第5話 アルビノピンクスキンキャラメル
二周目も走りに走ってくれます『左傘 蕨』です。
左傘ワールド再び……!惹き込まれますね!
連れられるままに入ったペットショップ。
一歩足を踏み入れて、むわっと香る動物特有の、消しても消えない独特の匂いが鼻をつく。
周りを見回せば目に付くのは犬や猫といった哺乳類や鳥類ばかり。奥の少し薄暗いところには熱帯魚がちらほらと見えた。
こういうペットショップにはあまり爬虫類や両生類は置いていないのだ。
少し悲しくなる。
こんなに爬虫類は可愛いのに。
ちょっと、逃がしたアオダイショウが名残惜しい。
「じゃあ、ちょっと連絡してくるから、店の中でも見ててよ」
香枝夜さんは私にそう言った。
見るものなんてあんまりないけどとりあえず私は頷いてみた。
あまりお客さんもいないせいか寂しげな店内を少し、フラフラとしてみる。
私は引き寄せられるようにして、熱帯魚などのいる薄暗い方へと向かい、そしてーー
ーー・ーー・ーー
「あんたなにしてんの?」
「蛇礼様こそ何してるんです?」
イモリな彼が一軒のペットショップの硝子に張り付いて怪しい目つきで中を覗き込んでたらそりゃ声もかけたくなるわよ。
「ていうか蛇礼様、なんで蛇?」
こちらに目も向けないままに彼はあたしに聞いてきた。
そう、今の私は私本来の姿である白蛇。
故にあたしは今、イモリな彼の言葉が聞き取れるのだ。人だとどうしても聞き取れないからねぇ。
ちなみに今あたしは神様として自分の治める土地の見回り中。
人間の姿であんまり遅くまでフラフラしてると補導されるんだもん。
ついでにさっき亀子ちゃんに追っかけてた蛇は私の眷属。私だけじゃ手が回らないところを見てもらってたんだけど……うん。まさかイモリにつられて、追いかけて、亀子ちゃんに捕まるなんて考えてなかったなぁ。
捕まったままだったらどうしてくれるんだろう。ていうかこいつ気づいてるのかな、あたしの仕事邪魔したことに。
……うん。多分気づいてないなこいつ。恋する乙女?みたいな怪しい目してるし。あれ、恋する乙女って怪しい目してるのか?
というか姉様の邪魔してなくてよかったねぇ。姉様の邪魔してたら喰われる程度じゃ済まなかったろうに。
……あ、なんか考えてたらイライラしてきた。イモリってあんま美味しくないけど……食べちゃおうかな。
硝子に張り付いたイモリがぶるりとふるえた。
ちっ。
ーー・ーー・ーー
フラフラと引き寄せられたペットショップの奥。
そこで私は……運命の出会いをした。
普通の亀とは比べ物にならないほど薄い茶色の甲羅。
その甲羅に走る濃い茶色の線。
甲羅から伸ばされた肌は淡いピンク色。
目はクリクリと丸く、黒い。
『アルビノピンクスキンキャラメル』
この子は、種類で言えば日本でも無責任な飼い主が捨てたせいで要注意外来生物に指定されたミドリガメ、つまりミシシッピアカミミガメにあたる。
その、アルビノ。
ただでさえ、珍しいアルビノ、その中でも結構珍しい、と言われている『アルビノピンクスキンキャラメル』。
まさかこんなところでお目にかかれるだなんて‼︎
可愛らしいアオダイショウを追いかけて素敵な素敵な亀に逢えるだなんて!
なんだかあの抜け殻をもらってから良いことが続いてる気がする。
まぁ、きっと気のせいだよね。
亀【Turtle】
カメの形態上の最大の特徴は、甲羅を持つことである。
甲羅は脊椎や肋骨と一体の甲板 (骨甲板)と、鱗からなる甲板(角質甲板)の2つの甲板で構成される。