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第十三話『布王者ヌノキング』

昨日は寝落ちしました……すいません。

「どういうことだろう」


 なぜか能力が発動しないザブリェットは首をかしげる。そして『能力ガイド』を再び取り出して読み直す。すると能力の概要はこう書かれていた。


『この能力は素材を媒体に魔物を作り出す能力である。作り出す魔物の種類・属性・質量・その他全ては媒体に使ったものに依存する』


「これ……全然『召喚アンヴォカシオン』じゃないよ。これはただ制作しているだけじゃない!」


 天使の祝福は名前と能力内容が一致していなかった。ホント、とんでもなく微妙なものである。

 ザブリェットは顎に指を当てて、どうしようと考える。今持っている媒体は特にないはず……と考えたところで、素材がたくさんあることを思い出した。


「そういえば、使わなそうな布が大量にあるじゃない」


 あの布なら媒体として十分に役にたつ。アレを使おう。そう決めたザブリェットの行動は早かった。

 先ほどしまった布と切り落とした頭を一箇所に集める。そしてザブリェットは布に手をかざす。


「『召喚アンヴォカシオン』……作動」


 布の山の上に光の粒子が降り注ぐ。布の山が光に包まれる光景は、天から祝福されているような、それとも某ゲームの復活の魔法のような、そんな気分をくれた。


 次第に増える光の粒子に包まれて、布自体が光を放ち出す。

 魔法陣のようなものが現れ、布が溶け出すように、一つに合わさった。


「ヌノォォォォォォォォオオ」


 現れたのは巨大な布リアン。多種多様の布を縫い合わせたようなツギハギだらけの布の魔物。みずぼらしいその姿から漂わしているのは王者の貫禄。

 ぽけーっと見ていたザブリェット。その視界にあるメッセージが流れてきた。


『布王者 ヌノキング』


「……昆○王者ムシ○ングのパクリ?」


 いや、あれは昆虫のを育てて強くさせるゲームであり、ヌノキングがあれ単体の魔物だ。ということは、スライムがキングスライムになるのと同じような感じなのだろうかとザブリェットは頭を悩ませる。

 まあでも、いまはベッドに使えそうな布を回収するほうが大事だ。

 とりあえず「布回収」とヌノキングに命じる。


「ヌノォォォォォォッォォオ」


 ヌノキングは激しい雄叫びを上げて、触手のようなものを無数に伸ばし、きらびやかな布リアンたちを襲う。よく見ると糸だ。自分の身を削って手を伸ばせる範囲を広げている。


「なかなかやる……。だけどうーん。捕まえられない。あれ、どうしよう」


 逃げ惑う布たち。そのあとを追うように、糸の触手を伸ばすが、あまりにも速度が遅いため、後一歩が届かない。


 グズグズしていたら、綺麗な布に逃げられる。内心焦りが出始めたザブリェットは、『能力ガイド』を開く。パラパラとめくって探していると、上から光が注いだ。そちらに視線を向けると、追っていた綺麗な布リアンたちが集まり出す。

 あれ、なんか見た光景……と思い、見つめていると、布リアンたちが合わさって一枚の巨大な布になる。

 巨大な布リアンを『鑑定アナリューゼ』を使って確認すると、『布皇帝 ヌノエンペラー』という名前が流れる。

 どう見てもムシ○ングだと呆れ顔で見ていると、巨大な布たちが体をぶつけ合い、激しく戦いだした。


「ホント、ムシ○ングだ……」


「「再び登場ですよって、なんじゃこりゃぁぁぁぁ」」


 目が覚めたらしい一号と二号がザブリェットのもとにやってきたが、目の前に広がる壮絶な戦いに驚いて硬直する。


 ヌノキングが布の触手を激しく振るい、布エンペラーに攻撃をする。それを布特有の柔軟さでよけると、タンスのような要塞に触手が直撃した。

 砕けた破片がザブリェットたちに襲いかかる。

 当然、ザブリェットは『強化ブースト』による身体強化によって三十六倍速の動きを見せ、軽く避ける。だけど、一号と二号はそうもいかない。


「「みぎゃああああああ、助けてぇぇぇぇぇ」」


 迫り来る瓦礫に怯えて抱き合う二人。それをジト目で見つめるザブリェット。ぶっちゃけ守るメリットがない。慕っているようだが、ここには勝手についてきただけ。助ける要素なし。

 そう決めたザブリェットは当然動かない。


 瓦礫は一号と二号の頭に直撃、その勢いからフィギュアスケートの選手もビックリな14回転半をして地面に落ちる。赤い血が広がっていくが、魔族だからか頭は吹き飛んでいない。軽く傷を負っただけであり、頭をぶつけた時の揺さぶりによる脳震盪で気絶してしまっただけのようだ。


 ザブリェットは再び飛んでくる瓦礫を見ないで避けて、一号と二号を蹴り飛ばし、『布の世界』から追い出した。外からは悲鳴のような何かが聞こえたけど、気のせいだろうとザブリェットは思う。


「うーん、どう捕まえ……あ、自分で行けばいいんだ。狩る対象は一体だけだし」


 そうと決まれば、高い身体能力に任せて布に飛びかかる。激しいく戦っているためか、ヌノエンペラーはザブリェットに気がつかない。どうやら避けるので手一杯らしい。


 額……なのかどうか分からないが、汗が滴っているように見える。布が汗をかく、これはどういう原理なのか。ちょっと気になったザブリェットは、首を落としてからでもいいだろうと考え、鋏を持って襲いかかる。


「な……に…………」


 巨大鋏によってヌノエンペラーを切り裂いたザブリェット。なのに、ヌノエンペラーはピンピンとしていた。

 巨大な鋏、それよりも巨大な体を持つヌノエンペラー。

 ザブリェットは頭を切り落とすことができなかったのだ。ちょっとづつ切っていくこともできるが、あまりにも巨大すぎて時間がかかる。これでは今日中にベッドが作れない。

 そこで再び『能力ガイド』の登場だ。

 無駄に数だけあるチート能力。これだけあるのだから、きっと今の状況を打破してくれる使える能力が一つぐらいあるだろうと思って探し始めた。

 でも、頭の隅によぎったのは使えない天使の祝福、もといい能力の性能たち。使ったら筋肉痛とか、条件が合わないと使えないとか、能力にかかったら一生解けない呪いのような能力とか。

 探していくたびに下がるモチベーション。チートに希望を見いだせなくなってくる。

 だが、ペラリと捲ったページに使えそうなものが書かれており、そのページを凝視する。心の中は歓喜に溢れ、ザブリェットは今にも踊りだしたくなる。


 記載されていたのは『巨大化ジェアンテ』という能力。

 生物は巨大化できないが、モノならば簡単に巨大化できる。それすなわち、布を切り裂くことができるということだ。

 『能力ガイド』によれば、持てないほどの重量にもなるらしいが、『強化ブーストと併用して使えば余裕だろうと思い、ザブリェットは早速使った。


 ーーーーズドォォォォォン。


 地面を沈めるような音。もしここが固有結界『布の世界』という場所じゃなければ、確実に地盤沈下して、魔王城は崩れていたことだろう。


 そして、持ち上げようにもウンともスンとも言わない。『強化ブースト』を使っているはずなのに、持ち上げられないほどの重量。この『巨大化ジェアンテ』という能力は現在の能力値から換算されて、重量が決まるらしい。

 いくら『強化ブースト』を使ったとしても、持ち上げることは不可能だった。


 やはり天使の祝福は微妙だった。


 元の大きさに戻したザブリェットは、再び暴れだしたヌノキングとヌノエンペラーの激闘により飛んでくる瓦礫を避けながら考える。


「どうしよう。天使の祝福が使え……あ!」


 よく考えれば、大きくして振り回す必要なんてない。振り切るタイミングで巨大化すればいいじゃん。そう言う結論に至ったザブリェットは鋏を大きく振りかぶる。

 そして、ヌノエンペラーを切り裂くタイミングで『巨大化ジェアンテ』を使った。

 振り切った勢いに乗ったまま巨大化した鋏がヌノエンペラーの首を切り落とした。


 口から血を吐いて落ちる頭。ひらひらと舞い降りる綺麗な布をザブリェットは回収する。


「ふふ、あーはははははは。これで布が手に入った! ベッドが……ベッドが手に入るよ!」


 ちょっと嬉しい気持ちになり、スキップしながら『布の世界』を出た。当然ヌノキングは放置したままだ。あいつはきっと大量の布を産んでくれることだろう。いや、布が布を産むってどういう状況何だろう。そんな疑問がザブリェットの頭に浮かぶ。でも、あずかり知らぬところで起きることだ。ぶっちゃけ、どうでもいい。


「では早速ベッド作りをしないと!」


 ザブリェットは伸びている一号と二号の足を掴んで、引きずりながら自室となる牢屋に向かった。

読んでいただきありがとうございます。

書き溜めはまだあるので、寝落ちしなければ投稿できるはずです。すいません……。

次回もよろしくお願いします。

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