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爬虫類系女子  作者: 傘影 儚
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第7話 アカメカブトトカゲ


「ひっく……うぇぐ……怖いぃ……」

 結局、私が一目惚れしたアルビノピンクスキンキャラメルちゃんは手に入った。隣を歩く、泣きじゃくったお母さんの涙と蛇礼(みれい)先輩からいただいた蛇の抜け殻によって。

 それにしても驚いた。あの紳士だった香枝夜さんが、まさか……その……あんなことになるだなんて思ってもいなかったし。

「亀子ぉぉ~蛇怖いぃ」

 お母さんは大の蛇嫌い。確か昔、道端でとぐろを巻いているニホンマムシを鏡餅だと思い込んでかぶりつこうとしたら蛇で、それがトラウマになっているらしい。

 とんだ勘違いおばさんだ。

 ……まぁ、そんなことより――――、


「むふふ♥」


 ――――私にはこの亀の方が気になって仕方ない。

 なんて可愛いのだろう……。まだまだ幼いスキンキャラメルちゃんは小さな水槽の中で必死に水を掻き分けている。

 クリッとした目はアカメカブトトカゲみたいに愛らしい。そして何よりこの甲羅! 柔らかそうな見た目をしている甲羅の筋はまるでモズクを一本一本丁寧に溝にめたみたい。

 将来、この子が脱皮をして甲羅が大きくなるのかと思うと楽しみで仕方ない。

「ふふふっ………………ん?」

 ――――と、そうこうしている内にもう我が家に着いてしまった。




 トントントントンッとリズミカルに刻まれる大根。台所で料理をしているお母さんを耳で感じながら目前の子を見つめる。

 本当に……愛くるしい。

 こんなにも珍しい子が手に入ったのだから、きっかけをくれた蛇礼先輩にも感謝しなくちゃ! そして、看板ペットを譲ってくれた……香枝夜さんにも。


『なんてステキなのぉぉぉぉぉん!!』


 あの時の香枝夜さんの行動を思い出し、体がブルッと震えた。

 アレは忘れよう……。私には爬虫類がいればいいんだから!

「亀子ーご飯よー」

 聞こえて来るお母さんの声に「んー」と生返事をしてスキンキャラメルちゃんを観察する。

 やはり特徴的なのは全体的な色の薄さだろうと思う。手がまるで赤飯みたいなピンク色という何とも可愛らしい子。


「亀子ご飯ー!」


 それにこの目!! 何度見ても惹き付けられてしまう魅力がある。後はこの鼻の筋なんかが――――「亀子ぉ!」――――わわっ! お母さんが!

「ご飯って言ってるでしょうがぁ! そんなに亀にうつつを抜かすんならねぇ! その亀の甲羅の筋にメカブ詰めて海に流すわよっ!」

「あんまりだよお母さん! どうしてわざわざメカブを詰めるの!? どうして!? こんなに綺麗な色をしているのにメカブで汚さないで!」

「元からモズクみたいな筋してるじゃない! 私に言わせればねぇ、アッサムセタカガメの方が良かったのよ!」

「アッサムセタカガメぇ!? それならギリシャリクガメの方が可愛いもん!」

「アンタばかっ……! あの丸い甲羅の何がいいのよ!? アッセムみたいに尖った甲羅を見てギンシャリクガメがいいって言うなんてアンタばかっ!」

「亀の甲羅は丸いのがいいのぉーーー!」


 こうして私とお母さんの熱論は、ご飯が冷めるまで続いた。

 アカメカブトトカゲ【Tribolonotus gracilis】

 全長15-20cm。

 和名の通り成体は目の周りが赤やオレンジ色になる。

 胴体や四肢の鱗も大型だが、皮膚が露出している部分も多い。尾にはやや鉤状になった鱗が並ぶ。

 発声器官を持ち鳴くことができる。

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