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連邦帝国航空宇宙軍史  作者: zero
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航空宇宙軍第二ノ誕生

 一九九〇年代後半に入り、アメリカ合衆国が経済的に崩壊、ソ連邦が解体したことにより、第三次世界大戦後約三〇年にも及んだ冷戦は、日英独を中心とした太平洋連合が実質的に勝利したといってもよい。

 ただし、当然ながら無傷の勝利であったわけではない。冷戦最後の一〇年間の軍備拡張競争―――合衆国及びソ連邦を中心とする大陸同盟によってはじめられた冷戦最後のチキンレースにより、その号砲を放ちながらも経済崩壊を迎えた合衆国ほどでないものの、日本をはじめとする太平洋連合諸国の財政は、激しく傾いていた。

 また、国庫の傾きと同時に、日本全体の経済的な落ち込みも指摘されている。

 日本、正式には大日本連邦帝国は太平洋全域を領域に含む、世界でも有数の面積を誇る国家であり、ユーラシア大陸北東部、北米大陸西海岸、瑞穂大陸といった部分を領有するため領土面積的にも世界有数の国家である。その勢力圏における経済規模は世界最大であり、当然世界経済への影響力も大きい。日本経済の陰りは、すなわち世界全体の陰りを意味した。

 〇〇年代中頃、日本の大手銀行であった安田銀行の破綻をきっかけとして顕現したといわれる世界金融危機。これにより世界経済が冷え込み、第二次大恐慌ともいわれるほどであった。この経済的混乱は連邦内部の格差をさらに拡大させ、

 日本の実質的な最高権力者である時の総統は、この経済的な冷え込みの打開策として宇宙への進出を決定した。先の冷戦期のような、見栄のための学術的な目的での進出ではない。かつての日本人が太平洋全域で行ってきたような開拓としての進出であり、あらたな生存圏の拡大を目指しての行動である。

 その元手をひねり出すのに多少苦労したものの、冷戦終結から縮小傾向にある連邦帝国軍において、大は空母から小は拳銃にいたるまで数多の余剰装備が存在しており、また全世界に買い手は存在していた。地域紛争は冷戦終結によってむしろ多くなっていたほどであった。日本国籍を持つ死の商人によって世界中にばらまかれた兵器と引き換えに得た資金をもって宇宙への旅券を手にしたのだ。

 また、世界最大の領海を持つ日本。その海底より得られる資源の採算が充分に得られるようになったこともこれを後押しした。

 よく言われるように、必ずしも軍事的な目的が先頭にあったのではない。天空を支配せずとも、日本人によって運用される弾道弾は世界中を射程に収めており、世界を滅ぼそうという意志さえ持つことができたならば、いつでも実行に移すことが可能であった。日本人たちが望んだのは経済的な意味での進出であり、SFに登場するような「宇宙戦艦」や「宇宙要塞」をつくる予算も必然性も存在しなかった。

 とはいえ宇宙にまったく戦力が存在していなかったわけではない。

 宇宙への進出が拡大するにつれ、軌道や月面の植民地における警察活動及び救難活動を担う組織が求められるようになるのは必然であった。当初はまったくの新しい組織が組織されるはずだった。しかし従来の日本における空の防人であった航空宇宙軍が反発。傍から見れば奇怪ともいえる既得権益を持つものどうしの綱引きの結果、新軍種の誕生は阻止され、それを受けて航空宇宙軍内部に新たな部隊―――施設における警備部隊としての陸戦隊及び航路防衛用戦闘艦艇群としての航宙艦隊が編制された。これにより航空宇宙軍はその名前通りの戦力を得ることとなった。それまでは一部の軌道爆撃機や衛星運用部隊を除けば従来の空軍と大差なかった。実に二〇二〇年のことであった。これを人によっては航空宇宙軍第二の誕生とも称する。

 陸戦隊はその名称とは裏腹に警備用の軽武装部隊でしかなく、正規戦闘を行える重武装部隊など数少ない陸戦隊所属部隊のさらにほんの一握りでしかない。部隊規模も最大で大隊でしかなかった。

 また航宙艦隊ものちの規模からは考えられないほどの小規模であり、僅かな警備艦と輸送艦、航宙機が含まれているのみであった。

 航宙艦隊の主力となる警備艇は当初は数百トン程度の質量しかもたない、実にささやかな船であった。官民問わず数千トンから大きいものでは万単位のの大型航宙艦が建造されるになり、また二〇四〇年代の月面への大規模植民の開始に伴い、さらなる活動範囲の拡大から性能的に不十分と言わざるを得なくなってきた。


ある程度間をおかずに投稿したいなぁ…

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