、少しショックを受けながらそう言った。
「買取りですか?」
「大イノシシを退治したので、買い取ってもらおうかと…解体して店に持っていけば良いのかもしれないけど、その手間とか時間とかが無いのでお願いします」
「大イノシシですかー?現物はどこにあります?」
そう言って、マーニャさんはギルドの入り口の方を見る。外に置いてあると思っているのであろう。
「えーと、ここで出してもいいですか?」
「?」
「ステータスオープン」
俺は、ステータスを開く。
「俺、異空間袋手に入れたんですよ…まだ、使い方が良くわからないんですけどね」
「ああ」
マーニャさんは納得したように言う。
「それはおめでとうございます。それだったら、奥の作業部屋で出してもらった方が楽かもしれないな」
「作業部屋ですか?」
「ええ、奥にモンスターの解体場があるんですよ。買取り価格は、実物を見てからだけど、解体してお店とかに持っていくよりも結構安くなるから。そこは了承してくださいね」
そう言って、奥の部屋へ案内してくれる。
解体部屋は、本当に作業場といった感じで薄暗く今は広くて何も置いてなかった。マーニャさんが、裏口のシャッターを開けると外から明かりが入ってくる。
「人を呼んでくるから、そこに出して待っててね」
彼女は、そう言って別の部屋に行く。
俺は、『異空間袋』をタッチして、異空間袋を出した。
が、あんな大きいもの上手く出せるのであろうか。重そうだったし、引っ張り出すのは難しいのではないだろうか?
まあ、試しである。俺は、袋を覗き小さく見える大イノシシに向けて手を入れて引っ張り出した。
「おおお」
さして重さも感じることなく大イノシシの巨体がその場に出てきた。
入っているとわかっていても驚いてしまった。
よくこんなものが入っていたものだと感心してしまう。
「おーこれは大物だねー」
戻ってきたマーニャさんはそう言う。
「確かに大物じゃ」
もう一人、老人が入ってくる。
ギルドマスターの、ベルゼルト老である。
「これは…どこで退治してきたのかな?」
何か思い立ったようでマーニャが聞いてくる。
「南の森ですけど…結構街の近くにいましたよ」
俺がそう言うと、マーニャさんはやはりという顔になり、店の方に戻っていく。そして依頼書を一つ持って戻ってくる。
そこには、
『ランクE 大イノシシ退治 1匹
賞金 10,000メルク
南の入り口近くで2メートル級の大イノシシが目撃されており、農作物に被害が出ております。詳しくは、受付まで。』
と、記載があった。
「きっと、これじゃないですかね」
「たしかに…」
マーニャさんとベルゼルトさんがそう話し合う。
10,000メルク…やっぱり、初めに依頼を受ければ良かった。
果たして貰えるのだろうか?
「エルク君。これは一人で倒したのですか?」
「はい」
「それは…すごいですね。これくらいのサイズだとパーティーでもなかなか倒せないんですよ。エルク君は相当いいスキルを貰ったんですね」
「いや…それは…」
相当いいというか、相当悪いスキルを貰いました…
「たまたま…運が良かったんですよ…」
きっと、運よく攻撃がクリティカルヒットしました。
「そうですか…では、査定しますので少しロビーでお待ちいただけますか?」
そう言って、マーニャさんは俺をもといたロビーに案内した。
ロビーに戻ると結構ギルド内は賑わっていた。ちょうど、冒険者一行が戻ってきたようである。冒険者たちは、武勇伝を受け付けの女性に話している。
俺は、イスに座ってその冒険者たちの話を聞いていた。
いずれは、俺もあんな風な冒険者になれるのだろうか?
もし学園に入学できなかったら、仲間を探さなくてはいけないな…
「エルクさま~」
マーニャさんが、呼び出しの声を上げた。
俺は、手を挙げてマーニャさんのカウンターまで行く。
「今回の査定額は、15,000メルクとなります。内容は討伐依頼達成報酬5,000メルク、部位買取り額10,000メルクになります。ちなみに討伐依頼達成報酬は、依頼額の半額になっております…理由は…」
思っていた以上に高かった。なんか理由を説明しているが嬉しくてあんま聞こえなかった…。
「…これでよろしければ、冒険者カードを提示して、ここにサインをお願いします」
よろしくないわけない。
俺はポケットからカード入れを出して冒険者カードを提示して、紙にサインをする。
「はい。これで手続きは終了です。支払いはギルド紙幣になります」
そう言って、1,000メルクのギルド紙幣を15枚数えて渡してくれる。
一気に持ち金が2倍以上になった…このまま頑張れば3か月凌げるかもしれない…
俺は財布にそれを入れる。落としたら、立ち直れない金額である。
「ありがとうございました。今回は、まだ誰も依頼を受けていなかったから良かったですが、次回からは、討伐依頼を受けてからよろしくお願いしますね。一人じゃ。危険なモンスターも多いですからね」
マーニャさんは、にこりとそう言う。
「わかりました」
俺は、マーニャさんにそう言って急いでギルドを出るのだった。査定に時間がかかったため、少し急ぐ必要である。




