2 VS.トラック転生
五十と三年前、この街が破壊されて瓦礫の山になった時、多くの仲間と最愛の女を失い死に損なった。
今でも、この手の中で消えていった生命や、死んだ後に‘ 魔 ’に蝕まれた魂が化した死魔を滅ぼした時の想いは、この胸に刻まれている。
無数の無念と数え切れない思い出の欠片が世界に還るのを、討魔者の《霊視眼》は、否応なく見せてきた。
今でこそ、知らないよりは彼らの想いを知れた事を、好かったと想える。
けれど、《霊視眼》を、死魔を相手にする時の加護スキルくらいにしか思っていなかったあの時は、こんな能力などいらないと思ったものだ。
その後、王都の討魔者達に滅ぼされ災厄位魔バフォモスは、塵一つ残さずに消えたが、低位妖魔級討魔者にできる事は少なかった。
5階位上がった今でも災厄位魔相手では、牽制程度の役にしか立たないだろう。
災厄位魔を一人で滅ぼした大盗賊団の首領を倒す事はできても、災厄位魔より弱い深位の‘ 魔 ’は滅ぼせないのだ。
並みの妖魔や獣魔相手ならともかく、深淵の‘ 魔 ’を滅ぼすには‘ 神霊力 ’が少なすぎた。
浅位の‘ 魔 ’は、この世界の依り代となる核を破壊するか、仮初の肉体を壊せば消えるが、依り代を持たずに混沌として現出した深位の‘ 魔 ’は、‘ 神霊力 ’をぶつける以外に滅ぼす方法はない。
そして‘ 魔 ’を滅ぼす力の源である‘ 神霊力 ’は、生れた場所で取り込んだ“ 砕かれた神使の魂量 ”で決まる。
‘ 魔 ’と戦い破れて砕かれた神使の魂は、欠片となってこの世界と重なった神界を漂っているが、人に宿った‘ 神霊力 ’や魂の種類を見る高位の神霊術でも、この世界に属する前の魂は、見えない。
こればかりは運次第で、‘ 命気 ’や‘ 精霊力 ’と違い、努力でどうこうできるものではないのだ。
バフォモスが滅ぼされた後、全ての精霊術やスキルを使えるようになっても、その威力は王都の高位討魔者に遠く及ばなかった。
だから、後進の討魔者を育てる事で、あの日の無念を晴らそうとした。
努力で手に入る力を全て望んだ。
全ての技と術を磨いた。
普通は自動制御のスキルを自在に操れる方法を探して、新しい技と術を編み出した。
そして、放って置けば死ぬようなバカを救い、駆け出しの討魔者を育て続けたのは、再びあの惨劇を繰り返さないためだ。




